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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第21章 傲慢なる理想の権化

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853.法治都市国家

「良かったの、ジュリー姉? 私達だけ、勝手にお金を払ってボス戦をスキップしちゃってさ」


 雪豹獣人のクレーレが訊いてくる。


「メルシュには話を通してるし、これはこれでメリットがあるから問題無いよ」


 エリーシャを魔法の家に置いてきてるから、その分の入国料は浮いてるし。


 四角状の黒い城壁に囲まれた都市、【法治都市国家】の内部へと、一人3000000(三百万)G支払って無事に入国した私達は、パスポート代わりの黒い首飾りを強制的に付けた状態で、暗い雰囲気の街中を進む。


「メリットってのは?」


 ホーン族のモーヴからの問い。


「魔神を倒した場合、強制的に五十九ステージの攻略が始まってしまうから、ろくに街でのイベントができなくなっちゃうんだ」


 その代わり、入国料と街での買い物で大金が必要になってしまうため、どちらの方がメリットが大きいというわけでもない。


 レシピ、食糧やアクセサリーなどを多めに購入後、都市外周部北側にある裏町へと足を運ぶ。


「空気の悪い街だなとは思ってたけれど、こっちは更に酷いわね」

「少し怖いです」


 ユリカとタマの言葉。


「……いらっしゃい」


 こちらを警戒しているのが丸わかりの、店員NPCの反応。



○以下から購入が可能です。


★栄光の杖        2500000(二百五十万)

★ロイヤルロードアックス 10000000(一千万)

★効能狩の大剣      6700000(六百七十万)

★薬液ランチャー     3400000(三百四十万)

            :

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「……なんか高くない?」

「ここは、言わば闇市だからね」


 売り物の大半は日替わりランダムだけれど、この闇市が入国ルート最大のメリットと言って良い。



            :

            :

★聖魔剣のグリップ    2500000(二百五十万)

★ウェポン・クラスター  15000000(一千五百万)

★天雷神の指輪      5600000(五百六十万)

★依り代薬×70       7000000(七百万)

★依り代薬のレシピ    9900000(九百九十万)



 手持ちに余裕が残るよう計算し、有効活用できそうなアイテムとライブラリ未記載のアイテム、そして、ここでしか手に入らない“依り代薬のレシピ”を購入。



「その“依り代薬のレシピ”っての、やけに高額だったようだが、どんな薬なんだ?」


 モーヴからの問い。


「服用してから五分間、誰でもカムイが使えるようになる消費アイテムだ」


 種族の縛りなくカムイが使用できるうえ、私のように“半ベルセルク”を身に付ける必要が無くなるため、サブ職業欄が一つ空く。


「カムイを同時に降ろすのは出来る?」

「さすがにそれは無理だけれど、クレーレが人魚やフェアリー族専用のカムイを使用する事は可能になるよ」


 五分間限定とはいえ、この薬による戦力アップは地味に大きい……けれど。


「ただ、デメリットもあります。薬を使用した直後から十分、あらゆる再生スピードが半分になってしまうんです」


 デメリットを説明するサキ。


 具体的にはTP・MP・OP、肉体の四つの再生スピードが半減してしまう。


 MPを常に消費するカムイとの相性が悪いうえ、MPがメイン攻撃の魔法使いタイプには特に使用するメリットの無い薬とも言える。


「私はMPを消費するスキルが多いし、ここぞって時の切り札にしたほうが良さそうね」

「……」

「何よ、ジュリー?」

「ちょっと鋭い意見だったから」


 ユリカの発言がゲームシステムをそれなりに理解していないと出て来ない物だったため、驚いてしまった。


「なあ、その薬は私が使うメリットはあるのか?」


 エルフのレリーフェからの質問。


「ハイエルフの“精霊憑依”の方が圧倒的に優れてるし、使用する意義はまったく無いね」


 種類を選ばずカムイを二つ同時に降ろせるレリーフェには、副作用によるデメリットしか無い。


「降ろせるカムイを三つに増やせないかと思ったが、そう上手くはいかんか」

「私が飲んでも一種類だけなんだから、増えるわけ無いじゃん、レリーフェ姉」

「目上の人間に対する口の利き方がなってないな、クレーレ!」

「おお、怒ったエルフは怖~い」


 じゃれつき始める二人……クレーレのムードメーカー的な振る舞いは苦手だけれど、少し羨ましくもある。


「私もクレーレみたいな性格なら、もっと甘えられたのかな」

 

 ママやパパに……コセにだって。


「それで、この後はどうするのです? ジュリー様」


 横から様付けしてくるタマに、懐かしさを覚える。


「この街の中心部、首相官邸を目指すよ」


 そういえば私、コセに必死にアピールしていた頃は人前でキスしたり……あの頃は、自然に甘えられてたんだ。



●●●



 パーティーメンバー全員が、抵抗できないままにだだっ広い空間に連れて来られた。


 この部屋、意匠は波打つような皺だらけで悪趣味だけれど、造りはまるで……。


「まるで裁判を行う場所みたいね、ここ」


 アヤナも、私と同じ事を考えていたか。


「これより、不法入国者達の裁判を執り行う」


 黒服の巨漢の男が、正面の高い位置から言い渡す。


「本当に法廷だったのか」


「検察官、彼等の罪状を」


 左側で座っていた眼鏡の男が立ち上がる。


「はい。彼等は我が国の誇り高き門番、六十七名を殺害し、不法に入国しました。検察側としては、彼女達全員を奴隷に堕とすのが妥当と考えます。以上です」

「弁護人」

「はい」


 検察の対面に居る男、私達の弁護士だったのか。


 まったく、何がどうなっているのやら。


「ルイーサをリーダーとする犯罪者グループですが、彼女達は全員が罪を認めております」


「はあッ!?」

「お前なんかと一度も話したことないぞ、エセ弁護士!」


 ザッカルとナオが騒ぎ出す。


「ですが、全員を奴隷堕ちにするのは些かやり過ぎかと。全員に入国料の十倍の支払い義務を課す、というのはどうでしょう?」


「検察官」


「彼女達にその意思があり、可能なのであれば一考の余地がありますね」



○以下から選択が可能です。


30000000(三千万)Gを支払う。

★支払いを蹴る。

★自分の罪をパーティーリーダーに押し付ける。



 選択肢がおかしい! なぜか私が一番損するし!


「どうします?」


 ノーザンの、皆に対する問い。


「普通なら支払いを蹴る所ですが、一人三千万ならなんとか払えそうです」


 クマムの意見。


「こうなるのなら、ジュリー辺りが何か教えてくれそうな物だが……」


 支払いを蹴るのは、何がどうなるか分からず怖いところ。


「……あ、支払うって選んじゃいました」


 リエリアのポン報告!?


「「「「おい!」」」」

「け、検察官!」


 なんだ? 裁判長が慌てだした?


「か、彼女達の罪状ですが、まだ有りました! 子供の誘拐、不法薬物の所持、公共物の破損、その他十二の罪状があります!」


「おい! これはあくまで不法入国の裁判じゃないのか!」


「そ、それほどの罪状があっては、お金で解決すべき領分を超えていますね」


 おい、弁護士! なにアッサリ引いてるんだ! 戦えよ!


「彼女達は、紛れもなく極悪の第一級犯罪者! 只の奴隷などでは生温い! 彼女達は全員、もっとも重い罰である――性奴隷の刑に処す!!」


「「「「はああ!?」」」」


「ヒュー!」

「最高だぜ、裁判長!」

「さすが、司法の鏡!」

「愛してるぜ、検察官!」

「ご苦労さん、弁護士ー!」


 いきなり現れた傍聴席? の奴等が、一斉に歓声を上げ始めた!?


「まさか、コイツら全員……」


 裁判長も検察官も弁護士も、傍聴席の奴等まで――全員グルだったって事か!!


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