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96.大盾使いのメグミ

「コセさん達、まだこの村に居るのかしら?」


 危うい場面もあったが、魔獣の野原とゴーレムの坑道を通り、四人無事に第六ステージに辿り着けた。


「まだ早朝ですし、次のダンジョンの入り口で見張っていれば入れ違いになるのを阻止できるかと」

「良いこと言うわね、リンピョンちゃん!」


 この二人、第四ステージのボス戦以降から妙な一体感を放つようになったな。


「それにしても、メグミが大活躍だったわね! さっきのボス戦!」


 アヤが私を褒め出す。


「褒めたってなにも出ないからな」

「でも、本当に大活躍でしたよ。その鎧と指輪、メグミさんと相性が良いんじゃないんですか?」

「リンピョンまで……」


 ゴーレムの坑道で遭遇した、緑石のゴーレムからドロップした鎧と指輪。


 特に、”拒絶の腕の指輪”は使い勝手が良い。


「あのゴーレム、滅茶苦茶強かったわよね!」

「巨大な腕でなんでも弾いちゃうんだものね~」


 確かに危なかった。


 サトミの風系統の魔法で畳み掛けて、なんとか湖に落として倒したゴーレム。


「あのゴーレムが使っていたのとほとんど同じ能力が使えるようだし、確かに良いアイテムだ」


 四人で談笑しながら降りていくと、四人の灰色のローブの男女が、階段の終着点を囲むように待っていた。


「なに、コイツら?」

「なんか、見るからにヤバそうじゃない?」


 リンピョンとアヤの言葉に危機感を抱いたのか、私は反射的に皆の前に出ていた。


「貴方達はレプティリアンですか?」


 一人の女が、そう尋ねてきた。


 まさか、異世界に来てまでその名を聞くことになろうとは。


「……少なくとも、ノルディックではないと認識している」


「ハハハハハハ! 失礼した、同胞よ。我々は君達を歓迎しよう!」


 別の男が笑い出した。


 いったい、なにがどうなっている?


 この異世界転移は、レプティリアンの仕業だと言うのか? だとすると、レプティリアンはいつの間に異次元の壁を越える手段を手にしたというのだ!


「まずは、現在このステージを任されているリーダーに会わせよう」

「先代は亡くなられたので?」

「いや、我々がこのくだらないゲームから抜け出すべく、一年ほど前に先へと進まれた。現在この村に居るのは三十人程度だ」


 たったあれだけの応答で信用するとは、コイツらはもしや……。


 この男の口振りが確かなら、このゲームそのものにレプティリアンは関係ない?


「ねー、レプティんががぐぐあんーーぐう!!」


 空気を読めないアヤの口を封じるリンピョン。ナイス!


「獣人ですか……奇妙な者達だ。排除しては?」


 怯えるリンピョン。


「彼女は我々に従順です。必要ありません」

「異世界の人間である以上、その女はレプティリアンどころかアクァッホの遺伝子すら宿していないというのに?」


 アクァッホ側に属しているような言い回し。


 コイツら、やはりネガティブ派のレプティリアンか。


 チッ!! ネガティブ派だと分かっていれば……四対四の時に抵抗するべきだった!


 既に私達の周りには、レプティリアンと思われる者達が十人以上隠れている。


「着きました、少々お待ちを」


 目の前には、小さな丘をくり抜いて作られたと思われる家。


 どうにかして、隙を作らないと。


 男が丘の家に入っていくも、逃げる方向すら見当がつかず、戻ってくるまでの数分間を無駄にしてしまう。


 地の利が無い状態というのが、ここまで口惜しいとは。


「リーダーが、()()()で入ってこいと」


 竜の頭……交配が進む前のタイプが、この奥に居る!?


 いや、まさか……ここに居る奴らは全員!!


「申し訳ありません。私共は、交配がかなり進んだ世代でして」

「なんだ、劣等種でしたか」


 目の前の男から向けられる視線が、一気に蔑みに変わっていく。


「ちょっと、劣等種ってなによ! 偉そうにしないでよね!」


 アヤの馬鹿!!


「ていうか、竜の頭ってなによ? 厨二病でも煩ってるわけ!? 気持っち悪!」


 あ、これ死んだ。


「三人とも、逃げろ! ”拒絶”!」

「貴様!? ぐ!!」


 ここまで私達を連れて来た男を吹き飛ばす!


「そいつらは裏切り者だぁぁ! 殺せぇッ!!」

「ダウンバースト!」


 女のレプティリアンが叫んだ瞬間、サトミが魔法で風の壁を上空から叩き付けていた。


 さすがはサトミだ。

 常人なら、わけが分からなくて行動出来なかっただろう。


「リンピョン、殺す気で攻撃しなさい!」

「了解です!」

「逃げるのが最優先だ! リンピョン、逃走経路を見極めろ!」


 三人を連れ、私が殿(しんがり)となって当てもなく彷徨う。


「”深淵魔法”、アビスカノン!」

「”紅蓮魔法”、クリムゾンフレア!」

「”雷魔法”、サンダーレイン!」


 奴等の魔法が、次々と飛んでくる!


「マジックガイド――”拒絶領域”!!」


 ”大盾術”で魔法を引き寄せ、円柱状の衝撃波で全て吹き飛ばす!


「逃がさん!」

 

 男が、魔神・瞬馬が使用していたのに酷似したランス片手に突っ込んできた!


「――拒絶の腕!!」

「ゲフッ!?」


 緑色の巨大腕を出現させ、正面からぶちのめす!


「”大転剣術”、ハイパワーブーメラン!」


 リンピョンが左腕の”ソーサーシールド”を投げ、接近してきた女を足止めする。


「裏切り者共を、絶対に逃がすな!」


「さっき会ったばかりの人間を裏切り者扱い? あんたら、マジで気持ち悪いのよ!」


 アヤ、お願いだからこれ以上刺激しないで!


 それにしても数が多い。このままじゃいずれ……。


「”氾濫魔法”、リバーバイパー!」


 小屋が乱立する入り組んだ道に入ったら、突然水の大蛇が現れ、小屋数軒ごと私達の逃げ場を塞いできた!?


「これは!」

「また奴等か!」


 彼等も動揺している?


 なんだ? レプティリアンの仕業ではないのか?


「こ、こっち」


 青緑の左サイドテールの女子が現れ、フラフラしながら私達を誘う。


「助かりたかったら付いてきて……」


 彼女が三つの玉を放り投げると、広範囲に煙が広がっていく!


「ちょっと、説明しなさいよ!」

「静かに!」

「アヤちゃん、いい加減にしないと絞め殺すわよ?」

「「ひぃ!!」」


 アヤだけじゃなくリンピョンまで怯えているぞ、サトミ!


「“飛針”!」

「ああっ!!?」


「アヤちゃん、いい加減に……アヤちゃん!!」


 アヤの右手が……無くなっていた。


「当てずっぽうで良い! 絶対に殺せ!!」


 アイツら、私の友達を!!


「こっち、急いで」

「行くぞ、アヤ!」


 アヤを担いで、青緑髪の女の後を追う。


 煙が晴れる前に小屋の中に入ると、すぐさま緑の草をかき分け始める女。


 すると、その下から植物で作られた蓋を取り出し、通路が現れた!?


「治療はこの奥で。私が良いって言うまで喋らないでね……お腹減った」


 

 そうして、私達はアオイ、アヤナ、ルイーサ、カズマさん達と出会ったのだった。



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