天使村を取材!
私は沢渡歩美。
一流の記者・・になる予定よ。
まだ学生だから自身のSNSと動画サイトで小さな記事を伝える程度だけど、いつか大ニュースをみんなに伝えるようになるんだから。
そんな私が今狙っているニュースがある。
天使。
ひと月前、天使が現れ世界の滅亡を予言して世界を驚愕させた。
その天使は人々の中から12人・・いえ13人を選び世界の滅亡を防いだ。
多くの人が天使の登場に熱狂したわ。
私も天使の記事を書いて投稿したら、いつもより40倍の閲覧数を稼いだ。
・・いえ、今でも天使に関する記事の閲覧数は増え続けている。
今も多くの人が天使を求めている!
でもね・・そんな人々の純真な想いに対して下品な話の多いこと。
勝手な推測で天使がどんな存在か語ったり、宗教の宣伝だったり。
お金を集めたいですって欲望が丸わかり。
天使という尊い存在を敬い本当に正しい記事を出しているところの少ないことこの上ないわ。
なら!
私が!!
真の記事を出すしかない!!!!!
・・
・・・・
というわけでやって来ました!とある高校!
実はタレコミがあって、この高校に天使がいるそうよ!!!
・・ま、こんな普通の高校に天使がいるわけないけど。
情報提供者は以前もおいしい話を教えてくれたから、一応取材くらいしておこうかなって。
ガセならそのことを伝えればいいだけだし。
信用できる情報提供者には、こっちも信頼で返してあげないとね。
ひとつ問題があるとしたら・・・・私も学生だから放課後くらいしかこれないのよね。
結構帰っちゃってるじゃない。
部活やってるところに突撃取材でも・・あ♪ちょうどよく人がいたわ。
歩美「あのぉ、すいませーん。そこのかっこいいお兄さんたちちょっといいですかぁ?」
緑平「え?はいなんですか?」
紀一「中学生?お兄さんかお姉さんでも捜してるのか?」
歩美「いえいえ♪ねぇお兄さんたち、天使って知ってますか?」
緑平「えっと・・まぁ、世界的なニュースにもなったからね。」
紀一「あれだろ、世界の滅亡を防ぎながら人類に試練も与えてたやつ。」
歩美「はい♪でー、この学校に天使がいるって聞いたんですがー。」
緑平「・・」
紀一「・・」
生徒さんたちは顔を見合わせた。
緑平「ははは、こんな普通の学校に天使がいるわけないって。」
紀一「天使もそんな暇じゃないさ。」
歩美「そうですか・・そうですよね。」
緑平「じゃ、じゃあ俺たち行くね。」
紀一「期待に沿えなくてごめんな。」
歩美「いえ、ありがとうございました!」
やっぱりガセかなぁ。
生徒さんたちは帰っていった。
・・そもそも礼拝堂もない学校にいるわけないよね。
縁もゆかりもないところに天使がいるわけがない!
ジェミニ「あらこんにちは。生徒の妹さん?」
うわぁ綺麗な人。
歩美「あのすみません、この学校で天使を見かけたとかそういううわさを聞いたことありませんか?」
ジェミニ「そうねぇ・・群馬の山奥に天使がいるって話は聞いたことあるわ。」
群馬?
歩美「それ、どこのうわさですか?」
ジェミニ「実際に行った人がいるの。その山奥の村では天使がいて村人に崇められていたそうよ。」
ジェミニ「3日くらい前に聞いた話だから、今でもいるんじゃないかしら?」
歩美「うーん、群馬かぁ・・」
というか山奥って電車とかあるの?一日一本のバスとか携帯の電波が来てないとかマジ無人島レベルでやなんだけど。
確証があるならともかく、伝言ゲームの信ぴょう性なんてねぇ。
ジェミニ「そうそう、写真もあるわ。見る?」
見せてもらったその写真には、ひと月前に現れた天使が写っていた。
ウェーブのある金髪。外見年齢は高校生くらい?
歩美「ほ、本物ですか!?」
ジェミニ「どうかしらね。一般人に真偽はわからないわ。だからこそ、取材する価値があると思わない?」
確かにそう。
私が行かずに誰が真実を伝えるというのか!
エセ記事とは違うことを私が証明しなくちゃ!!
・・
・・・・
情報は鮮度が大事!
次の休日、私は群馬の山奥へやって来た。
首を洗って待ってなさい天使!私があなたのすべてを丸裸にしてみせる!
天使「あっそ。がんばってね。」
歩美「・・・・」
いいいい、いたぁ!
いきなり過ぎて心の準備が・・・・すーはー、落ち着け、落ち着くのよ歩美。
うわぁ・・すっごくかわいい!アイドルとかなれそう。
歩美「あ、あなたがうわさの天使ですか!?」
天使「だったらなに?」
歩美「お話を聞かせてもらえませんか?」
天使「なんで?」
歩美「世界が天使に注目しているからです!」
天使「バカな人間が、でしょ?ちっぽけな人間が世界を騙るとか傲慢すぎない?」
・・うわー、この天使性格悪そう。
絶対偽物だ!
お婆さん「おや天使様。ありがたやありがたや。」
地元の人だろうか、天使を見て手を合わせていった。
まるで道を歩いていたらお地蔵様がいたから手を合わせていくような気軽さだ。
歩美「・・手を合わせるのは仏教よね?天使ってキリスト教じゃないの?」
天使「好きにすれば?私は崇めろなんてひとことも言ってないわ。」
天使「人間が勝手にやってるだけだから、私にどうこう言わないで。」
なんて無責任な。
こんなのが天使のわけがない!
歩美「取材に協力してくださってありがとうございました。」
天使「取材(笑)」
絶対この偽天使性格悪い!
地元の人に話を聞いた方がよさそうだと判断した私は、さっきのお婆さんを追った。
・・
・・・・
歩美「おばーさーん!」
お婆さん「おや?なにか用ですかの?」
歩美「さっき手を合わせていましたが、あの女の子が天使なんですか?」
お婆さん「ええ、そうですよ。2週間前この村へやって来てくださったんじゃ。ありがたやありがたや。」
お婆さんは天使を信じきっている。
あんなの天使じゃないと言いたかったけど、お婆さんのあまりの笑顔に真実を言えなかった。
報道に携わる者が真実を言えないなんて、まだまだ未熟!
歩美「て、天使はこの村に滞在しているんですか?」
お婆さん「ええ、ええ。公民館に住んでおるのでな、そこへ行けば会えますよ。」
歩美「天使は普段なにをしているんですか?」
お婆さん「村の人の話を聞いてくださいます。ほんにありがたいことです。」
歩美「奇跡を起こしたりとか。」
お婆さん「こんな村に奇跡なんて必要ありません。昨日と同じ今日があれば幸せですよ。」
田舎はこれだから。
世界は日々進化している。
それについていけないと、時代遅れになっちゃう。
変わらない日々なんて、劣化しているのと同じよ。
歩美「ありがとうございました。公民館に行ってみます。」
お婆さんから公民館への道を聞き、行ってみることにした。
あの偽天使が戻る前に、偽物だっていう証拠を見つけよう!
ごめんなさい報道の神様。報道記者・歩美はちょっと探偵に浮気します。
・・
・・・・
急いで公民館へ行くと、村人が集まっていた。
・・家探しは難しいかな・・
歩美「こんにちは。みなさん天使様が戻られるのを待っているんですか?」
村人「え?天使様は中にいますよ。」
あの後すぐ戻ったんだ。
もしかして・・偽者だという証拠を隠そうとして急いで戻った・・?
村人「講演の最中なので入るなら静かにね。」
歩美「講演?」
村人「天使様のありがたいお話です。最近では村の外からも聞きに来る方もおられるんですよ。あなたもそうなのでしょう?」
歩美「ま、まぁそんなとこです。」
この辺りでは結構有名なんだ。
ふふ、偽物だという証拠を掴めば、いいニュースになりそう。
私は静かに中へ入った。
・・
・・・・
天使?「なぜ人は苦しむのか。みんなが幸せになれないのはなぜか。」
天使?「なぜ世の中は苦しいことで溢れているのか。なぜ働かないといけないのか。」
天使?「疑問に感じませんか?なぜ神様がいるなら助けてくれないのか・・と。」
天使?「神様が私たちに与えたのは自由なのです。」
天使?「もし神様が私たちの苦しみを取り除いてくれたらどうなるでしょうか?」
天使?「なにかあればすぐ神様に助けを求めるようになります。がんばらなくてよくなります。」
天使?「一見幸せのようですが、それはなにもできない人間を生み出すことになります。」
天使?「神様に頼らなければなにもできない世界・・それは真の幸せではありません。」
天使?「自由でもありません。神様のご機嫌を伺って生きるだけの世界になります。」
天使?「なぜ神様が人間を助けないのか?」
天使?「それは人の為。人が自立した存在だと神様が認めてくださった証なのです。」
天使?「では苦しむ人に救いはないのでしょうか?」
天使?「病気を持って生まれた人、事故で大切な人を失った人、不幸は満ち溢れています。」
天使?「神様は・・私たちを死後救ってくださいます。」
天使?「誰でも例外なく神様は死後救ってくださいます。だから今日を、明日を、安心して生きてください。」
天使?「人の一生はまるで夢みたいにあっという間です。いつの間にか大人になり、いつの間にかお年寄りになります。」
天使?「どうか後悔しないよう一日一日を大切に過ごしてください。」
・・超キャラ作りしてる!さっきはあんなに横柄だったのに!
村人はこれに騙されているんだ!
私が偽天使だと暴く!それをアップすれば一躍有名に・・一流報道記者の仲間入り確実!
広告収入も大幅アップ!いいことずくめ!
さてどうしよう・・講演が終わるまで考えることにした。
・・
・・・・
そして講演終了。
さて、私の話術で偽天使だと暴いて・・と思ったんだけど・・
講演終わっても村人が群がってるぅぅぅ。
待つ。
人気なのはわかる。見た目のかわいさに反してさっきの話はまぁよくできていた。
現世で神様が助けてくれますなんて言ったら、何でも屋扱いにされると思う。
待つ。
現世は人の世だから、人が全部決めていいよ。その代わり辛くても苦しくても自分でなんとかしなさい。
神様はあの世で人を救ってくれる・・か。
待つ・・
自分はなにもしなくていいから偽天使だとは気付かれない。
それでいてみんなからありがたがられる。
都合のいい設定ね。
待・・いつまで待たせんの!?
歩美「はいはいちょっとどいてください。」
村人「なんだなんだ?」
村人「見たことない子じゃな。」
村人「お嬢ちゃんかわいいね、うちの子になる?」
ならない。
歩美「あなた、偽物ね!」
天使?「・・」
歩美「天使とか言って人々を騙して恥だと思わないの?」
天使?「・・」
歩美「どうせ天使だと証明することはできないんでしょ?」
天使?「・・」
歩美「ひと月前に現れた天使には気品と誇りを感じたわ。私はそういうの目ざといの。」
歩美「でもあなたからはなにも感じない!どうせただのそっくりさんでしょ?」
天使?「・・」
歩美「なんとか言ったら?」
天使?「なんとか。」
こいつ・・絶対偽物よ!
天使?「まず、私が天使だと証明することはできません。」
歩美「偽者だからでしょ?」
天使?「あなたは先ほどの話を聞いていましたね。ならばわかるでしょう、救いは死後訪れるという意味が。」
天使?「現世に救いはありません。ならば来世で・・と悲観して死を望む方がどうしても出てきます。」
天使?「ですから、私の話が真実だと証明されてはいけないのです。疑うくらいがちょうどよいのです。」
天使?「死後どうなるか・・その真実が今まで証明されなかったのは、現実を良く生きるため。」
天使?「神様は人が生きることを望んでいます。私がここにいるのは、ひと月前の件で信用され過ぎた信仰に疑問を抱いてもらうため。」
なんとも都合の良い設定。
歩美「聞きましたかみなさん。こんなの偽物だと言ってるのと同じじゃないですか!」
村人「かわいいからいいよ。」
村人「言ってることは間違っているようには思えんし別に。」
村人「真偽を明らかにすることが正しいわけじゃないんよ。」
ダメだこいつら。
信者は耳を貸そうとしない!
でも信じているわけじゃない、信じたいのよ。
私がその幻想を壊してあげる!
歩美「なら聞きますけど、人は死んだら誰でも救われるんですよね?」
天使?「はい。」
歩美「悪人でも?」
天使?「はい。例外はありません。」
歩美「なら真面目に生きるのなんて馬鹿らしいと思いませんか?悪いことしても救われるなら、じゃんじゃん悪いことをすればいいってなりません?」
天使?「なりません。悪人がいれば人の世で裁くのが道理であって、神様に望むものではありません。」
天使?「物事の善悪を神様が決めたのであれば、神様が悪事を犯した者を裁きましょう。」
天使?「しかし人の世の善悪は人が決めたものです。ならば人が裁けばよいのです。」
歩美「なんとも無責任な神様ね。いなくてもいいんじゃない?」
天使?「あなたは人を傷つけたことはありませんか?心無い言葉で他人を悲しませたことはありませんか?」
天使?「そんな人、山奥でひっそり暮らしても難しいです。どこへ行っても大地は人の管理する場所ですから。」
天使?「もし生涯一度でも他人を傷つけたら、例外なく神様によって地獄へ叩き落されるのが正しいと思いますか?」
天使?「4歳の子供が他人のおもちゃをとったら地獄行き、そんな世界を望みますか?」
天使?「なにを裁くか、なにを許すか。それは人が決めるのです。それでこそ人の世になります。」
天使?「逆にあの世は神様の管理です。」
天使?「誰が天国へ行き、誰が地獄へ行くのか。それは神様に一任されることになります。」
ピキーン!矛盾来た!
歩美「例外なく救われるなら、地獄へ行く人はいなくなりませんか?」
天使?「いいえ。地獄も救いの地なのです。」
歩美「は?」
天使?「人を苦しませるのが地獄だと思っていませんか?そうではありません、欲に溺れた人間の更生を期待する場所が地獄です。」
天使?「地獄も現世と似たような世界になっています。しかし、そこでは数多の誘惑が待っています。」
天使?「誘惑に負けて罪を犯したら・・その罪は己に返ってきます。」
天使?「他者から奪う罪を犯したら、奪われる罰が待っています。他者を傷つけたら、傷つけられます。他者を殺したら・・殺される罰が地獄では待っています。」
天使?「しかし地獄で数多の誘惑に打ち勝った者は、別の道に気付くでしょう。」
天使?「それこそが救いの道です。救いを得た者は再び転生することができます。地獄にも救いはあるのです。」
歩美「ふーん。なら天国は誰が行くの?」
天使?「天国は地獄の向こう側にあります。地獄の誘惑に打ち勝ち、試練を超えた者が天国の門を開けるのです。」
歩美「なら・・弱者は天国へはいけない?」
天使?「はい、いけません。」
歩美「なにそれ。神様は弱者を救ってくれないの?」
天使?「天国は救いの地ではありません。弱者への救いは他の方法でもたらされます。」
天使?「天国は地獄と似た世界です。違うのは・・そこには資格を得た者しかいけないという点。」
天使?「天国へ行った者はそこで新たな自由を手にします。」
天使?「花を咲かせたい者は花を育てるでしょう、絵を描きたい者は絵を描くでしょう。天国ではやりたいことに挑戦できます。」
天使?「誰かが花を咲かせてくれるわけではありません。天女が接待してくれるわけでもありません。」
天使?「弱者が天国へ行ってもなにもできないのです。自分でなんでもできる者が天国へ行き、新たな自分を見つけ出します。」
中々・・凝った設定してるじゃない。
ま、人を騙すならそれくらいしてもおかしくないわね。
天使?「神様は人を救っても、甘やかしてはくれません。」
天使?「弱者であろうとしないでください。優しい強者になってください。」
歩美「で、あんたは村人からチヤホヤされて楽するわけ?」
天使?「チヤホヤするのもしないのも、村の方たちの自由です。私はなにも強制しません。」
村人「自由だから望んでチヤホヤします!」
村人「天使ちゃん万歳!」
村人「天使で村おこしじゃ~」
ダメだこいつら。
歩美「というか、偽物で村おこししても失敗するだけでしょ。」
村人「いやね、天使様は不信を抱いてもらうためにここへいるわけだから、むしろドジっ娘天使としてのデビューを想定してるんじゃが。」
ダメだこいつら(二回目)
村人「ところでお嬢ちゃんはどうやってここへ来たのかな?」
歩美「数少ないバスで(怒)」
思ったよりは本数あったけど、それでも少ない!
村人「もう最終バスが出たが、帰れる?」
歩美「・・・・えー!」
村人「たまにおるんじゃよあんたのような子が。ここで良ければ一晩泊まっていくがいい。」
村人「天使様もよろしいですか?」
天使?「ええ。それが良いでしょう。」
思いもよらず偽天使と一晩過ごすことに。
殺人事件とか起こらないよね?
ま、それはいいとして・・・・
歩美「あの・・電話貸してもらえますか?」
ここ圏外なんだけど。どこまで田舎・・ド田舎なの!?
・・
・・・・
自宅へ連絡を入れて、帰ったら説教が確定したのはともかく・・
今夜、偽天使だということを証明してみせる!
お腹「空いた。」
お腹が空いた。
歩美「ここってコンビニとかあるの?夕飯はどうしてんの?」
天使?「村の人が食べ物を持ってきてくれますよ。一緒に食べますか?」
歩美「お供え?」
偽天使がテーブルに食べ物を並べていく。
・・焼肉やお寿司、よくわかんない煮物とか・・これはのっぺ汁?だっけ?
おいしそう・・
天使?「ひとりでは食べきれませんから。よければどうぞ。」
歩美「ま、まぁ一緒に食べてもいいけど!」
こんな豪勢なの、お盆か正月か、誕生日とかじゃないと食べれない!
歩美「いつもこんなに食べてるわけ?」
天使?「いただいた物は食べていますよ。食べきれない時は村の人と一緒に食べたりしています。」
歩美「ふーん。天使も食事するんだ。」
天使?「天使は不定形なんですよ。人の姿であろうとすれば、維持コストが必要になります。そこは他の生き物と同じです。」
天使?「元の姿であれば、食事は不要です。」
歩美「なんでそんな・・あぁ、不信の種を植える目的でいるんだっけ。」
天使?「はい。人と同じ生活をしていれば、幻想は薄れますから。」
どう見ても人間・・かわいいだけの人間だけど、そういう目的でいると言われたらどうしようもない。
村人も食べ物あげなければいいのに・・
・・
・・・・
歩美「・・食べ過ぎちゃったー!おいしいは罪!」
天使?「お風呂はどうします?私は近くの家で借りていますが。」
歩美「公民館にはお風呂ないの?」
天使?「ありません。」
歩美「・・・・なら私も一緒にお風呂借りる。」
天使?「なら、迷惑がかからないよう一緒に入りましょうか。」
歩美「ふぇ?」
・・・・
もしかしたら、本当に天使かもしれない。
胸おっきい!くびれすごい!顔は高校生くらいだし小柄なのに、身体はやばいくらい大人!
くすん・・私はこれから成長するんだもん・・
・・
・・・・
そしてあっという間に就寝・・
歩美「寝るの早くない?」
天使?「特にすることもありませんし。」
確かに・・ネットないとやることない。
こうして、私たちは早目の就寝となった。
・・
・・・・
少しうとうととしていると、偽天使が布団から出た。
トイレかなと思ったら、なにかごそごそしている。
まさか、これから何か事を起こすつもりでは・・
夜行動するということは、まさか・・偽天使の正体は、闇の住人・・
もしかして私は、いてはいけないところにいるのでは・・?
起きたら殺されるかも!
必至に寝ようとするも、怖くて全然寝られない。あと寝るの早かったし!
・・ちょっと明かりが漏れているのがなんとなくわかった。
一体なにを・・好奇心に勝てず私はうっすらと目を開けた。
偽天使がなにか見てる?テレビ?
まさか魔界の住人と交信?
頭になにかつけてる・・あれが本性?
テレビ画面に映っているのは・・・・アニメ?
偽天使はヘッドホンをつけてアニメを見ていた。
な、なんで・・?
しかしそれを確かめる前に、私は眠りについてしまったみたい。
もしかしたら、偽天使がなにか魔術を使った可能性も・・
・・
・・・・
朝になり、私は目が覚めた。
自分の顔を触ってみる・・なんともない。
鏡を見てみる・・異常はない。
股間を探ってみる・・ある。
なにかされたということはないようね。
私はほっとひと安心した。
天使?「おはようございます。」
歩美「おはよ・・昨日はちゃんと寝れた?」
天使?「はい。朝までぐっすり寝ました。」
嘘だ。
この偽天使は昨夜なにかをしていた・・テレビの前で。
でも聞いたところでしらばっくれるだけだと思う。
村人「おはようございます!朝食をお持ちしました!」
朝からたくさんの食事。
・・おいしそうだけど・・太りそうで怖い。
太ることは天使よりも悪魔よりも怖い。
・・
・・・・
おいしすぎて食べ続けてしまう悪魔の食事を終え、のんびり・・って、そんな場合じゃない!
この子が偽天使だと証明しなくては!
今の情報だけじゃ記事として薄い。
歩美「ねぇ聞いてもいい?」
天使?「どうぞ。」
歩美「昨日、神様は誰でも救ってくれるって言ったわよね?」
天使?「はい。例外はありません。」
歩美「なら・・神様を信仰していなくてもいいの?」
天使?「はい、必要ありません。」
天使?「私たちは神様に依る存在です。例え私たちが神様を裏切ろうとも、神様は私たちを見捨てません。」
歩美「なんで神様はそこまでしてくれるの?理由は?」
天使?「私たちが考えたり行動するのは肉体に依存しています。」
天使?「お腹が空いてイライラしたり、お酒を飲んで我を失ったりするのは私たちが悪人だからでしょうか?」
天使?「違いますよね。肉体に依存した行動をとっているに過ぎません。」
天使?「本質は魂にあります。死とは肉体の滅びであり、神様によって救われるのは魂の方です。」
天使?「信仰も肉体による活動に過ぎません。それ故に、神様は気にしたりはしません。」
天使?「神様は私たちの魂を見ているのです。肉体の行動など神様にとっては些末なこと。ですので信仰は不要です。」
村人「神様はほんに優しいお方じゃなあ。」
村人「ワイも救ってくれるんやで。」
村人「いつお迎えが来ても安心じゃ。」
く・・偽天使だと暴くどころか、信者にエサを与えるような結果になるなんて。
歩美「た、魂って21グラムっていうあれのこと?」
天使?「それは俗説に過ぎません。物質ではないので重さはありません。」
歩美「重さもないのに存在はしてるんだ。」
天使?「光も空間も重さはありませんが、存在しています。魂も同じことです。」
これ即行で考えているの?それとも十分に練ってからこの村へ来たの?
まさか本当に天使なんてことは・・・・
歩美「魂を証明することはできる?」
天使?「できますが必要ありません。もし証明したいなら、人の手で行わなければなりません。」
天使?「神様がなんでも教えてくれる世界になってしまったら、人は進化を止めるでしょう。」
天使?「真実を知りたければ、あなたががんばってください。」
歩美「いや私は報道記者になりたいわけで、研究者になりたいわけじゃないし。」
天使?「夢はたくさんあっていいと思いますよ。ふふ。」
ダメだ・・こいつを言い負かすことができない・・
村人「おっと、そろそろ行かないといけない時間だな。」
村人「おおそうだった・・天使様すみません、隣の村で祭りがあるのでしばらくみんないなくなります。」
天使?「わかりました。怪我しないよう気を付けてくださいね。」
村人「はい!」
村人「怪我したら手当てしてください!」
村人「怪我しますので手当てしてください!」
変態たちは隣村へお祭りに行った。
歩美「祭り好きなの?」
天使?「人手が足りないそうです。近隣の村で互助会があるんですよ。」
歩美「あんたは行かないの?」
天使?「昔からある地元のお祭りなんですよ・・私が行ったら、違うお祭りになりかねませんので。」
天使を祭る催しになりそう・・祭りの乗っ取りになっちゃうか。
・・分別あるのよねぇ・・悪さしているわけじゃないし・・
バスの時間ギリギリまで粘りたいけど、偽天使だって暴ける自信ない・・
・・
・・・・
村人「誰か、誰かいませんか!?」
用意されていた昼食を食べ終えた頃、慌てて村人が入って来た。
天使?「どうしましたか?」
村人「ああ天使様聞いてください。先日の大雨で山がその、土砂崩れを起こしそうになっていたのですが・・」
歩美「そうなの?」
天使?「はい。4日前に大雨が降ったんですよ。」
村人「なんだか山の様子がおかしくて・・誰かに山を見て来てもらいたかったんですが、役場へ行っても誰もいなくて・・」
歩美「隣村へ祭りに行ったんだっけ。あなたは行かなかったの?」
村人「子供が熱を出してしまって・・遠くへ行くのはちょっと・・」
それは仕方ない。
歩美「わかった!なら私が山を見てきてあげる。」
村人「え、そんな。」
天使?「危ないですよ?」
歩美「あんたも行くから大丈夫。」
天使?「え?」
歩美「見て来るだけなら構わないでしょ。別に死者を生き返らせてってお願いしているわけじゃないんだし。」
天使?「・・そうですね。では行きましょうか。」
村人「ああ、ありがとうございます、ありがとうございます。」
一宿一飯の恩ってやつね。
・・
・・・・
基本的に私たちは素人なので、山の様子を写真にとってくることになった。
歩美「天使なら土砂崩れもなんとかしてよって言いたいけど、人間を手助けしないんだっけ?」
天使?「人の世界は人の力で解決しなくてはなりませんから。」
楽なお仕事でいいですねっと。
歩美「とりあえずこの辺りからとっていけばいいよね?」
天使?「不安ならメモリが尽きるまでとりまくればいいと思いますよ。」
確認するのも大変そう。
どこで撮影したかわかるように、遠くを撮影してから細かいところをとる。
それを繰り返しながら山を登っていった。
ズズ・・
歩美「・・素人目でもなんかやばそうってわかるんだけど。」
ある程度登ったところで、いかにも土砂が崩れそうってところにぶち当たった。
一応撮影するけど、これ・・やばくない?
ズズズ・・
天使?「・・ですね。避難した方がいいかもしれません。」
歩美「というか、なんか嫌な音してない?」
ズズズズズ・・
天使?「土砂が流れて来てる!?」
歩美「に、逃げなきゃ!」
グラグラ・・グラグラグラ・・!
歩美「じ、地震!?」
天使?「キャーキャーキャー!」
ズズズズズズズズ・・
土砂も本格的に動き出した!
天使?「キャーキャーキャーキャー!!!」
歩美「きゃーきゃー言ってないでなんとかしてよ!あんた天使なんでしょ!?」
天使?「違うんです!私本当は天使じゃないんです!」
歩美「はぁ!?」
天使?「日本のアニメとコスプレが好きで日本にやって来たらこの村に迷って来ちゃって!そしたら村人さんが私のこと天使だって言うからー!」
歩美「な、な・・」
なにそれ!?
あ!地震が治まった?
歩美「今のうちに早く山を下りるわよ!」
天使?「ダー!」
да?ロシア語?
・・
・・・・
なんとか無事に戻って来れた・・
天使?「さすが山や丘が7割の日本です。土砂災害のアニメとかもあるんでしょうか?」
歩美「地震や津波もそうだけど、災害が起きると放送が自粛されちゃうからあまり作られないわ。」
天使?「そうですか・・ある意味それも特異性ですね。」
歩美「って、天使じゃないってどういうことよ!」
天使?「あはは・・さっき言った通りです。村人さんが間違えたからつい・・だって食べ物おいしいしアニメ見放題だし。」
歩美「こんな田舎でアニメなんかやってんの?」
天使?「テレビ東〇が映るんです♪」
アニメ局ね。
天使?「あとネットでも見れます♪」
歩美「電波来てんの!?携帯つながらないんだけど!」
天使?「公民館に有線あります。携帯はつながるところとつながらないところがあるそうですよ。」
天使?「あと電話会社でもつながりやすさは変わるって村人さんが言ってました。」
歩美「はぁ・・で、天使じゃないって証明できる?」
天使?「悪魔の証明はできませんが、私の証明ならパスポートを見ればわかるかと。」
歩美「もしかしてロシア人?」
天使?「はーい。寒いロシアからはるばる日本へやって来ました!」
歩美「日本語上手ね。」
天使?「日本の友達が教えてくれました。」
歩美「じゃあ昨日の講演とか神様の話はなんなの?」
天使?「それも日本の友達が教えてくれました!」
天使?「日本は宗教法人が10万以上あるんですよね。必ず救いがあるから信仰は自由でいいんだって。」
え、日本ってそんなに宗教あるの?日本大丈夫?
天使?「私、日本の友達に大切なことたくさん教えてもらいました!」
天使?「今もネットで相談乗ってもらったりしています。」
歩美「その友達って誰なの?」
天使?「ジェミニさんです。」
歩美「日本人じゃない!」
そいつも外国人でしょうが!
村人「あ、いた!」
村人「天使様大丈夫ですか!?」
村人「ふたりとも怪我はない?大丈夫だった?」
歩美「超やばかったわよ。土砂崩れに地震に、死ぬかと思った。」
天使?「私たちは平気です。ちょっと走って疲れたくらいです。」
歩美「それよりほら、あんた言うことあるでしょ!」
天使?「はい・・あの、みなさんすみません。実は私、天使じゃないんです。」
村人「・・は?」
村人「なに言ってんですか?」
村人「ああ、新ギャグですね。」
信者怖い。
歩美「本人が違うって言ってるんだから、あなたたちの勝手な妄想を押し付けない!」
村人「え?でも・・」
村人「天使なんでしょ?」
村人「だってほら、山が・・」
山?
振り返って私たちが調べに行った山を見てみた。
土砂崩れは間違いなく起こっていた。それは山を見ればわかる。
でも・・土砂は村を回避するように不自然なルートを描いていた。
村人「あれを見れば誰だってわかりますよ。」
村人「疲れたでしょう。今日は早めに休んでください。」
村人「ごちそう作るよ♪」
歩美「・・なにあれ・・?」
天使?「私・・わかりません。」
あれを見たら・・事前に天使じゃないと聞かされていない限り、信じちゃうよね。
私は不自然なルートを描いた土砂崩れを写真にとった。
・・記事はこれでいっか。
・・
・・・・
バスの時間が迫っていたから村を出た。
迷惑かけたということで、たくさんお詫びをもらった。
・・これでお母さんの怒りが治まってくれればいいんだけど・・
一応偽天使のパスポートも見せてもらった。うん、普通にロシア人だった。
天使「あら、お帰り?」
歩美「あれ?偽天使ちゃん公民館にいたはずじゃ・・?」
天使「どこにいても私の勝手でしょ。」
まぁそうだけど、いつ追い越したの?
天使「どう?楽しかった?」
歩美「超怖かったわよ!もー死ぬかと思ったんだから!」
天使「死んでも救われるんだから構わないでしょ?」
歩美「生きたい!」
天使「そう。また気が向いたら来なさい。遊んであげるから。」
歩美「なんか偉そうになったね。偽物だってバレても構わなくなったから?」
天使「偽者も本物もないわ。私は私、別人になったりはしない。」
歩美「・・そ、そう?」
なんか・・雰囲気まで違っている気がする。
バス「ぷっぷー」
天使「バスが来たわね。じゃあお帰りなさい。」
歩美「言われなくても帰るけど・・またね。」
天使「ええ、また・・」
私はバスに乗って家に帰った。
・・
・・・・
・・・・・・
歩美「・・土砂崩れの記事じゃあまり稼げないかぁ・・」
オカルトマニアが食いついたのはありがたいけど、天使がブーム過ぎて他のネタじゃ弱い。
偽天使ちゃんの話題はねぇ・・あんな超常現象の後じゃ偽記事扱いされそう。
炎上させたいわけじゃないから・・
歩美「いいなぁみんな天使の記事で閲覧数稼ぎまくってて。」
しばらく動画サイトに入り浸る。
無名の投稿者が【新情報:天使様】のタグをつけただけで1万人以上閲覧ですか、そうですか。
しょうもない中身のゴミ動画でもいいんですか、そうですか。
あーダメ闇に堕ちそう。
私こんなにがんばっているんだから、もっと評価されても良くない?
自腹切って現地へ行って、帰ってはお母さんに怒られて。
あーダメ暗黒に染まりそう。
この動画もすごい閲覧数だし・・あれ?この人・・
もしかして偽天使ちゃんの情報をくれた人?
ちょっと動画を見てみた。
・・
・・・・
ジェミニ「今日は天使の生態について話しますね。」
間違いない、タレコミにあった学校にいた人だ。
偽天使ちゃんだったけど、一応この人の言ってることは間違っていなかったわね。
でも・・天使の生態って、どうすればわかるの?
ジェミニ「まず殆どの天使は神様のところにいるんですよ。だから、会うことは滅多にありません。」
ジェミニ「もしみなさんが天使に出会ったとしたら、その天使は間違いなく神様のために地上へ来ています。」
ジェミニ「天使に出会っても、お仕事の邪魔はしないであげてくださいね♪」
・・美人はなにしても得よね。
ここにも信者がいるみたい。
コメント「もちろんです!天使様のためならこの身を捧げる所存なり!」
コメント「今日もジェミニ様お美しいです!ご尊顔を拝謁できて恐悦至極!」
コメント「天使情報キター!拙者のところへも来てください!」
とりあえず、お前らは死ね。
胸か?やっぱり胸の大きな子が好きなのか!?
この投稿者も胸大きいし・・ええい、日本人なら慎ましくあれ!胸も慎ましく!
偽天使ちゃんはロシア人だったから大きくてもいいとして!
ジェミニ「天使と出会った時にやってはいけない3つのルール!」
ジェミニ「天使は人間より超格上の存在です。気に入らないことをすると罰を受けちゃいます。」
ジェミニ「その1.願い事はしない。」
ジェミニ「天使は、なんで人間の願いを叶えなくちゃいけないの?と思っています。」
ジェミニ「そんな天使に、お金持ちにしてくださいとか、幸せにしてくださいとか願う人が多いです。」
ジェミニ「絶対にやめましょう。ただし、天使から願い事を叶えてくれると言った場合はOKです。」
ジェミニ「その時は、かわいい願い事をしてあげてくださいね♪」
コメント「天使様が欲しいです!」
コメント「ジェミニ様とお付き合いしたいです!」
コメント「幸せになりたい」
ジェミニ「その2.触らない。」
ジェミニ「意外と抱きつこうとしたり、体に触れようとする人が多いです。」
ジェミニ「人間だって、いきなり抱きつかれたりしたら嫌でしょう?もちろん相手にもよりますが。」
ジェミニ「絶対にやめましょう。ただし、天使から触って来た場合はOKです。」
ジェミニ「その時は、天使に身を任せましょう♪」
コメント「準備万端です!さあ天使様どうぞ!」
コメント「家に帰ったらすぐお風呂入ります!いつ天使様が現れても大丈夫です!」
コメント「胸毛は抜いた方がいいですか?」
ジェミニ「胸毛があっても気にしませんよ。その3.天使だからああしろこうしろと言わない。」
ジェミニ「天使だって自己があります。自由に考えて行動したいです。」
ジェミニ「天使だから人間を救ってとか、天使なら弱者を救えとか考えている人が多いです。」
ジェミニ「ですが天使は・・神様こそすべてです。人間なんてどうでもいいです。」
ジェミニ「絶対にやめましょう。ただし、天使が自由意志で人間を助けようとした場合はOKです。」
ジェミニ「その時は、いっぱい天使に甘えちゃってください♪天使の言う通りにすれば何も問題ありませんよ。」
コメント「胸毛派のみんな!オレたちの時代が来たぞ!」
コメント「来てない」
コメント「思いあがるな」
コメント「例えジェミニ様が気にしなくても、オレは気にする。」
ジェミニ「さて、なら天使と出会ったらどう接すればよいか・・をお話します。」
ジェミニ「天使に話しかける場合は気を付けてください。機嫌が悪いと殺されるかもしれません。」
天使って、そんなヤバいの?
ジェミニ「ある程度距離を開ける。礼儀を忘れない。天使がなにかしていたら声をかけない方が賢明です。」
ジェミニ「逆に天使から声をかけられた場合は大丈夫です。多少馴れ馴れしくても天使は気にしません。」
ジェミニ「その代わり、天使が高圧的でも気にしないであげてくださいね。」
コメント「高圧的OK!オレのところへ来てください天使様!」
コメント「どこへ行けば天使様に会えますか?」
コメント「どこへ行けばジェミニ様に会えますか?」
ジェミニ「天使に会いたい場合は、天使好みの人間になりましょう。」
ジェミニ「天使に会いに行くことはできないので、天使の目に留まるような存在になるしかありません。」
ジェミニ「では天使の好み3選!」
ジェミニ「その1.優秀な人。」
ジェミニ「優秀な方には、たまに天使がお手伝いを依頼しに来ます。」
ジェミニ「ひと月前の世界滅亡の危機に選ばれた人たちがいましたよね。あの方々がそうです。」
ジェミニ「ただ・・優秀って抽象的ですよね。苦痛に耐え困難を乗り越え目的を達成できる人・・じゃなくても大丈夫です。」
ジェミニ「足りない部分は天使が補ってくれますので、苦手なことがあっても大丈夫です。」
ジェミニ「得意なことが無くても大丈夫です。」
ジェミニ「必要なこと、それは・・成長を諦めないことです。常に学ぶ気持ちを忘れないでください。」
コメント「今日も横に成長しました!(32歳)」
コメント「アルファベットを覚えようと思います!(41歳)」
コメント「九九が覚えられません。明日もがんばりたいと思います(28歳)」
ジェミニ「その2.善人。」
ジェミニ「ただし、天使基準の善人です。人間基準の善人だと天使は興味を持ちません。」
ジェミニ「天使基準の善人とは、自制のできる人です。」
ジェミニ「自制とは、欲の制御ができること。」
ジェミニ「大金を持つとお金を使いたくなりませんか?地位や権力を持つと他人への対応が変わったりしませんか?」
ジェミニ「それが悪です。」
ジェミニ「環境で自分を変えたりしない人が天使基準の善人なのです。」
ジェミニ「みなさんは人間ですから、人間基準の善人でありつつ、天使基準の善人でもあると嬉しいですね。」
コメント「死ぬまでオタクであり続けます!」
コメント「死んでもオタクであり続けます!!」
コメント「いつまでも子供の気持ちを持ち続けています!はよ天使様御光臨ください!!!」
ジェミニ「あまりにも自分を変えなさ過ぎて、人間社会で軋轢を作らないようにしましょう。」
ジェミニ「その3.精霊の加護を得た人。」
ジェミニ「天使は人間ひとりひとりをいちいち見たりしません。その役は精霊が担っています。」
ジェミニ「そのため精霊は”お気に入りの人間”をキープしているんです。」
ジェミニ「実は世界滅亡の危機にも、何人かは精霊がキープしていた人間から選ばれています。」
ジェミニ「では精霊に気に入られるには?ですが・・これは簡単です。勇者タイプが好まれます。」
ジェミニ「精霊の加護を得た勇者が魔王を倒した・・という物語が精霊たちの中で大ブームになったことがあるの。」
ジェミニ「精霊たちは思いました。自分も勇者を助けて物語の主人公になろう!と。」
ジェミニ「主人公は勇者じゃないか?というのは置いといて、精霊はそこそこ天使に信頼されていて交流もあるので、精霊を通じて天使に会えるかもしれません。」
コメント「精霊にはどうすれば会えますか?」
コメント「ジェミニ様とはどうすれば会えますか?」
コメント「チートとかない?」
ジェミニ「チートは・・秘密です。私とはここで会いましょうね♪」
ジェミニ「精霊はいつでもみなさんと共にいますよ。水の近くでは水の精霊、夜には闇の精霊、メロンパンにはメロンパンの精霊がいます。」
ジェミニ「ですので、あれをすればいいこれをすればいいというより、生活すべてを模範的にしなければなりません。」
ジェミニ「簡単ではないけど、できる方はチャレンジしてみるといいですよ。もしかしたら天使があなたのところへ行くかも♪」
コメント「そ、その程度オレなら簡単だな(汗)」
コメント「ジェミニ様と会いたいいいい」
コメント「いいこと考えた!もう一度世界の危機がくればいいんじゃね?」
ジェミニ「そこに気付くとはいい着眼点ですね。ですが、必ず天使が助け船を出すとは限らないんですよ。」
ジェミニ「人間にとっての世界は地球を中心に展開していますが、神様にとっての世界はもっと広いんです。」
ジェミニ「簡単に言うと、地球が無くなっても神様は困りません。この間の天使は気まぐれという名の優しさで助けてくれたに過ぎないんです。」
ジェミニ「天使は人間の奴隷ではありませんから、いつも助けてくれることを期待しちゃいけませんよ。」
コメント「わかりました!世界の危機を希望します!」
コメント「世界はいらない。ジェミニ様がいればそれでいい。」
コメント「それでも天使様に会いたいです(切実)」
ジェミニ「では・・あら、長話しちゃいましたね。頃合いを見て終わりにしましょうか。」
ジェミニ「最後に天使の悪い癖について話しますね。」
ジェミニ「天使は、神様の意志を世界に伝えるための・・インタフェースの役割も担っています。」
ジェミニ「そのため人に神様の意志を伝えようとする時は、人に似た姿になります。」
ジェミニ「ここまではいいのですが、そのまま人の世界で生活を始めちゃうことがあるんです。飽きるまでですけどね♪」
ジェミニ「ですが周囲には天使だとはバラしたりしません・・もしかしたら、みなさんの周りに天使がいるかもしれませんよ。」
コメント「じゃあもしかしたら、あの優しいお姉さんが天使の可能性も・・」
コメント「オレを冷たい目で見る後輩の子ももしかしたら・・」
コメント「あの子がオレの告白を断ったのも、実は天使で種族の違いからかも・・」
ジェミニ「その可能性はあります。可能性は。」
ジェミニ「天使は正体をバラしたりしませんが、隠しているわけではありません。バレても別に困らないので。」
ジェミニ「むしろ気付いてほしいと言わんばかりな行動をとることもあります。例えば超常現象を起こしたり・・」
ジェミニ「心当たりありませんか?例えば災害が起きた時、不自然な救われ方をしたとか。」
・・あれ?
そういえば私が天使を捜しに行ったところで土砂災害があったけど、土砂の流れが不自然だったような・・
ジェミニ「もしかしたら、天使がどこかにいるかもしれませんよ。」
ジェミニ「過去の事例では、現地の人と同じ姿になっていたことがあるんですよ。」
ジェミニ「見た目が同じだけで性格は違ったり。」
ジェミニ「ありませんか?同じ人がありえないタイミングで現れたり、性格が違っていたり。」
・・あれあれ?
そういえば村へ着いた時と帰る時の偽天使ちゃんと、公民館にいた偽天使ちゃんは性格違っていたような・・
帰るとき公民館で別れたのに、バスのところにも偽天使ちゃんがいた・・まさか・・
ジェミニ「滅多にないですけどね♪では最後まで見て下さってありがとうございました。」
ジェミニ「みなさん良い天使ライフを~♪」
私は急いで着替えて家を飛び出した。
天使がいたのに!天使と出会っていたのに!!!
もー私のバカバカ!
私は黄金の右手を高らかに天に掲げ叫んだ。
歩美「タクシー!」
1台のタクシーが止まった。
天使「お客さんどこまで?」
歩美「群馬の山奥まで!急いでちょうだい!」
天使「了解。シートベルトを忘れないようにね。」
私はシートベルトをして気合を入れた。
まだ天使がいますように・・私は必至に祈った。
END.