845.三回目の大規模アップデート
○突発クエスト報酬を一つ選択してください。KPとランダム以外は早い者勝ちです。
★守護神/地獄の門番 ★守護神/円卓の王
★守護神/天照大神 ★守護神/月夜見命
★守護神/須佐之男命 ★守護神/ゴライアス
★現存する守護神からランダム。
★古代兵装/エレメンタル光星
★古代兵装/アーモリーゲート
★古代兵装/トライアルコンバージョン
★古代兵装/アンブレイカブルナックル
★古代兵装/ヒュドランザ
★古代兵装/キャンサーアダマン
★現存する古代兵装からランダム。
★ユニークセッター EX
★ウェポン・クラスター EX
★オールランクアップジュエル×5
★15000KP
「これが、今回の突発クエスト報酬か」
守護神と古代兵装が大半で、EXランクが二つか。
選ぶ権利は本来、参加したNPC達にあるんだけれど、契約者が選ぶ事も可能らしい。
「で、なんでこんな朝っぱらから集まって来たんだ?」
廊下に集った、正規の隠れNPC達に尋ねる。
「次の大規模突発クエストには貴方一人しか参加できないのですから、真っ先に戦力アップを図るべきでしょう」
テイマーのサキの意見。
「まあ、そうだけれど……性能や特徴が分からないと判断に困るな」
選ぶ権利があるのは本来、昨夜の突発クエストに参加していたNPC達だけなのに。
「ちなみに、“ユニークセッター”はユニークスキルを三つまでセットできる腕輪で、身体能力や耐性を上昇させる効果もあるよ」
「……なんで知ってるんだ?」
持っていないアイテムは、直接目にしない限り詳細不明だったはず!
「さっき、ナターシャが“ユニークセッター”を選んでたから」
「ナターシャが?」
あのナターシャが、俺に伺いを立てずに?
「ほら、今は選ぶ事を優先しなよ」
ウォーダイナソーのバルバザードに促される。
「ああ……俺が選ぶとしたら守護神か」
「昨日、“古代兵装の指輪”を幾つか手に入れたから、こだわる必要は無いぞ?」
本来、戦士である俺は守護神しか装備できないけれど、指輪があれば魔法使い専用の古代兵装を装備することも可能。
「……取り敢えず、守護神と古代兵装の特徴を一通り説明してくれ」
でないと、選択のしようがない。
「「「全部持ってないから無理」」」
コイツら……。
「ヒュドランザはキクルの所のパーティーが戦って手に入れていたから、詳細が分かるけれどな」
フェルナンダからの情報!
「まあ、まったくお前向きじゃない武器だが」
「そっか……まあ、選択肢が一つ減ったから良しとしよう」
とはいえ、これはダンジョン・ザ・チョイスのオリジナルプレーヤー達に、一通り訊いてから選んだ方が良さそうだな。
「……あれ?」
「どうした、メルシュ?」
「観測者側から連絡が来たみたい」
隠れNPC達に倣い、俺もチョイスプレートを開いてみる。
○第四回大規模突発クエスト、開催日に関する変更点のお知らせ。
○非常に重要なので必ず見るように。
「なんだか物々しいな」
今までに無い不穏な連絡。
○10月04日開催予定の第四回大規模突発クエスト開催と同時に、急遽、三度目の大規模アップデートの実施を決定。
○そのため、皆さんには魔法の家の領域か宿に避難して頂きたい。
○ご迷惑へのお詫びのため、当日は予定を変更し、無料で参加者以外の全てのプレーヤーをクエスト見学会場へとご招待。
○見学者への報酬も、元々の予定より豪華に変更することを決定。
○当日は安全を確保した状態で、予定を開けておいてください。
○奴隷の方々も含め、見学者全員にKPを10000P進呈致します。
その後に、KPと交換可能な景品がズラリと並ぶ。
「突発クエスト中に、大規模アップデートとはな」
「前回は新しい隠れNPC、バウンティーハンターシステム、SSランクアイテムの実装と盛りだくさんだった……」
メルシュの懸念に思い至る。
「それらに匹敵する追加要素が、また実装されるかもしれないってわけか……」
十中八九、俺たちに不利益な追加要素なんだろうな……面倒な。
「そんなところに集まって、いったいなにしてるの?」
朝食を食べに階段を下りてきたジュリー達に、困惑顔を向けられた……。
●●●
「アテル様、どう思われます?」
布団の中、隣で裸のまま寄り添って来る僕の妻、チーター獣人のクフェリスに尋ねられる。
「さすがに、なんの情報もなさ過ぎてね」
まあ、僕らの有利を潰すような何かなんだろうけれど。
「それでも、SSランク同様、ピンチをチャンスに変えさせて貰うまでさ」
それが、逆境を乗り越えて未来を切り開く高周波人間の在り方というもの。
「……アテル様一人を戦場に行かせてしまうのは、できれば避けたかったのですが……」
「安心して、クフェリス」
できるだけ優しい声を掛けながら、彼女の頬の髪を耳に掛ける。
「キクルとコセだって、参加するんだからさ」
「キクル殿はともかく、コセという男は間に合うのでしょうか? まだ六十ステージには辿り着けていないのでしょう?」
「来るさ。僕のライバルだからね」
額をくっつけて、彼女の吐息が僕に掛かる距離まで近付く。
「……アテル様は、あの男に対して盲目的になりがちです……」
「嫉妬かい?」
「……はい」
まさか、あのクフェリスが嫉妬と認めるとは……。
「じゃあ、いっぱいキスして」
「……はい♡」
クフェリスの執拗な口づけに全力で応えた結果、昨夜の続きを我慢できなくなってしまった。




