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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第21章 傲慢なる理想の権化

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865.無限城郭

「……なにこれ?」


 いつもの祭壇の上から見えた景色は、様々な様式の砦や城がどこまでも森や山のように連なっている様。


「【無限城郭】は、今私達が居る正方形状のエリアが街で、それを囲う様々な見た目の城が攻略エリアって事になるね」


 最後に一緒にボス戦を終えたジュリーが教えてくれる。


「六十っていう節目だからか、随分と凝ったステージみたいね」


「これ全部が城……とんでもない規模だな。豪奢な物から簡素な物もあるようだが」


 レリーフェの言うとおりで、石でできた物から木製、豪華絢爛な神殿のような物もあれば、和風、中華風、インド風? 城というより砦っぽいのも多いけれど……遠くに機械っぽい物も見える気が……。


「あれ、コセ様は?」


 スゥーシャが、先に来ていたサトミ達に尋ねる……なんか、サトミとリンピョンだけ随分とグッタリしてるし。


「コセさんなら、約束の時間が押してるから先に下に行ったわ。なぜかユイちゃんも」


「メルシュとトゥスカ達は、ステージのイベントを消化しに行ったよ」


 サトミとメグミが答える。


「約束の時間?」


 タマが疑問に思っていたから、代わりに私が説明。


「今日の夜、アテルとキクルと大規模突発クエストについて話し合うんですって。三人だけで」


 まあ、男しか参加できないクエストなんだから、私達を除け者にするのも判るけれどさ~。


 なんだかんだで、たまに男の傲慢さみたいなのをコセ達からも感じるのよね……まあ、問題にするほどの酷さじゃないけれどさ。



●●●



「武具の品揃えが豊富なのですね」

「というより、武器の系統別に専門店があるっていうか。ほぼそれしかないって言うか」


 【無限城郭】の街を一緒に回るトゥスカに返事。


 ライブラリに無い武具は、最低一つは購入していく。


 基本的に大した武器は売ってないんだけれど、日替わりでランダムに高ランク武器が入荷されたりするから、毎日回る価値はある。


「それにしても、これだけ大きな街なのにプレーヤーが全然見当たらないねぇ」


 シューラの鋭い指摘。


 人一倍、周りを……人間を警戒しているだけあるわ。


「このステージ特有のギミックのせいだろうね」


 ジュリーの読み通り、今日がギミック発動日じゃなくて良かった。


 まあ、判ったのはアテル達が連絡してきたおかげだけれど。



●●●



「……待たせた」


 約束の十九時前だったものの、既に庭園に来ていたアテルとキクル。


「気にしなくて良いよ」

「たまには、女が居ない環境に浸りたかったしな」


 流れるような所作で俺の分の紅茶を入れてくれるアテルに、茶菓子を口にしているキクル。


「紅茶は無糖だ。その方がマシュマロとの相性が良いからね」

「そうか」


 席に着き、マシュマロと紅茶を頂く……うん、悪くない。


「さっそく、話し合いを始めよう」

「ところで、コセは六十ステージまで来られたのか?」

「ああ、ついさっきな。二人も、今は六十ステージに?」

「うん、その通りだよ」

「俺の所は三日前からな。いや、運が悪かった。アテル達が居なければ、死人が出ていたかもしれない」

「プレーヤーに襲われたのか?」


 話が逸れていっていると気付いていながら、つい深堀してしまう。


「ステージギミックさ。【無限城郭】は、五日に一度攻略が禁止され、その日の夕刻に四つの出入口から敵が侵攻してくるんだ」

「その侵攻日は午後から魔法の家の領域が使えなくてね。ちょっとした突発クエストが、五日に一度は起きるような物さ」

「となると、次の侵攻日は明後日か」


 大規模突発クエストの次の日……作為的と捉えるのは考えすぎだろうか。


 アテルが、紅茶を優雅に啜る。


「話を戻すよ。明日の大規模突発クエストだけれど、この三人での協力体制を提案したい」


 まあ、予想通りだな。


「クエスト内容が未知数である以上、どんなメリットやデメリットに繋がるか判らないが……まあ、その方が生き残れる確率が上がるか」

「俺も賛成するよ」


 提案に乗らない理由が無い。


「クエスト報酬の分配などは、終わった後に改めて話し合おう」

「話はこれで終わりか? なら、頼みたい事があるんだが」


 キクルからの提案。


「なんだ?」

「クエストが終わった後にでも……レギオンメンバー同士の交流の機会が欲しい……らしい」


 なんで歯切れが悪いんだ?


「まあ、良いんじゃないか?」


 お互いに新メンバーも居るだろうし。


「そうだね。ゲーム終盤までは、僕も同盟を維持して置きいたいし」


「「……」」


 やっぱり、敵対する気満々なのか。


「僕とコセが決着を着けるとき、キクルはどうする?」

「……さあな、まだ決めていない」


 まだ……ね。


 さっきからずっと、キクルが左目を閉じたままなのが気になるんだけれど。


「ところで……ちょっと人間関係について相談したいんだが」


「「え?」」


 一番年上のキクルから、人間関係の相談がしたいと言われるなんて。


 その後、食事も交えつつ、三人で少々下世話な話もしながら、夜中まで語り明かした。



●●●



「……」


 食堂のテーブルの上には、“滅剣ハルマゲドン”を始めとした数々の指輪やサブ職業メダルが。


「早朝から何を悩んでいるの?」

「お早う、クミン」


 珍しいタイミングでの顔合わせに驚きつつ、彼女に朝の挨拶。


「お早」

「クエストに挑むのが俺一人だからって、皆が色々貸してくれたんだけれど……これを全部使いこなせるかなと」


 装備セットとオールセット機能に、何をどういう組み合わせで組み込むか。


「……結構、苦労してるのね」


 チョイスプレートから出した卓上ポッドみたいなのから、温かいほうじ茶? を注ぐクミン。


「貴方も飲む?」

「……うん、貰うよ」


 飲むのには、まだ少し熱い。


 けど、少し肌寒いくらいの室温の中では悪くない。


「隠れNPCとの契約は、もう決めたのか?」


 偶発的に、クミンは五十九ステージの隠れNPC、シユウとの契約条件を満たしたらしい。


「まだよ。シユウの能力は聞いたし、“シュメルの指輪”ってのも余ってるって言われたけれど……契約するもサブ職業にするも、一長一短って感じでさ」


 キャロルをリーダーとして立てているところを見るに、あまり自分では決断したくないタイプなんだろうな。


「なら、暫く保留で良いんじゃないか?」


 すぐに決断しなきゃいけないような物でも無いし。


「……決断力が無いとか思わないわけ?」

「俺は決断する際に、優先順位を決めてから色んな情報を鑑みて決める。だから、優先順位が明確に見えないときは無理に選べないし選ばない」

「選ばない?」

「下手に選んでも悪い結果になりかねないからな。即決する必要が無いなら保留でも良いだろ」


 選んでいないことをちゃんと覚えておかないと、無駄にしてしまいかねないけれど。


「それに、最良の選択をしたつもりでも、後から前提条件が違うと判って、結果的に最悪の選択をしていた……なんて事もありえるし」


「ますます選択するのが恐いんだけれど……」

「俺も恐いけれど……リーダーだからな」


 なんだか妙な雰囲気になってしまった。


「朝から真面目な話をしてるわね」


 “砦城”で寝泊まりしているはずのミキコが、こんな朝早くにやってくるなんて。


「どうした、こんな朝早く」


 昨日、ちょっと様子が変だったけれど、本人が強がってたからそれ以上深くは追求していなかった。


「ザッカル達と戦闘訓練する約束をしてたのよ。まあ、ちょっと早く来すぎちゃったけど」


「そっか……ちょうど良い、これを預かっておいてくれ」


 腕輪を投げ渡す。


「これって……“奴隷神の腕輪”?」

「持ってると、間違って装備してしまいそうだからさ」

「あんた……死ぬ気じゃないわよね」

「万が一を想定しているだけさ」


 死ぬ気なんてこれっぽっちも無い。


「……」


 テーブルの片隅にある剣が目に入る。


 メルシュが俺に渡してきた、“堕ちた英雄の魔剣”が。


 この前の突発クエストで心境の変化もあったんだろうけど……それだけ、メルシュも今回の大規模突発クエストを警戒しているっていう証拠か。


 大量のスキルカードを融合し、“超化の種”まで使用する必要がある、“超全属性強化”と“超全属性付与”まで渡してきたし。


「コセ……」


 ミキコが近付いてきて、おもむろに口を開く。


「私と――精錬剣を作って」


 ミキコの意外な頼みに、すぐには返事をできなかった。


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