860.VS七十二柱
聖剣と剣がぶつかり合い、互いに後退する!
『我が名は“アロケル”! 七十二柱に名を連ねる者である!』
『私は“フルカス”。同じく、七十二柱を担う者なり』
赤い獅子の頭を持つ騎士然とした者と、同じく騎士然とした白髪の老人が悪魔共と立ちはだかる。
「その出で立ち、さっきまでの下品な輩と一緒とは思えないな」
あまりにも強そうな気配に、クマム達を先に行かせたのを少し後悔したくなってきた。
『我等は、召喚者の意の元に動くのでな。雌豚ども』
『一種の戯れではあったが、私達も一応、悪魔に連なる存在ゆえ――人を玩ぶのはなかなかの愉悦である』
武人のような凄みと、クズの精神性は両立するとでも? ――気持ちの悪い奴等だ。
「槍爺は俺が貰うぞ」
ザッカルが剣槍を構える。
「頼んだ」
「アルーシャ! 双子達と雑魚共を片付けろ!」
「畏まりました、ザッカル様」
各々が武器を構え――ぶつかり合う!
『おら、どうした! どうした! そんなもんか!』
“アロケル”とかいう獅子人間の剣技とパワーに、徐々に押され気味に。
「パワープリック!!」
“ヴリルの祈りの聖剣”を突き出すも、盾で去なされた!?
『スキルに頼る奴は弱え!』
“ヴリルの聖骸盾”の上から蹴り飛ばされた!
「クソ!」
コイツ、ある意味アルファ・ドラコニアンよりも厄介だ!
「“白骨火葬”!!」
高熱の灰を撒き散らす!
『“咆哮”――ゥガアアアアアアアアッッ!!!!』
声で灰を撒き散らされたうえ、私の身体が硬直――あっという間に距離を詰められた!?
「させるか!!」
“水星のアームロッド”で振るった“ヘビーバスターソード”による不意打ちが決まり、“アロケル”がアルーシャと戦っていた“グレーターデーモン”を巻き込んで壁に激突。
「助かった、アヤナ」
「さっさと、神代文字でもなんでも使って片付けなさい!」
すぐさまアオイの援護に戻るアヤナ。
『なかなか重い一撃じゃねぇか』
「――“抜剣”」
“ヴリルの祈りの聖剣”を“ヴリルの聖骸盾”に収め――左腰の鞘から新たな聖剣を抜く!
「アヤナの言うとおり、さっさと終わらせよう」
“ヴリルの聖なる古代王剣”に、“聖剣万象”を纏わせた状態で構える。
『俺達――魔神を舐めるなよぉぉ!! “天賦覚醒”!!』
ボス魔神専用と思われていた強化スキル!? 奴も使えたのか……。
「だが、好都合」
聖鎧たる“ヴリルの偉大なる聖剣玉座”の右甲に、三文字刻む。
「“極光剣術”――」
自分から前へ!
『“魔人剣術”――サタニズムスラッシュ!!』
「――オーロラブレイク」
黒い刀剣に王剣を叩き付け、破壊。
『なに!?』
「――極光脚!!」
武術の余波で体勢を崩した所に、顔面蹴り!!
『がグぅッ!?』
「――“抜剣”」
“ヴリルの聖なる古代王剣”を捨て――“聖魔剣のグリップ”により、聖剣系統と魔剣系統を付与されている私の創造剣――“真実に起ち上がりし英雄の導剣”を右肩の盾鞘より抜き放つ!!
「――ハイパワースラッシュ!!」
“ヴェリタライズ”の能力を受け継ぐ“真実に起ち上がりし英雄の導剣”には、被ダメージ軽減能力を無効化する力がある。
よって――“天賦覚醒”による黄金のオーラなどものともせず、“アロケル”の鎧ごと、その巨体を真っ二つにできた。
『この俺が……負けるなど……――』
「良い勉強になったよ、クズ野郎」
だから、とっとと消えてくれ。
○○○
「オラオラオラ!」
黒の剣槍、“万の巨悪を討ち滅ぼせ”で、白髪爺の槍と打ち合う!
『――“四連突き”』
一瞬の間隙に、スキルで反撃して来やがった!
「“獣化”!」
間一髪、手足が貫かれてもすぐに再生が始まったため、致命的な隙を晒さずに済んだ。
『弱いな』
『うるせー、爺』
単純に、対人戦の技術で押されるとはよ。
――“獣化”を解いて、感覚を研ぎ澄ませる。
『戻って良いのか? 致命傷一発で、あの世に行きかねぬ脆弱な姿となって』
「じゃないと、俺が成長できねぇだろう」
この先、もっと強い対人戦闘ができる奴等が出てきた時のために、こういうチャンスはモノにしなきゃよ!
「行くぜ!!」
再び武器を打ち合わせる!
より激しく、時には受け流し、ぶつけ合いの中で幾重の読み合いを繰り広げながら――致命の一撃を繰り出す隙を待つ。
『先程よりはマシだが――いつまでも付き合ってはおれぬわ!!』
瞬間的に加速した槍さばきにより、俺の剣槍が大きく弾かれる!
『ハイパワーキック!!』
「――逢魔拳!!」
裏拳で、跳び蹴りを弾き壊す!!
すれ違いざま、槍の穂先が頭を掠めた!!
『死ね!!』
「――ブレイズナックル!!」
振り返った次の瞬間には脇腹を深々と貫かれたが、反射的に“斬爪拳術”をぶつけて……なんとか仕留めた。
「ハアハアッ……ダサ」
チャンスに変えてやるって思っておきながら、この様かよッ……。
「ザッカル様!!」
すぐに治療を始めてくれるアルーシャ。
「……スキルとか、もうちょい見直してみっか」
対人戦の経験も、もうちょい積んでおきてぇな。
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「“氷炎纏い”!」
氷粉と火花を纏いながら、七十二柱とかいう奴に突っ込む!
「“魚群”!」
『“咆哮”――ボァァァァァァッッ!!!!』
牽制目的で放った水魚の群れが、一瞬で霧散させられる。
「――“超竜撃”!!」
まずはグリフォンを狙って、右手の“ドラゴンナックルバスター”で殴ろうとするも、翼で去なされながら避けられてしまう!
「“瞬足”――竜連拳!!」
瞬時に距離を詰めて両手で殴りまくるも、掠る程度で避けられ続ける。
「この――アイスフレイムバレット!!」
省略魔法で機動力を削るつもりが、今度は避けずに突っ込んできた!?
「“氷炎公”!!」
“氷炎纏い”で強化された人型の氷炎巨漢をぶつけ、ダメージを与え――構わず突っ込んでくるし!!
『“魔人剣術”――サタニズムブレイドぉぉ!!』
左腕の甲手で受けたとはいえ、パワーに差がありすぎて吹っ飛ばされるッ!
「こうなったら、大技で一気に……コイツ」
意図的にフェルナンダ達を背にし、そこから動こうとしない!
『エレガントに踊ろうぞ、武道家娘よ!』
「何がエレガントだ、馬鹿野郎」
本当、穢い人間を相手にしているみたいで嫌になってくる!
「良いわよ、やってやるわよ! ――オールセット4」
サブ職業も纏めて、装備を変更!!
私の背に、馬頭が生えた黄と銀の光輪――EXランク武具、“ポゼッション・マニピュレータ”が浮かぶ!
「本気でぶちのめしてやるわ!!」




