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87.二つのSランク装備

「なんか、随分ファンシーな部屋ね」


 魔女の黒歴史の方に進んだ結果、私達三人はピンク一色の部屋に居る。


「小さい頃はこういう部屋に憧れたけれど、落ち着かないわ」


 ユリカは憧れたんだ。

 私は昔から、少女少女しているのが苦手だったから理解出来ない。


「まさか……魔女の黒歴史って、そういう意味なの?」

「多分、そのまさかよ」


 こういうのが好きなママが考えた部屋で、黒歴史の意味を知らないのを良いことに、パパが”魔女の黒歴史”と名付けてしまったのだ。


 第一次離婚危機の引き金である。


「タンスの中を探してみましょうか」


 幾つもあるタンスとクローゼットを荒らしていく。


 真似をしているのか、サタンドレイクの幼竜がクローゼットを開けて服を嚙み嚙みし始めた。


「色々ありますね。あ、触れたらチョイスプレートが!」


 タマが驚いている。


「回収できる物は全部回収して行こう」

「――”煉獄の魔道服”!? 格好いい!! これ、私が貰って良い!?」


「良いよ」


 性能的にも、炎と闇を扱うユリカにピッタリだし。


「よっし!」


 青い”深淵の魔道服”から、デザインがよく似た”煉獄の魔道服”に着替えるユリカ。


 傍にあった姿見で格好を確認している。


 ……なんだかんだで、ユリカの胸の存在感が凄い!


 大きさでは大差無いはずなのに、形というか、張りというか……やっぱり凄いな。


「どうしたの、ジュリー?」

「な、なんでもない!」

「あ、ジュリー様、これ!」


 タマが持ってきてくれたのは、黄色と白を基調とした、ユリカが着ている物の色違い。


「”天雷の魔道服”」


 ユリカの”煉獄の魔道服”が火と闇を強化するなら、”天雷の魔道服”は雷と光を強化する。


「どうぞ」


 私が探しているのを知っていたタマが、手渡してくれる。


「ありがとう、タマ」


 早速、衣服装備を”魔術師の服”から”雷光の魔道服”に変更。


 装備セット1の設定も変更しておく。


 衣服を全て回収した事で、Cランクの二属性魔道服シリーズを一着ずつコンプリート出来た。


「さてと、後は……」


 ご大層に高そうなカーテンで隠されている、二つのSランク装備を回収するだけ!


 奥のカーテンを、勢いよく開ける!


「こ、これは……」


 ユリカがドン引きしている。


 無理もない。私も同じ気持ちだ。


 濃いピンクのドレスと、大きなハートがあしらわれたピンクの杖をさっさと回収する。


「ジュリー……今のって」

「”魔法少女の究極ドレス”と、”ラブリーハートな脳筋ロッド”?」


 チョイスプレートで確認したタマが、その禁断の名を口にしてしまった!!



「――うわああああああああああああああああああ!!!!」



「だ、大丈夫、ジュリー?」

「ハアハア。叫ばなければ、私は死んでいたかもしれない」

「どういう事ですか、ジュリー様!?」


 リアルで同じ物を作ったママに、一生の頼みと言われて着させられ、ポーズまで取らされて……写真まで撮られた事があるんだ!


 ちなみに、ドレスはママがデザインし、杖はパパの仕事。


 杖の名前により、第二次離婚危機が起きたのは、言うまでもない。


 

●●●



「相変わらず、おかしな薬品ばかりだね」

「シレイアさん、前に来たこと……あるの?」


 アタシの現マスターが訊いてきた。


「前のマスターの時にね」


 ……今も生きてんのかね、あの子は。


「……持ってくの、それ?」

「一応アイテムだからね。売れば金策にもなるし」


 棚にあった薬品を、軒並みチョイスプレートに入れていく。


 ”解毒薬”がほとんどか。”万能解毒薬”が一つ手に入っただけでも儲けもんかね。


 置いてある種類は、ある程度ランダムだからね~。


「扉の奥には”転落の魔女”が居るから。気を付けなよ、マスター」


 魔女が作ったという設定の薬品を回収し終え、マスターに目配せしてから扉を開けた。


 数歩進むと、ゲーム的な演出のために身体が硬直。


「なんじゃ、主らは?」


 部屋の真ん中で薬を作っていた老婆の手が止まり、杖を出現させる。


 手にしたのは、赤い樹木で作られた”栄光の杖”。先端に拳大の紅い宝玉が埋め込まれていて、シンプルな金の装飾に彩られている。


 戦士職だけのパーティーがこの部屋に入った場合に使用してくる、Aランクの魔法使い専用装備。


「侵入者はくたばるが良い!」


 老婆が杖を掲げた瞬間、硬直が解けた!


「サンダラスレイン!」

「「”魔斬り”!」」


 殺到する黄白の槍群を、マスターと一緒に斬り消す!


 ”辻斬り侍のスキルカード”を手に入れていないと、戦士がこのルートを通るのは厳しい!


 通路が狭い上に、”栄光の杖”により強化された広範囲系の魔法を使ってくるんだからね。


「「――介錯!」」


 ”刀剣術”により――マスターと左右から老婆首を刎ねた。


「……終わり?」


 強敵と言った老婆が目の前で消えていくのを見ながら、マスターが呟く。


「戦士にとっては天敵みたいな存在だからね、アイツ」


 まあ、このマスターは底が知れないからな。


「あの老婆程度じゃ、壁にすらなり得ないか」


 早くこのマスターに、神代文字に対応した武器を持たせてみたいね~。



●●●



「別れ道か」


 ゴーレムの坑道を進んでいると、左右へ進める道が現れる。



○右:ゴーレムがいっぱい

 左:坑道の主



「じゃあ、私とトゥスカが左ね」

「なんで!?」


 ナオが抗議の声を上げる。


「皆で一緒に行動した方が安全じゃない!」


「「「「今更?」」」」


 昨日だって別行動してただろう。


「三人になっちゃうと思ったら、なんか急に心細くなったのよ!」

「ナオ、昨日はあんなに年長者ぶろうとしていたのに……」


 メルシュのさり気ない暴露。


「さっさと行きましょう、メルシュ」


 トゥスカが、メルシュの手を取って左へ。


「ちょっと待ってよー! 行かないでよ~」

「今日中にボス部屋前まで辿り着きたいので、さっさと行きますよ」


 ナオさんを置いて、ノーザンと二人で右に進む。


「だから、置いてかないでって言ってるでしょうが!」

 

 慌てて追い掛けてくるナオ。


「というか、昨日ちゃんと説明していただろう」

「そ、そうだっけ?」


 すぐに広い空間に出たと思ったら、広大な……湖が広がっていた。


「こういうの、地底湖って言うのかしら?」


 黒い岩肌に囲まれた、真っ青な湖。


 その中央には木製の橋があり、水の上にプカプカと浮くように奥へと真っ直ぐ伸びている。


「かなり距離がありますね」

「気合いを入れて行こうか」


 支えのない木の橋を渡り始める。


「け、結構揺れるわね」

「半分浮いているような状態だな」


 足を乗せると木の板が少し沈んで、足首まで水に浸かってしまう。


「うう、足がビショビショで気持ち悪い」

「ナオさん、文句が多いですよ。第四ステージではそんな事なかったのに」

「ご、ゴメン」


 もしかして、気持ちに余裕があるからこそ文句を言うタイプか? どちらにしろ、あまり関わりたくない人種だな。


 暫く進むと橋が揺れ始め、ザーーッという音が聞こえてきた!


「なに? ……なに? なに!?」


 十数メートル先で、十字を描くように石の橋が浮き出てきている。


 そのせいで、木製の橋の揺れが激しくなっていく!


「キャ!!」


 ナオが湖に落ちた!


「た、助けてっ!!」


 まずい、パニックになってる!


 装備を急いで解除し、飛び込む!


「コセ様!?」


 泳ぎは、得意じゃないんだけれどな!


 ナオに近付くも、暴れているため助けられない。


「た、助けて! 誰かッ!」


 このまま時間が掛かると、引き上げられなくなる!


「がっ!!?」


 鼻を殴って、ナオが大人しくなったあと力尽くで木の橋に乗せた。


「大丈夫ですか、コセ様!?」

「問題無い。それよりも、早く移動しないと」


 このルート、人数が多ければ有利とは限らない。


 石の橋が出現し終えるのと同時に、木の橋が端っこから分解され始めるからだ。


「急いで石橋に行くぞ! 先に行け、ノーザン!」


 衣服が濡れて重くなったナオを抱え、水に足が取られそうになるのに注意し、必死に石橋を目指す!


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