842.精霊と薔薇の舞闘
「“精霊の領域”」
精霊系統の威力を向上させる、範囲スキルを展開。
「――“精霊支配”!!」
“精霊のファルシオン”に仕込んだ偽“マスターアジャスト”の力で、大量の疑似サラマンダー、疑似シルフ、疑似ウンディーネ、疑似ノームを顕現し、骨共を片付けていく。
「精霊系統も属性系統扱いになるなんて思わなかったな」
バグか何かで、後から修正されたりしなければ良いが。
骸骨モンスターを蹴散らしながら、額に赤い宝石を持つ巨大黒骸骨が出て来る。
「“レジェンダリー・ジャイアントスケルトン”か――“飛剣・四源”!!」
逆手に持った“精霊のファルシオン”を振るい、単一属性の四種の斬撃を叩き込む!
さすがに頑丈だな。
「“逆三暗黒宮”」
骨野郎の徒手空拳を躱しつつ、暗黒の槍を損傷部分に食らわせていく。
「“六重詠唱”、“精霊魔法”――シルフレイド!!」
精霊系統の風の斬撃群を、上下左右から仕掛ける!
「“四源の翼”――“精霊剣術”、ウンディーネスラッシュ!!」
上空から急降下しつつ、“レジェンダリー・ジャイアントスケルトン”を精霊の水刃で切り裂いた。
「フー――“精霊剣術”、サラマンダースラッシュ!!」
強襲してきた“ヘルドーベルマン”を、すれ違い様に仕留める。
「ロザリオは既に持っているが、まあ良いか」
――近くで爆発!
「“玉蜀黍支配”!」
この声、ヨシノが戦っている?
「ロザリオも手に入れたことだし、合流してやるか」
●●●
ヨシノ様が操る鋼鉄の玉蜀黍の粒が全方位から襲うも、青い蜥蜴人間に全て弾き返される。
『“爆炎弾”』
「リバースプラッシュ」
奴のスキルと私の省略魔法の衝突により、水蒸気爆発が起きる。
「――ガッ!!」
距離を詰められたヨシノ様が蹴り飛ばされて――こちらに奴の注意を向けねば。
「“万雷投擲術”――サンダラスフリング!!」
“パチモンのトールハンマー”を投げ付ける!
『グルルァァッ!!』
念の力で、完璧に跳ね返された!?
「――“殴り参り”!!」
“深海竜の金巻手”で作った握り拳で、“パチモンのトールハンマー”を殴り返す!
「――“大狩り”!!」
接触直前、“パチモンのトールハンマー”を巨大化!
『ガアアアッッ!!』
念能力を乗せた腕の振り上げで、ハンマーを上方に打ち上げられた!?
「“植物魔法”――バインバインド!!」
ヨシノ様が拘束してくださる!
その隙に“跳躍”、巨大化した“パチモンのトールハンマー”を“深海竜の金巻手”で掴む!
「“氾濫鎚術”――リバーブレイク!!」
念能力による手応えは無し。仕留めた――肩から左腕を失ったドラコニアンが、私を狙って横合いから――
「“精霊棒術”――ノームスイング!!」
フェルナンダ様の“精霊の木銀杖”が青ドラコニアンの脇腹を打ち据え、ふっ飛ばしてくださった!
「選手交代だ。ヨシノの護衛をしていろ、エリーシャ」
「畏まりました」
……負傷させたとはいえ、果たしてフェルナンダ様一人で仕留められるのだろうか。
●●●
「“精霊支配”」
疑似四精霊を無数に生み出し、数の暴力を見舞う!
ドラコニアンもどきが相手となると、通じる戦法は限られるが……奴がモンスターではなく生物である以上、あの出血では長く生きられんだろう。
「まあ、相手が本物のドラコニアンだったら、“精霊支配”があっても戦いにならなかったかもな」
段々と、青蜥蜴の動きが悪くなっていく。
「……おいおい」
横合いから近付く気配に、肝が冷える。
「NPCしか居ないクエストに、二体目の青ドラコニアンだと?」
今、手負いのドラコニアンへの攻撃を緩めるわけには……。
「こちらはお任せぇ!」
クリスとサカナが、万全のドラコニアンの前に立ち塞がる!
神代文字を使えるクリスが居るなら、向こうは任せても大丈夫――だろうが、これ以上増える危険性も考えて、とっとと終わらせてやろう!
「“四重詠唱”、“精霊魔法”――サラマンダーブラスター!!」
一気に、念の防御に負荷を与える!
「――“精霊魔砲”!!」
念が弱まった隙間を狙い、総MPの半分を対価とした一撃を食らわせた!
「しぶといのは本物譲りか」
左半身を大きく吹き飛ばされたにも関わらず、まだ生きていやがる。
『“爆炎弾”ッ!!』
「“天磐戸”」
自身を石化し、火と光属性攻撃を完全無効にするスキルを適用。
“爆炎弾”を放ったその隙に、疑似四精霊の猛攻を叩き込んで……仕留めきった。
「この私に勝てるとでも思ったか!」
●●●
「“大海支配”!!」
サカナが銛を振るい、多方面から海水のレーザーを放ち始める。
今のうちでぇす!
「“古代兵装/兆星の門翼”」
星空を嵌め込んだような翼を展開――星々の彗星を放つ!!
最初は避けられるも、すぐに捉えて足止めに成功。
とっとと終わらせまぁす!
「咲き乱れろ――“雄偉なる薔薇の大輪に見初められて”」
青紫色の薔薇の意匠が刻まれた、大剣をこの手に!
「“薔薇大地剣術”――ローズグランドスラッシャー!!」
十二文字刻み、長大な斬撃で念能力ごと断つ!!
――精錬剣を食らうよりは、古代兵装と海水のレーザーの方がマシと判断しまぁしたか。
「“随伴の薔薇”」
光の薔薇の花びらを世界に散りばめ、青ドラコニアンの全身を切り刻む!
「“神代の発射口”」
動きは完全に封じた。
『――“瞬間移動”』
姿が消え、私の背後に回り込みまぁしたか――でも、神代文字で強化された五感には遅いくらい。
「“薔薇大地砲術”――ローズグランドバスター」
背後に現れた瞬間には、精錬剣の切っ先に展開した“神代の発射口”は、ドラコニアンの胸に狙いを定めていた。
「……こんな物ですかぁ」
【荒野の貧村】で戦ったアルファ・ドラコニアンと比べれば、大した敵ではなかった。
精錬剣に古代兵装、そのほか、あの頃よりもずっと強くなっていたとはいえ、本物相手ではこうはいかなかったでしょう。
「もっと、強くならなくては」
あの時の無力感を、本物相手に二度と味わうことがないように。
「私の出番……ほとんど無かったですの」
骨モンスターの牽制もしてくれていたサカナが、何か残念そうにしてる?