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841.謎の隠れNPC

『な、なんだったんだ、今のは?』


 一つの身体に複数の死人の意識データが入り込むだけでも想定外だったというのに、SSランクのような武器に模造神代文字? 知らないぞ、あんな物は!!


 乗っ取られたNPCは、クエスト終了後に乗っ取った者の新しい身体となり、プレーヤーとして復活するだけのはずだった。


 クエスト中に二種類のロザリオを他者に着けられれば、正常に戻るという裏ルールもあった……。


『……まさか、オッペンハイマー様なのか?』


 ベータ・ドラコニアンを提供してくれたり、()()()()も試験用にと貸し与えてくださった。


『だとしたら……いったいなにを考えてこんな……』



●●●



「た、助けて……」


 ブリーダーの隠れNPCとかいう奴の身体を運良く手に入れられたのに、なんであんな化け物に!!


「どこまで逃げんのよ、クソ雑魚NPCのくせにさ~」


 ドレスを着た女が、屋根伝いにどんどん距離を縮めて来る!


 目の前に、村外周部の骨の柱!? この先は不可視の壁でこれ以上先へは進めない!


「――死んでたまるかぁぁッ!!」


 この鞭で――殺してやるッ!!


「ハイパワーウィップ!!」



「――〔全反射〕」



「……へ?」


 なんで、私の鞭が私を打ち払って――血飛沫が酷く……。


「さようなら~――雑ー魚」


 レイピアの切っ先が、私の目に近付いてく――――



●●●



「……なんやの、あれ?」


挿絵(By みてみん)


 追われてた方は隠れNPCのブリーダーみたいやけど、追っていた方は隠れNPCであること以外解らん。


「〔全反射〕……あらゆる能力を跳ね返すスキル? デタラメ過ぎひん?」


 ユニークでもないようやし、純然たる隠れNPCであるうちの目で直接見ても、情報に靄が掛かったようによう分からん。


「メルシュなら、もう少し色々解ったんやろか」


 あの隠れNPC、ロザリオを二つぶら下げているから乗っ取られてはいないはずやのに、妙に人間臭さがあるんよね~。


「あのスキルは魅力的やけど、つつくにはリスクが大き過ぎやし」


「――“暴風矢”」


 この距離で狙われた!?


 ――尻尾に持たせていた“群青の大槍”で、はじき消す。


「なんやの、ほんま」


「高みの見物とかふざけてんじゃねぇぞ、狐ババア!」


「お口が悪いこと」


 整った顔立ちが台無しになるほどの穢らしい形相……死ねば良いのに。


「まあ、かまへんか」


 打開策もある事やし。


「“四連瞬足”!!」


 近付いてくる……完全に目を付けられてしもたみたいやね。


「“月光眼”、“三重幻影”――“水流弾”」


 “月光眼”による再生能力を発動した状態で、検証を始める。


「――グッ!!」


 “水流弾”の一発があの女の右胸を捉えた直後、幻影に関係なく私の右胸に激しい痛みがッ!!


「なるほど。能力を跳ね返すというより、能力によって起きた結果を跳ね返すいうところやろか」


「なに勝手に苦しんでるのさ! オバサン!」


「ほんま、憎たらしい子や――」


 九つの尻尾に持たせた武具で、バカみたいに突っ込んでくる阿呆の子をボコボコにする。


 万が一のために致命傷になるような攻撃は控えたけれど、必要なかったようやね。


「こ、このババア……」


「直接攻撃に対しては発動せんのやね、あんさんの〔全反射〕」

「わ、私のチート能力を攻略したつもり? ――舐めんなよぉぉ!!」


 この後に及んで、なにする気なん?


「――“女王の威光”」

 

 十六の光球を生み出した?


「くたばれ、ババアぁぁッ!!」


 ――光球を自分から殴って、うちに向かって!


「“瞬足”――“三重幻影”」


 躱した直後に二撃目、三撃目が飛んできたため、“幻影”でやり過ごす。


 自分のスキルを自分で受けた場合、文字通り反射するのが〔全反射〕のもう一つの能力というわけか。


「やりづらい相手やね」


 チート能力とかいうてたけど、向こうの土俵に上がらないと勝負にすらならないのは、まさしく狡アビリティ。


 さっきの感触からして、武器による通常攻撃だけで致命傷を与えられるかも怪しいし……。


「ほんまに、面倒な相手や」



●●●



「“咒血魔法”――カースブラッドダウン!!」


 赤黒い重圧を、スカルモンスターごと青ドラコニアンへと叩き付ける!


「――チ! “咒血武術”、カースブラッドサークル!」


 “ヴラド・キャリバー”で、全ての骨の弾丸を切り消す。


「“ターミネートスケルトン”か……」


 青ドラコニアンだけでも厄介だというのに、全身金属の武器骸骨までご登場とは。


 “オルトロス”や“スケルトンハイウォリア”と連戦しているというのに……残り一時間を切っているし、出し惜しみ無しでも構わないだろう!


「全力で相手をしてやる!」


 再び、全身の骨鉄砲身から銃弾を放ってくる“ターミネートスケルトン”。


「“咒血竜技”、カースブラッド――ドラゴンブレス!!」


 ちゃちな銃弾ごと、呪いの息吹を食らわせる!


「頑丈だな」


 Sランクにしては弱い物の、頑丈さだけはずば抜けて厄介なのが“ターミネートスケルトン”。


『グルルラァ!!』


 背後から、青ドラコニアンの強襲。


「――“万有引力”」


挿絵(By みてみん)


 弾き飛ばしたのち、“化け首・六重”を嗾けて足止めさせる。


「“咒血竜魔法”――カースブラッドドラゴフィジカル」


 身体能力を超強化。咒血系統、竜属性の攻撃も一時的に強化。


 “ターミネートスケルトン”の手首から放たれた有線の杭を避け、距離を詰めていく。


「“咒血魔法”――カースブラッドバインド」


 赤黒き血で縛り上げる。


「“刀剣化”――“斬鉄”」


 “ブラッドアブゾーバー”を刀剣にし、問答無用で金属を断ち切る“斬鉄”を適用――“ターミネートスケルトン”を逆袈裟切りにして始末。



『――“魔力砲”』



「――カースブラッドシャドウ!!」


 桃色の砲撃を、“咒血魔法”で自身を影に落とし、避ける!


「スキルを使うとは聞いていたが、“爪術”だけではなかったのか」


 影から出て、崩壊した村を駆けていく。


「“串刺し皇”!!」


 無数の血の杭を顕現し、追ってくる爬虫類野郎に放つ!


「“狂血支配”」


 血の杭の軌道を操りつつ、血の針細波を足元から仕掛ける。


『グルルアアッ!!』


 念の防壁で全て防いだか。


 ここまでやって、ようやくその場に釘付けにできた。


「武器交換――“雷鳥の天罰槍”」


 空高く飛び上がりながら、雷の大投槍を振りかぶる!


「“天罰の雷”ッ!!」


 念の壁を貫いて、深々と右肩に突き刺さる。


「“血液噴射”――“咒血の凶刃”」


 “ブラッドジュースの指輪”からマスターの血を経口摂取して“吸血強化”を発動。その状態でしか発動できない“ヴラド・キャリバー”の能力を行使し――長大な血の刺突剣へ。



「“咒血武術”――カースブラッドプリック!!」



 もう少しというところで、剣を止められた?


「――“万有引力”!!」


 今度は引き付ける力として行使――左鎖骨のすぐ下に切っ先が到達!


「“凝血結晶”!!」


 武具を突き刺した状態で発動――敵の血を強制的に結晶化させる!!


「……なんとかなったか」


 血が結晶化していった事で生物としての機能を維持できなくなった青ドラコニアンは、そのままピクリとも動かなくなり、光へと還っていった。


「伊達に、最強の隠れNPCをやっているわけではないんだよ」


おまけ

挿絵(By みてみん)

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