837.申し子の戦場
喚びだした四体の小魔神に雑魚の相手を任せて、クエスト開始から四つ目の宝箱を開ける。
○“守護神/魔神器”を手に入れました。
「お、余にぴったりのやつ!」
さっそく装備しちゃう余。
「本来、六十ステージより上にしかない守護神が手に入るのは良いんだけれど、目当てのロザリオが全然見付からない余」
もう三十分は経ってるのに。
「合流を優先するのも一つの手か?」
ロザリオを余分に手に入れている面子も居るかもだし。
「……うん?」
小魔神四体がスカルモンスターの相手をしている隙に、防衛線を黒いリザードマン三体が抜けてきた。
「コイツら、“レプティリア”か」
一対一ならともかく、三体に連携されると厄介な奴じゃないか余。
「――“魔神化”」
魔神・合成獣の、討伐報酬の一つであるスキルを使用。
「“氷炎魔法”――アイスフレイムバーン!!」
魔神・四本腕のスキルを行使し、地面から氷漬けを狙うも――読み通りに跳躍で回避された余!
「――“生物兵器の光線銃”」
“魔神化”状態の時、“合成魔神の武具腕輪”を装備していれば、魔神系統の武具を自由に追加装備できる。
右側の“レプティリア”に連射して、手傷を負わせとく。
「“ホロケウカムイ”――“猪突猛進”!!」
“魔神化”状態なら、自分にカムイを降ろせるんだ余!
鋭く伸ばした爪を物ともせず、“レプティリア”に“突撃猪の石盾”ごと体当たり!
「“暗黒魔の四翼”」
横合いからの攻撃を、魔神・暗黒魔の翼で飛び上がって回避。
「“樹液弾”! “劇毒弾”!」
動きを鈍らせてから毒を浴びせつつ、光線銃を食らわせる!
“合成魔神の技能腕輪”は、“魔神化”状態の時、魔神が持つスキルを全て使用可能にするんだ余!
――空から“スカルイーグル”が四羽!
「“水晶魔法”――クリスタルバレット! “逆さ立ち”、“回転鰐尻尾”――スパイラルスラッシュ!!」
“逆さ立ち”を解除し、魔神・回転鰐の尻尾と“螺線術”で骨鷲を撃破。
「“浮遊”」
落下直後狙いの“レプティリア”の攻撃を避けつつ、光線銃で眼球ごと頭を吹っ飛ばす。
「“牛斧の大斧”――“魔人武術”、サタニズムトマホーク!!」
光線銃を捨てて、取り出した緑石の牛斧を投げ付け、猛毒に犯された“レプティリア”の左腕を切り飛ばす。
――“猪突猛進”で吹っ飛ばした固体に不意を突かれ、盾の上から蹴り落とされてしまった!
「毒持ちが近付くなよ! “浮遊烏賊の十本腕”!」
隻腕となった蜥蜴野郎に、魔神・浮遊烏賊の触手による連打をぶつける!
「――“精霊魔砲”!!」
猛毒の隻腕“レプティリア”を消し炭にしつつ、その後ろから近付こうとしていた小狡い蜥蜴野郎も――左胸から左腕まで、まとめて吹っ飛ばす!
「“四本腕の湾刀”! “魔神の大石刀”! “二連瞬足”!!」
盾を捨てて、二刀流でフェイントを入れつつ接近――
「クロススラッシュ」
三体目にも、ようやくトドメをさせた余!
「魔神・合成獣の討伐報酬は、余のためにあったような物だ余な~」
今いるステージの一つ下までとはいえ、魔神のスキル、討伐報酬の魔神武具、その全てを自在に使えるんだから余。
●●●
「“混沌魔法”――カオスレイ!!」
雑魚ごと、巨大な頭骨である“ジャイアントスカル”を撃破。
「ロザリオ持ちの“ヘルドーベルマン”……見失った」
せっかく、青のロザリオを見付けたのに。
「赤のロザリオ持ちか。運が悪かったな、ワイズマン」
粉塵の中から現れたのは、重厚な鎧と大剣を身に付けた長髪の女。
“英知の引き出し”が、彼女の正体を教えてくれる。
「……ガイアソルジャーの隠れNPC」
各ステージに配置されているタイプじゃない――このクエスト用に用意された個体!?
「我も身体を奪われるのは嫌なのでな。貴様のロザリオを貰うぞ」
思考に制限が掛けられているみたいね。トライアングルシステムから作られた人格持ちが、積極的に私を狙うはずがない。
「“射出”!」
デカい盾の先端に付いた鈍器が、こちら目掛けて飛んできた!
「“古代兵装/シルヴァニア”――“森の土地”」
巨大な盾剣を召喚し、その兵装の能力で受け弾く。
「おいおい、ここは五十八ステージだぞ?」
鈍器部分が、“古生代戦士の盾”に戻る。
「文句なら観測者に言いなさい」
第三回大規模突発クエストで、上のステージに居るプレーヤーをぶつける采配をした観測者にね。
「文句などない。本来武器を装備できない貴様では、我と勝負になどならんからな」
単純なスペックなら、確かにワイズマンとガイアソルジャーでは戦いにならない。私が初期の状態であるならば!
「行くわよ!」
浮遊するシルヴァニアを剣と盾に分離させ、この手に掴む!
「“超噴射”!!」
「な!?」
このガイアソルジャー、スキルを追加されている!?
「“古代剣術”――オールドブレイク!!」
「“混沌盾剣”――カオスバッシュ!!」
弾き返したところに、追撃を掛ける!
「――“災禍刃”」
いつもは指先で発動するところを、今回はシルヴァニアの大剣で行使!
「クソ!」
盾で防がれた物の、身体能力は私の方が上。
向こうはLvが100に設定されているけれど、装備とスキルの充実ぶりに差があり過ぎる。
「早々にくたばりなさい、ガイアソルジャー」
「舐めるな!」
彼女が持つ腕輪、EXランクの“怪物誘導の腕輪”!!
「悪いが、使わせて貰うぞ!」
骨モンスターの大群に、“ケルベロス”が二体。
「私に物量戦なんて無意味よ――“有象支配”」
SSランク、“マス・ホログラフィック”の力で“模造天使”を作り出していく!
「隠れNPCのくせに、SSランクなんて使いおって!」
モンスターの大群と、虚飾の天使達が激突。
「装備セット3――“六重詠唱”、“四重魔法”――“宝石魔法”、ペリドットシャイニングレイ!!」
“エターナルペリドットリング”を装備し、光の“宝石魔法”を放つ!
「ふざけ――」
“模造天使”ごと、ほとんどのモンスターが消え去る。
「――“災禍刃”!」
煙の中から襲い掛かって来たケルベロスを両断!
背後からの二体目の襲撃は、“有象支配”で作ったゴブリンキングに止めさせる。
「貰った!」
最悪のタイミングで、ガイアソルジャーの剣が首目掛けて振るわれた。
「――“金剛不壊”」
僅かな時間、私を無敵の存在にしてくれるスキルを行使。
本来は“ダイヤモンド”を消費する能力だけれど、“エターナルダイヤモンドリング”のおかげで消費無しに使用可能。
「本当にふざけ――」
「――“爆裂黒球”」
至近距離から黒岩をぶつけ、私ごと爆発を食らわせる!
「こ、この程度で!」
「ええ、解ってる。貴女の装備には、“古代の力”があるもの」
だからこそ、私はこのシルヴァニアを権限させたのよ。
「――ガッ!!」
シルヴァニアの盾を飛ばして彼女の体勢を崩し――シルヴァニアの大剣で脳天を割り
仕留める。
「ク……ソ……」
「長女に勝とうなんて、一万年早いのよ」
なんとか、青のロザリオを手に入れた。