884.雄壮なる者達
「実り舞い上がれ――“雄壮なる英霊竜の永劫八千代”!!」
“ウェポン・クラスター”が変容していき、“雄偉なる大地母竜の永劫回帰”と、“雄偉なる精霊と剣は千代に”の特徴と能力を併せ持つ金銀の――最強の精錬剣をこの世に顕現!!
「よし」
精錬剣二振り分のデータ全てを注ぎ込んでいるからか、左腕の甲の竜の意匠まで剣の方に移ってしまっている。
「――“大地竜支配”」
土や岩を西洋竜の姿とし、暴風除けとなって貰う!
「一気に決める――“超噴射”!!」
“偉大なる黄金の翼”の推力に上乗せするも、近付くほどに増す竜巻の威力に、これ以上接近できない!
「クソ!」
「この風、僕がなんとかしても?」
いつの間にか、アテルの奴が隣に!
「……できるのか?」
「僕だって、君のその剣のように成長しているんだよ――“絶視なる剣翼”」
アテルのSSランク、“五葉手の九鬼の黒翼”から、片翼に二振りずつ、紅黒の剣が生え並んだ!?
「“アラハバキ”――“天照大御神”」
黒いオーラを纏ったと思ったら、翼に追随するように浮かぶ紅黒の四本の剣が激しく輝き出し――光が、前方に掲げられた“アマテルの太陽剣”の切っ先に集められていく!
「――[絶視滅却]」
収束された太陽光が掃射され、竜巻に直撃!!
「――ぁああああああああッッッ!!!!」
“アマテルの太陽剣”に二十一文字が刻まれ、威力が跳ね上がり――荒れ狂う暴風を消し飛ばした!!
「ハアハア」
追随する四振りの大剣が、灰色になった?
「今だ――行けぇ!!」
「――おう!!」
全速力で、巨大衛星へと突っ込む!!
「行くぞ!!」
剣に十二文字――十五文字を刻む!!
俺の“ウェポン・クラスター”に仕込んだ三振りの大剣は、“名も無き英霊の劍”と、“ディグレイド・リップオフ”で作った英霊の劍の偽物。そして――ザッカルから返して貰った、“滅剣ハルマゲドン”だ!!
「――“終末の一撃”!!」
総TPとMPの半分と引き換えに、歴代最強火力で黒の暴威を解き放つ!!
――炸裂した暴虐の威力が想定以上で――ヤバい!!
「ハアハア……し、死ぬかと思った」
“神代の天竜”を使うのが間に合わなかったら、余波で死んでいたかもしれない。
「……クエストが終わらない? ――まさか!」
炸裂した暴虐の痕跡が霧散していき……落ちていく残骸の発生地に……さっきまでの気象兵器とは様相が異なる、黒い円盤が!
「中に隠れていたアレが、“HAARP”の本体か!」
こっちは、さっきの一撃に全てを掛けてたっていうのに。
MPはほぼ無い。TPだけで終わらせてやる!
「――“飛王剣”!!」
『“因果逆転”』
斬撃が跳ね返ってきた!!
「“精錬剣術”――サラマンダーブレイク!!」
避けても追ってくるのが“因果逆転”のもっとも厄介な部分であるため、相殺を選択。
「コイツ、スキルも使うのか!」
厄介な天候操作をしてこなくはなった物の、どっちの方がマシだったのやら。
「“神代の剣”――“大地竜剣術”、グランドドラゴンブレイク!!」
『“拒絶領域”』
またしても弾かれる!
「――“一斉召喚剣”!!」
雄壮の剣に発現した、新たな力を行使――俺が持つ技能剣を一斉顕現!!
「“神代の飛踊剣”!!」
十二振りの大剣全てに、神代の刃を付与!
「――行け!!」
手数でその鉄壁を超える!!
『“逢魔の波動”』
暗い全方位への衝撃波だろうと、凌げるのは一瞬だけだ!!
『“魔力噴刃”』
振り抜かれるピンクの光線に、技能剣が次々と破壊されていく。
「どんな威力だ――大地の盾!!」
指輪の盾でなんとかやり過ごすも、大きく離される!
「と、とんでもない威力だな」
魔力うんちゃらは、総MP依存の能力だろうに。
光が止んだ――今しか無い!!
「“神代の剣”」
『――“累積成層”』
“アキュムレーション・イービル”が使っていた、巨大な半透明の球体を!
けれど、あのスキルを使っている間は反撃はない!!
「“英霊龍剣術”――グレートスピリット――ドラゴンブレイク!!」
十二文字分を乗せた一撃――でも、削れた成層は三分の一程度!!
「“飛王剣”!! ――“激情の一撃”!!」
TP一割以下の時にだけ使える強撃を叩き込んでも、まだ突破できない!
「“天照大日神剣術”――グレートソーラーブレイク!!」
アテルの奴が、成層を全て消し飛ばした!
『――“魔力砲”』
「――“神代の盾”ッ!!」
なんとか防ぐも、遠ざかっていってしまうアテル!
『“神代の剣斧”――“猛毒魔蠍斧術”――――ヴェノムスコーピアススラッシュ!!』
キクルの奴が、金銀の背負い物で飛行して来た?
『“拒絶領域”』
長大な一撃も防がれたか!
『“魔蠍技”――スコーピアスニードルズ!!』
「“英霊龍技”――グレートスピリットドラゴンブレス!!」
キクルの針群に合わせて、剣に発現した龍技を繰り出す!!
『“逢魔の波動”』
全部防がれた!
アレのスキル、俺達が使うよりも強力になってるだろう!
『“魔力噴刃”』
『――すまん、アサヒ』
キクルまで弾き飛ばされた!
「――“英霊龍剣術”」
全力で十二文字刻み――桃色の光刃をくぐり抜けて急接近!!
――後ろから巨大な気配――SSランクの“イービルヘキサドラゴン”が迫って――
「“勇猛大地剣術”――ブレイブグランドブレイク!!」
巨太刀が、赤黒い悪魔竜を叩き落としてくれた!
即座に大地竜を向かわせ、押さえ付けさせる!
「ユイに助けられたか!」
後でいっぱいキスしてやる!
「“英霊龍剣術”――グレートスピリット――ドラゴンスラッシュ!!」
不気味な円盤を真っ二つにした瞬間、一気に全身から力が抜けていく……。
――空が煌めいて、落下していく気象兵器に無数に刺さって……。
「コセさん!」
ユイの叫びに意識が引き戻され、なんとか着地体勢を取った!
「イツツ……」
今日は、やたら落下させられる日だな。
『――おめでとう、プレーヤー諸君。大規模突発クエスト、気象兵器を止めろ。クリアだ!』
「ハアハア、ハアハア」
早く帰って、ゆっくり休みたい。
『頂上まで到達した者達には、後日、特別ボーナスを出そう』
ふざけやがって。
「コセさん!」
ユイが来てくれる……男なの、なんか嫌だな。キスしたかったのに。
『さて、気象兵器“HAARP”を破壊した功労者の名を、ここで発表させて貰おう』
「いいから、とっとと戻せ」
『その偉大なる勇者の名は――《聖王騎士団》のレギオンリーダー、マサハルだー!!』
「クソ……」
さっきの光の剣は、ソイツの仕業か。
「火事場泥棒のまねごとをする奴が、偉大なる勇者? ――ふざけてる」
ユイが代わりに怒ってくれる……女の姿だったら、今すぐに抱き締めるのに。
「《聖王騎士団》のレギオンリーダー……マサハルか」
この借りは、絶対に返す。




