854.それぞれの裁判後
「おら、大人しく入ってろ! 罪人共!」
形だけの裁判を終え、牢屋らしき場所にパーティーメンバーごと押し込められる。
「フン! 大人しく、性奴隷にでもなっていれば良い物を。まあ、我々司法の側にとっては変わらんが」
いやらしい笑みを浮かべながら、去っていく看守らしき男。
「これで良いのか、ノゾミ?」
「はい、リューナさん」
今回の裁判は、ノゾミの言うとおりに選択していた。
「支払いを蹴るが、一番穏便なので……本当は、支払うを選択するのが一番特なんですけれど」
なんでか目が泳いでいるノゾミ。
「装備セット1……相変わらず、服と鎧以外は装備できないのですね」
手足が動くようになり、さっそく試すツグミ。
「それで、これからどうするっすか?」
サンヤの口調から、まだツグミ達に警戒心があるのが分かる。
「事態が変わるイベントがあるので、それまで待つしかありません」
「あ、食べ物は出せるみたいね」
人魚のハユタタが、サンドイッチをモグモグしだす……自分で用意していたのだろうか? アイツが料理をしているところを見た覚えが無いんだが。
「そういえば、朝食がまだでしたね」
「飯にしようぜ、ひとまず」
ヒビキとセリーヌの言葉に、すっかり食事ムードに。
「いつでも動けるよう、腹ごしらえは程々にな」
「失礼します」
いきなり、女の看守が入ってきた?
「そう警戒なさらず。まずはこちらを」
○装備が返ってきました。
そもそも取られてたんかい!
「災難でしたね、冒険者の方々」
「お前はなんなんだ?」
「私は、この腐敗した【法治都市国家】を憂う者」
「それで?」
「我々は近々、革命を起こします。貴女方は、その隙に都市を脱出してください」
これが、支払いを蹴るを選択した結果というわけか。
「できるならば、体制側の戦力を削っていただけるとありがたいです! それでは」
言うだけ言って去っていく女看守のNPC。
「革命が合図となり、アイテムを装備して街から脱出する事が可能になります」
「街の探索はしないのですか?」
「このルートだと出来ないんですよ。街での買い物は実質、お金を支払ってボス戦をスキップしたグループ限定なんです」
ヒビキ達の疑問に答えていくノゾミ。
「革命のタイミングは?」
「分かりません。オリジナルだったら、準備を終えるを選択すればすぐにイベントでしたけれど」
チョイスプレートにそういった文言が記載された物はない。
「なら、いつでも動けるように準備しておくしかないね~」
板チョコを頬張り、緑茶を飲むネロ……いや、シズカだっけか。
「お前……」
「……なに?」
声を掛けただけで、少々不穏な空気に。
「甘い物食う前に飯を食えよ」
身体に悪いだろ。
●●●
「グヘヘへへ! 良い格好になったな~」
自分の罪をパーティーリーダーに押し付けるを選んで貰った私は、全員分の借金を独りで払わなければならなくなり、一人だけ着替えをさせられた……やたら露出の激しい囚人服に。
「ですがこれで……」
レンさん達やユイさんのパーティーは、安全を確保できたはず。
フミノさん達が渋ってましたが、シレイアさんが大丈夫だと言ってくださったので引き下がってくれた。
「まったく、裁判長が羨ましいね。指名権第一位だから、外から来た新品を選びたい放題だ」
「指名権?」
首輪から垂れる鎖を引っ張られながら、どこかへと連れて行かれている最中。
「外から来た奴等が女複数の場合、そのうちの一人を一日目だけ指名する権利が与えられるのよ。ちなみに、検察官が二位で弁護士が三位な」
「……残念でしたね。私一人しか捕らえられず」
私がどう転んだとしても、皆さんは無事に先へと進めるはず。
「ガハハハハハハハハ!! バカな女だな! この国で裁判なんて形だけの物なんだよ! お前の元お仲間共は、今日からこの国の上級国民共に輪姦されるんだ!」
「な!?」
「今頃は睡眠ガスで眠らされて、上級国民共の別荘か何かに運ばれてるだろうよ。んで、早ければ明日以降に俺達下級役人に回ってくるってわけだ。たまには、お下がり以外を犯してぇもんだ。ていっても、この国の女共は幼少時に全員犯されてるだろうしな~」
ゲーム設定だとしても、胸糞悪すぎる……。
「ほーら、裁判長様の部屋に着いたぜ。とっとと入れや」
「……」
身体が言うことを利かない……まだ反抗できないのか、もう抵抗できる段階を過ぎてしまったのか……勝手に、足が部屋へと向かってしまう!
「ああ、そうそう。俺からアドバイスだ。できる限り媚びて自分から積極的に相手シな」
「――は?」
「あんま抵抗すると暴力振るうんだよ、あの裁判長。顔がグチャグチャに潰れた女なんざ、俺はゴメンだからよ」
本当に――クソみたいな身内を見ている気分。
「無事に会えたら、今度はこの俺の相手をしてくれや――一生懸命に媚びまくってな」
「…………殺してやる」
言わされているだけのNPCだと分かっていても、クズの朝鮮人の魂が乗り移っている気がして仕方ない。
○○○
「メルシュの案で、リーダーに押し付けるを選んだわけだけれど……」
ご主人様が男だからなのか、一人に押し付けた形となってしまったからなのか、別の場所に連れて行かれてしまった。
そのうえ私達は眠らされ、完全に見知らぬ場所に移動させられている有様!
「メルシュ、この後はどうするんだい?」
イラつき気味のシューラの問い。
「来たみたい」
「初めまして、皆さん。友好の証にこちらをどうぞ」
煌びやかで扇情的な格好の女性が鍵を開けて入ってきたかと思えば、無手で何かを差し出すような動きを?
○装備が返ってきました。
……いつ取られたのでしょう?
「このままでは、貴女方はこの国の特権階級の方々の慰み者にされてしまいます」
――一気に憎悪が込み上げる!
「どの選択肢を選ぼうと、この国の特権階級とぶつかるって流れは共通してるよ」
メルシュから、腹立たしいストーリーが語られた。
「本日、我々はこの国を変革するために決起いたします。そのため、どうか協力していただきたい」
「私達にどうしろって?」
不機嫌そうに尋ねるクミン。
「貴女方のリーダーが居る場所に襲撃を掛けてください。その際の混乱に乗じ、我々も行動を開始します」
私達に囮になれということですか。
「貴女方に少しでも罪の意識が残っているのであれば、これが償う最初で最後のチャンスです」
「……なんの話ですか?」
罪の意識がどうとか。
「あれじゃないかな。僕達がリーダーに罪を押し付けるを選んだから、そのエッチなお姉さんから見ると、リーダーを裏切った最低な一味って扱いなのかも」
キャロルに言われてようやく思い至る。
「メルシュ……」
さすがに睨んでしまう。
「このルートでしか手に入らないアイテムがあるんだよ。だから許して」
メルシュは時折、説明を疎かにしがち。
それが、どこまで意図された物なのか。
「貴女方のリーダーが連れていかれたのはこの場所です」
都市の地図を広げ、教えてくれる女性NPC。
「一時間以内にこの場所を襲撃できなければ、貴女方のリーダーの無事は保証できかねます」
「みんな、すぐに行くよ。ただ、道中に居る黒い甲冑や制服を着た連中は賊系のモンスターだから、一般NPCは傷付けないように積極的に片付けて」
「倒せば、何か特があるというわけだな」
「なら、私達は別々に動く?」
理解を示すロフォンと、建設的な提案をするクミン。
「どうなんです、メルシュ?」
「マスターを助け出すまでは、一緒に行動したほうが良いかな」
「では、まずは全員でご主人様の救出へ」
行動方針を決めたのち、私達は動き出した!




