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95.乙女の戦士ルイーサ

 木造の家の中に上がらせて貰う。


 内装……”神秘の館”に似てるな。


「メグミ、彼が噂の男かい?」


挿絵(By みてみん)


 騎士風の美女が現れ、剣を支えに凜と佇む。


 赤茶髪の緩いウェーブ掛かった腰までの長い髪に、多分ノーザンが装備しているのと同じ、銀の軽鎧を白い服の上に装着していた。


 外国人? でも、ジュリーとは少し感じが違う。


「私の名はルイーサ。よろしく、お客人」

「どこの国の人?」


 ナオが尋ねた。


「ん? ハハハハハハ! これでも日本人なんだよ、私はね」

「ハーフかなにかで?」


 もしくはクォーター?


「いや、両親は生粋のドイツ人だ。どちらも日本好きでね。二人が日本に来てから産まれたのが私なんだ。実を言うと、私はドイツ語どころか英語もろくに話せない! ハーッハッハッハッハッハッハー!」


 よく分からないけれど、豪快な人のようだ。


「どうだ、武士っぽいだろう!」

「……どの辺が?」


 なんだろう、凄く雑に扱いたくなる感じが。


「むぅ、日本らしさは難しいな」


 どうしよう、接し方が分からない!


「うるさいぞ、ルイーサ!」


 ドアを開けて現れたのは、髭面の男。


「すまない、カズマさん! だが、江戸っ子たるもの、この程度のことは気にするな!」

「お前、本当に日本出身か? TVの偏った情報で知ったかぶりしている外国人と大差ないぞ」


「コセ、ナオ、彼はさっき私達が通ってきた迷路を数年掛けて掘っていた奇特な男。カズマ、二十六歳だ」

「メグミとか言ったよな? 昨日来たばかりのくせに、言ってくれるじゃないか!」


 昨日来たばかり?


 俺達よりも数日早く出発していたはずなのに?


 それだけ、俺達の攻略スピードが早かったって事か。


「匿って貰っていること、感謝しております」

「俺も、お前らのおかげでガキ共に飯をたらふく食わせることが出来た。感謝してるよ」


「ガキ共?」


 まるで、小さい子がいるかのような口振り。


「貴方、どなたか居らしてるの?」


 男が現れたドアから…………身重の獣人の女性が現れた!?


「ハニー、歩いて大丈夫なのかい?」

「このくらい平気ですよ。これで五度目ですもの、感覚で分かります」


 五度目?


「お父さん、遊んでよ!」

「戦いごっこだ! バン! バン! ドーン!」

「お兄ちゃん達うるさい! マイちゃんが泣いちゃうでしょう!」

「う……うええええええええええええん!!」

「ほら泣いちゃったー!」

「「いや、一番声デカかったのお前」」


 なんだ? 家族コント?


「お前ら、あっち言ってろい!」

「狭い家ですけれど、好きに寛いでいただいて結構ですから」


 部屋に押し入れられる子供達と、柔和な笑みと共にそっと戻っていく犬耳の白髪美女。


「カズマさんは私達よりも大分前にこの世界に来たらしくてな。始まりの村で出会ったラテゥラさんと相思相愛となり、ペナルティーが軽めのこの村に定住することにしたらしい。ちなみに、妊娠していないときは毎晩のように奥さんを情熱的に――」


 見た目全然日本人じゃない日本人、ルイーサが変な事を語り出した!


「おい、やめろ!! 誰から聞いた、そんな話!!」

「ラテゥラさんから」

「アイツ……年頃の娘になに教えてんだ!」

「お父さん、うるさい! マイちゃんがいつまでも泣き止まないでしょ!」

「ご、ごめんなさい!」

「「だから、お前が一番うるさいんだって」」


 だからなに、この家族コント! ちょっと羨ましいんですけど!


「……か、家族を守るために迷路を作ったんですか。父は強しですか」


 珍しく自分から話題を振る。


「いや、あれは単なる趣味の産物だ。この村に来て、俺はすぐにピンと来たね! ここの土なら、良い迷路が育ちそうだってな! ガハハハハハハハハハハハッ!」


 迷路が育つってなんだ?


 ていうか、久し振りに抱いた俺の純粋な尊敬の念を返せ!


「ああー……上に行こうか。サトミ達が待ってる」

「はい、すみません」


 メグミさんに促され、階段を登り二階へ。


「あ……メグミ、オッハー」


 現れたのは、アヤナとは逆にサイドテールを作っている緑髪の女子。


挿絵(By みてみん)


「門の所でアヤナが怒ってたぞ、アオイ」


 この眠たそうな子が、さっき話に出たアオイか。


「なら、行かない方が良いね。触らぬ神に祟り無し。怒れる姉に近付かぬべし」

「いや、今行かないと、後でますます怒られるだろう」

「しょーのないお姉ちゃんだよ、まったく」


 アヤナと姉妹なのか、この子……相性悪いんじゃないか、この姉妹?


 階段を降りていった所を見るに、なんだかんだで交代に行ったのだろうか?


 通路の一番奥まで進み、角部屋の前まで来る。


「サトミ、コセを連れて来たぞ」


 ドアを開けるメグミさん。


 そして――即座にドア前から離れた?



「コセさーーーん、会いたかったわーーーっ♡!!」



「ゴホ!?」


 ――不意打ちで、腹に飛び込んできた!!


 鎧……メグミさんみたいにさっさと装備し直しておけば良かった!


「コセーーー!!」 


 この声はリンピョン!!


 まずい! 身動きが取れない状態で顔面を蹴られたりしたら!!


「とーーーーう♡!」



 ……ボニョンと、顔に柔らかい感触?



「ふぐ! んぐ! んごーーっ!!」


 息が! 息が出来ない!!


「あんたら……コセから離れなさいよ!!」


 ナオが助けてくれた。

 本当に死ぬかと思った! ……まだ背中が冷たい。


「あれ、なんでナオちゃんがここに? リョウ君達も居るの?」


 サトミさんがナオに尋ねる。


「ああ~……あんたらのパーティーに入れて貰おうと思って、追い付くためにコセ達のパーティーに無理言って入れて貰ったんだけれど……」

「あら、そうなの? 私はいつでもウエルカムよ♪」


「いやー……もう、必要なくなったっていうか……」

「ん? どういう事?」



「私とコセ、結婚を前提に付き合うことにしたから♡」



 惚気るナオ。


 ……さすがに気恥ずかしい。


「あらそうなの? 私とリンピョンなんて……既に結婚してるけれどね!」

「へ!?」


 ドヤ顔のサトミさんを見て、俺を驚きの目で凝視してくるナオ。


 その奥で、冷たい微笑を貼り付けているように見えるサトミさん。


 この魔性の女、わざとか!


「あれ、もう一人は?」


 サトミさんのパーティーで、唯一未だに名前を覚えられない子。


「アヤちゃんは……」


 部屋の奥の隅で、ポツンと膝を抱えている赤髪ショートボブの女子。


「昨日村に来てすぐに、酷い怪我を負ってしまって……それと……」


 メグミさんに視線を送るサトミさん。


「……色々説明するよ。まずは、中に入ってくれ」


 そう言われるがまま、俺とナオは部屋のソファーに腰を降ろした。


「アヤも聞いて欲しい、私の秘密について」


 メグミさんが、申し訳なさそうに震える口を開いていく。



「……私は、宇宙人なんだ」



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