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作者: 杉将

 今朝は食パンを二枚食べた。食パンは焼いた方が美味しく感じるので、焼いて食べた。それから、顔を洗った。顔を洗うことは気持ちがいいのでいつまで続けたかったが、飽きる感情の方が先に来たのでやめた。服を着替え、仕事に向かった。途中、何度か家に帰ろうかと思い、私は働くことが嫌いだと思った。だが、座っている電車の席を立ち、家に帰り食事の用意をする事を考えると、ひどく面倒だった。だから、黙って座っていた。私の前に、つり革を握った太った男がいた。彼は何やら口をクチャクチャとやりながら、スマートフォンを見ていた。こういう人間が死ぬまで働き続けるのだろうと思った。

 私は出来るだけ仕事は遊びだと考えて、その日の業務を行った。不思議なことだが、その方が要領よく物事が進み、肩も凝らなかった。私は以前にもこんな事をしていた気がするが、出来ることならずっとこの感覚で過ごしたいと思った。しかしそれはきっと難しいだろう。毎日同じ気持ちで過ごせないというのは、一体どうしてだ? 人間という機械に備わっていてもいい気がした。

 仕事が終わり、私はとても清々しい気分だった。ビールを飲もうと思い同僚を誘おうとしたが、みんな忙しそうに働いていたので誘うのをやめた。しかし実際は、私に誘う気がなかったのかもしれない。

 コンビニでビールを買い、家に帰った。電車の中でもビールが飲みたくてたまなかった。だから、家に帰るなり、すぐにビールを飲んだ。だが、美味しいと感じたのは最初の一口だけで、残りは私をしんどくさせた。それから私は、気分が良かったからこういう事をしてみただけなのだと知った。カーテンの隙間から入ってくる夕陽が、私は気に入らなかった。だから、カーテンをぴったりと閉めて、部屋を暗くした。

 私はもっと楽しい気持ちで過ごさなければならない、と思ったが、この気持ちはいつまで続けられるだろうか? ひとまず私は、缶に残っていたビールを捨てた。飲みたくないなら飲まなければよかった。困ったことは、他に飲みたい物が無かったことだ。飲みたくないものを飲み、食べたくないものを食べて、明日も遊びの感覚を持っていたいと考えながら、眠った。

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