878.ヴェアヴォルフ・ザイン
○630KPを手に入れました。
「これで四千五百越え」
宝箱だけで二千KP近く貯められたのは、運が良かったのかどうか。
“太陽光支配”で、多種多様なゴブリンの群団を一瞬で焼き払う。
「お前達も、そろそろ消しておこうか」
“ゴブリンキング”と“ゴブリンクイーン”が揃うと、ランダムにゴブリン系のモンスターを出現させるため、遭遇した番三組をわざと生かしておいた。
「うん?」
最後の番のキングとクイーンが変異を始め、レジェンダリーモンスターの特徴的な黒い皮膚へと変わり、額に紅い宝石まで出て来る。
「レジェンダリー・ゴブリンキングに、レジェンダリー・ゴブリンクイーンて所かな?」
太陽光線を当てるも、頑丈な皮膚を焼くに留まってしまう。
「さすが、基礎能力に関してはSランク最強のレジェンダリー」
“アマテルの太陽剣”の剣先に、太陽光を収束させる。
『グジャァァァ!!』
「――[絶視光]」
収束させたレーザーを発射し、突っ込んできたクイーンの胸を貫き、一撃で終わらせた。
『グギャアアッ!!』
「君も後を追いなよ」
キングのハグを避け、“アマテルの太陽剣”の刃に太陽光を浸透させる。
「――[絶視閃]」
レジェンダリーの身体を、なんの抵抗もなく焼き切り――真っ二つにした。
支配の力とは相性が悪いアルファ・ドラコニアンに対抗すべく編み出した、瞬間火力特化の二つの秘技。
「五千までもう少しか」
「“聖剣支配”」
輝く無数の剣が、天より降り注ぐ!!
「“神代の巨翼”!!」
“五葉手の九鬼の黒翼”から青白い大翼を形成――数多の剣の雨から身を守る!
「彼の仕業か――“太陽光支配”」
無数の太陽光線を、遠くの三人組に対して放射!!
「“聖盾支配”」
今度は無数の輝く盾が出現し、僕の攻撃を防ぎきられる。
「まさか……SSランクを二種類所持しているのか」
「どうするんだよ、マサハル。三人でアイツを殺るのか?」
「KPの分配が出来ない以上、僕は宝箱探しを優先すべきだと思うけれどね」
鎌を持った野性的な男に、黒いバトルパペットを従えた眼鏡の男が、騎士然とした優男の指示を待っている様子。
「彼を相手にするのは割に合わなそうだ。時間も無いし、先へ進むとしよう」
背を向けて去っていく三人組。
「……」
チョイスプレートを開き、SSランク欄を確認。
「“聖神剣・ゴッドブランド”、“聖王盾・エンデュアーブランド”、“アダマスハルパーズ”、“アナイアレーションパペット”……全員がSSランク所持者だったか」
キクルと彼女からの情報を加味すると、奴等の正体は……。
「あれが、《聖王騎士団》のレギオンリーダーと、その幹部」
デボラの情報通りなら、あれがもっとも観測者達に贔屓にされている最大手レギオン。
「模造神代文字の存在も考えると……やっぱり、僕のレギオンだけで対抗するのは現実的じゃないか」
●●●
「――紫電一閃」
「――ハイパワースラッシュ!!」
アサヒさんと二人で……ベータを斬り殺す。
「今ので三千五百を超えました、ユイさん」
「なかなか集まらない」
二人で行動しているおかげで、危なげなくここまで来られたけど。
「私は四千二百ちょい……あ」
モンスターの大群が迫ってくる。
見えるだけでベータが二体。
「アレを一人で片付ければ、ユイさんは五千を突破できそうですね」
「見付けたぁ!!」
モンスターとは反対側から……明らかに目がイっているおかしいのが、真っ直ぐに駆けてくる。
「プレーヤーなら、千以上は手に入りそう」
「では、あちらは僕が貰います」
互いに、反対方向へと駆け出す。
せっかく一人になったんだし、アレを使うかな。
「“守護神/平将門”」
青い炎を纏う武者を、私の背後から呼び出す。
突発クエスト・乱天を超えよで手に入れ、譲って貰った私のお気に入り……なんとなくだけれど。
「来た」
“守護神/平将門”の能力は、私に近付くほどステータス、全ての耐性の低下というもの。
特に耐性は、私に接触するほどの距離になるとゼロ、ステータスは最大でも40%低下する……て、シレイアさんが言ってた。
逆に言えば、平将門はそれだけの能力だとも。
周囲に味方が居ると迷惑掛けちゃうから、これまで実戦で使用する機会が無かった。
「“太刀神降ろし”」
腕輪の能力で“波紋龍閃の太刀”を巨大化し、九文字刻む。
「“太刀風”――紫電一閃」
巨太刀の横薙ぎ一閃により、大型モンスターは両断――“太刀風”によって放たれた斬撃の余波を食らった小型モンスターの大半が絶命。
「4893KP……か」
困った……かろうじて生き残っているモンスターを全滅させても、ちょっと足りないかも……。
○○○
「“活性化”」
第三回大規模突発クエストのKPと引き換えに手に入れたSSランク、“アライブ・ザ・スラッシャ”に宿る二人の姉に起きて貰う。
『一日に何度も起こされるの、慣れないわね』
『そう言うな、ツカサ』
「ごめんね、ツカサ姉さん――“超同調”」
武器に宿る二人の意識と、自分の意識を繋げる。
「ハハハ、ヒヒヒ」
様子のおかしい男が、目玉が飛び出しそうな形相で僕を見ている。
『何コイツ、ラリってんの?』
『何をしでかすか、自分でも判らん精神状態かもな』
二人の警戒心が上がっていく。
「お、お前も殺す」
「お前も?」
「足りなかった……から、仕方なかったんだ……ヒヒ。代わりに、願いで生き返らせれば……ゆ、許して貰える……また仲間に、ヒヒヒヒハハハ!」
事情は分からないけれど、仲間を殺したうえで生き返らせたいらしい。
「悪いけど、願いを叶えるのは僕だ」
このSSランクを手に入れる直前、第三回大規模突発クエストで……殺されてしまった二人を生き返らせるために――僕が願いの権利を掴み取る!!
『――アサヒちゃん!』
ツカサ姉さんが持つサブ職業、“大賢者”が読み取った情報が、“超同調”を通して僕に伝わってきた。
「“ヴェアヴォルフ・ザイン”?」
奴が手にしている半面が、SSランク!?
「ヒヒヒヒヒ……俺のSSランクだ――“人狼支配”」
奴が仮面を装着すると、身体が変異していき……筋肉が膨れ上がった巨軀の人狼に!!
『さあ来い、俺の下部ぇぇ!!』
突然現れた黒い塵煙が収束していき、大半がBランクの“ワイルドワーウルフ”、上位種の“マサカーワーウルフ”が八に、“レジェンダリー・ワーウルフ”が三体。
『奴のライブラリにあるワーウルフタイプを、理論上、好きなだけ呼び出せるみたい』
『倒してもきりが無いってわけだ』
「ならば、狙うは」
“ヴェアヴォルフ・ザイン”、所持者の首!!




