873.蹂躙される蜥蜴
『“猛毒魔法”――ヴェノムゾーン』
直径四メートル程の毒沼を作り、強襲してきた“アサルトラプトル”二頭を落として絶命させる。
『敵はドラコニアンだけじゃないのか』
岩陰にあった宝箱からアイテムを回収。濃紫色の浮遊バイク、ヴェノムストライカーを指輪から召喚して乗り込む。
『――“劇毒弾”』
追随してくる恐竜系モンスターには毒玉を与え、正面から襲ってくる奴は、ヴェノムストライカーの前部分に固定装着されている“スティングカッター”で切り飛ばす。
《ようやく来たか、劣等種》
デカい斧を持った、アルファ・ドラコニアンが前方に。
頭に直接響いているからなのか、この距離でもハッキリ聞こえる。
《――“鬼の首取り”》
バカデカ斧が、高速回転しながら急接近!
『武器交換――“腐敗を猛毒竜で殺し尽くせ”』
“竜殺しの斧剣”と“猛毒破砕の大斧”を融合させた、俺の第四の相棒を手にする。
『“神代の斧剣”――ハイパワーブレイク!!』
飛んできた斧を、力尽くで薙ぎ払うッ!!
『ッ!!』
念で強化されていたらしいな……右肩が痛ぇ。
『構ってる暇は無い――一気に終わらせてやる』
神代の力を斧剣からマシーンに流し込み、スイッチを押して“スティングカッター”のエネルギーを充填。
《正面から突っ込んで来るなど、さすがの野蛮人共だ! そんな物、避けられんとでも思っているのか!!》
『――“万有引力”』
引きつける力として発動!!
《――なんだ、これは!?》
引き寄せられるまま――“スティングカッター”の突刃部分に貫かれるアルファ・ドラコニアン。
《――グァァァァぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!》
念による抵抗も虚しく、突刃はアルファ・ドラコニアンの身体をますます貫き、少しずつ引き裂いていく。
『完全に、油断が招いた敗北だったな』
おかげで、思いのほか楽に勝ちを拾えたぞ。
《だ、黙れぇッ! 劣等種如きがッ……この俺をぉぉッッッ!!》
『課題はまだ二つもあるんだ。とっとと消えてろ』
“腐敗を猛毒竜で殺し尽くせ”に十五文字を刻み――抵抗していたアルファ・ドラコニアンの首を刎ねた。
『蔑みは、劣等感の裏返し……か』
誰が言っていたんだったか、この言葉。
●●●
古代竜亀を“自動二輪化”し、宝箱を探しながら荒野を走る。
大きな岩や折れた木を見付ける度に裏側を確認。
何も無い事の方が多い物の、地道な努力の甲斐あって、ここまでに宝箱を四つ発見していた。
「……」
見付かった“ニューボディー”は全部で二つ。
ウララの元弟の分も見付けてやりたいから、できれば四つ。最低でもあと一つは欲しい。
「――“贋作”、“エンド・オブ・ガイアソード”」
迫る無数の砲撃を、隆起させた大地で防ぐ。
「魔神戦で見た気がするな」
“ワンホイール・ランナー”だったか……頭から砲撃するんだな。
背中に“エンド・オブ・ガイアソード”を収めた状態で、“大地支配”によるジャンプ台を設営。
エンジンを吹かしてジャンプ台を駆け上がり、大ジャンプ――“超噴射”で着地の衝撃を和らげ、包囲網を抜ける。
「やっぱ邪魔だな」
無視して進もうかとも思ったけれど。
大地の杭をそれぞれに飛ばし、“ワンホイール・ランナー”八体を破壊。
「……おいおい」
絶壁の方から、ベータ・ドラコニアンが三体、接近してくる。
俺の課題のノルマは、残り二体だって言うのに。
「“贋作”――“ジャスティス・アルスランザー”」
“正義支配”で起こした白刃を乱雑にばら撒き、念の守りに専念させる。
「“合体”」
足止めしている間に古代竜亀を纏い、上昇。
『“魔力砲”』
「大地の盾」
指輪で出した巨盾で防ぎつつ、避けながら尚も上昇していく!
「大地の剣」
コイツらの弱点は、大体理解した。
「“破壊剣術”――ブレイクプリック!!」
真上からの急降下――念の守りを鎧に刻んだ三文字で破り、“魔力砲”を使ったベータ・ドラコニアンの身体を大きく切り潰す。
レミーシャがベータに使った戦術を、参考にさせて貰った。
ベータはアルファに比べて念能力が弱いし、応用力も大したことない。
『“暴風纏い”』
別のベータが風を纏う。
「ん!?」
念の塊に風を纏わせ、撃ち出してきた!?
盾で防ぎつつ、再び上空へ。
「念とスキルを組み合わせてくるとはな」
厄介そうなのは放置して、もう一体を仕留めるか。
『“拒絶領域”』
――強烈な衝撃波をノーガードで食らい、弾き飛ばされるッ!!
「くッ……ハイヒール」
回復魔法なんて、久し振りに使ったぞ。
「くらう側になると、“拒絶領域”ってのはこんなにも厄介なのか」
どっちも攻めるには厄介なスキル持ちだけれど、回数制の“拒絶領域”の方がマシか。
「――シールドバッシュ!!」
“暴風纏い”が跳躍してきたため、“盾術”で弾き飛ばす!
その隙に、俺の真下に移動しようとしている拒絶のベータ。
「良いぞ、来い」
不可視の“拒絶領域”を盾で受け、上空に無抵抗に打ち上げられる!
「……危な」
念で強化されていたのか、遥か上空にあった不可視の天井まで吹き飛ばされてしまった。
足から着天したものの、警戒してなかったら頭から突っ込んで死んでたかもな。
「“一斉掃射”!!」
目眩まし兼、足止めをばら撒きながら、無抵抗に頭から落下。
「“偉大なる黄金の翼”――“飛翔”」
地面スレスレで急転換――横合いから拒絶ベータに迫る!
「ハイパワーバッシュ」
盾を前に掲げながら突っ込み、拒絶ベータを派手に転ばせ――即座に距離を詰めた。
「“魔人剣術”――サタニズムスラッシュ」
横薙ぎを一瞬止められるも、即座に神代の力で弾き消し――両断。
そのままの勢いで反転し、暴風ベータへ。
「ハイパワースラッシュ」
圧倒的な速度からの上段斬りを躱せず、念と暴風を必死に集約して受け止めるベータ。
「じゃあな」
正義の白刃でがら空きの胴体を切り刻み、仕留め終える。
「ハアハア……キツ」
宝箱探しにもう少し時間を割きたかったけれど、他の課題をクリアするための時間と体力も残しておかないと。
「……行くか。“自動二輪化”」
竜亀をバイクに変え、そう遠くない第二階層の絶壁目指してひた走る。




