835.突発クエスト・骨霊祭りを祝え
「ここってぇ……」
【巨骨村】のどこかに転移させられたみたい、ですねぇ。
『それでは、突発クエスト・骨霊祭りを祝えのルール説明を始める』
さっき聞いた声。
『死者達の魂が、生者の肉体を求めてこの村に集まってきている。故に、お前達NPCは死者達に襲われるのだ!』
さっさとクリア条件を教えて欲しいところでぇす。
『逃れるには、二つのロザリオが必要だ』
「ロザリオ? ……あ」
自分の首から、青い宝石が埋め込まれた十字架がぶら下がっている事に気付く。
『青い宝石のロザリオと赤い宝石のロザリオ、二種類を手に入れた状態になると身体を乗っ取られる心配が無くなる。もし一時間以内に揃えられなければ身体を乗っ取られ、残り一時間の間、乗っ取られていないNPCを襲う』
まずはロザリオ探しですか。
『制限時間は二時間。二時間生き残れればクエストクリア。ロザリオは複数の方法で手に入れる事が出来るが、一番確実なのは参加NPCから奪うことだ』
皆が皆、青のロザリオというわけではないと。
『ああ、それと。自軍のレギオン以外のNPCを殺した場合、NPCを自軍に加える事も可能だ』
この言い方……私達以外の隠れNPC、もしくは使用人NPCも参加させられているの?
『それでは突発クエスト――骨霊祭りを祝えを開始する!』
すぐに、カタカタという物音が近付いてくる?
「……また骨ですかぁ」
様々な動物の骨が、私を囲おうと迫ってきた。
「さっさと片付けまぁす――“可変”!」
両手の大輪銃剣を銃に変え、銃撃!
「強くないですねぇ」
数が多いだけで、“魔力弾丸”で充分に倒せている。
「とはいえ、きりが無いでぇす」
早くロザリオを探さなければならない状況で。
「“二重魔法”、“大海魔法”――マリンバイパー!!」
海水の龍が、骸骨モンスターを呑み込んで蹴散らしてくれたぁ?
「クリス!」
ネレイスのサカナが、泳ぎ降りてくる。
「すぐに合流できて良かったですの。ちょうど、ロザリオも色違いみたいですし」
サカナの首からぶら下がっているのは、赤い宝石のロザリオ。
「ちょうどとは、どういう意味ですかぁ?」
「いざというときは、私のロザリオをクリスに上げるわ」
「へ?」
「何を驚いていますの? 神代文字を刻める貴女の方がレギオンの戦力になるのですから、当然の判断でしょう」
当たり前のように言ってくれますねぇ。
「早いとこ、ロザリオを見付けましょう」
味方と合流したいところだけれど、ロザリオを見付けてからじゃないと意味が無い。
●●●
「“工房展開”――くたばりなさい!」
チトセ様からお借りしたSSランク、“アトリエ・コンポジション”を展開。“浄化液”を大量に作り出して、“リザードスカル”、“ラットスカル”、“ウルフスカル”らを溶かしていく!
「楽勝ですね! とはいえ、このペースじゃ探索が進みません」
ロザリオは、いったいどこを探せば良いのでしょう?
「村の中に宝箱?」
本来あるはずの無い場所に……クエスト中だからですかね?
「あ!」
さっそく、ロザリオを発見!
「でも、同じ赤ですか」
残念――また、無数の骨の気配。
「……あれは、Sランクモンスターの“ノーライフキング”」
黒い豪奢なローブに王冠を頂く上半身骸骨――て、首から青いロザリオをぶら下げてるし!
「ロザリオの入手法は、宝箱か強力なモンスターの討伐ってところですか――“移動砲台”!!」
四つのブロック大砲を顕現し、スカルモンスターを蹴散らしていく。
『“暗黒魔法”――ダークバレット』
ノーライフキングによる魔法攻撃!
「残念でした~」
“魔術師殺しの楕円盾”のおかげで、私に魔法攻撃はまず通用しない。
「装備セット3」
左手で盾を構えたまま、右手で“薬液ガトリング”を保持!
既に、セットしている薬液は“浄化液”に切り替えてあります!
「くたばりゃー!!」
チトセ様の影響か、お下品な台詞が出てしまいました……。
『“魔法障壁”』
スカルモンスターが壁になっている間に、障壁を展開されてしまう。
『“隕石魔法”――コメット』
ノーライフキングが使えるはずのない魔法!?
「装備セット1!」
軽量装備に切り替えて、急いでその場を離れる!
歩法系スキルを駆使し、離れた建物の裏手に避難――遅れて、隕石落下の振動と衝撃が襲ってきた!
「……や、厄介過ぎる」
Sランクのカスタムモンスター。まだどんな隠し球を持っているか。
「“四重詠唱”――“砂漠魔法”、サンドウェーブ!!」
大量の砂が、スカルモンスターをノーライフキングごと呑み込む!
「情けないですよ、ヘラーシャ」
一番厳しい使用人NPC、アルーシャさんが来てくれました!
「アルーシャさ~ん、良かったー! 私、ちょっとヘラりそうでした~!」
「まだ倒せたわけではありませんよ――“戦車豹”」
隠れNPCであるレオパルドのサブ職業で、大砲を背負った二体の豹を呼び出すアルーシャ先輩!
直後に、砂漠の底から飛び出してくるノーライフキング!
「私が動きを止めるので、その隙に“浄化液”を」
「了解です、先輩!」
でも、どうやって止める気なんだろう?
「――“砂漠支配”」
“薙ぎ潰しのモーニングスター”に仕込んだ偽マスターアジャストの力で、さっき魔法で生み出した砂まで操っている!
「さすが先輩」
二体の“戦車豹”は、アルーシャ先輩がスカルモンスターに囲まれないように立ち回っていた。
「“砂縛り”」
“砂漠支配”で操っていた砂が、逃げ回っていたノーライフキングに一瞬で纏わり付く。
「あれだと、砂が邪魔で薬液が……」
「“蟻地獄流砂”!!」
ノーライフキングを砂の上に落とし、流砂の中へと呑み込ませようとしている?
「これだと私の出番……」
『“隕石魔法”――メテオレイン』
小さな隕石が、空から大量に落ちてくるんですけど!!
「“砂泳ぎ”」
自分だけ、華麗にダイブして逃げた!?
「勿体ないけれど――“究極生命体”!!」
バイオ骸骨巨人に、私を覆う天井になって貰う!
幾重の衝撃がようやく止んだところで、“究極生命体”が消えてしまう。
「――なん!?」
目の前に、ノーライフキングが!!
『“邪悪魔――』
「――“停止視眼”!!」
“ザ・ストップ・べーション”による無敵拘束!
「今です、ヘラーシャ!」
「――食らえッ!!」
「“砂縛り”!」
私の“薬液マシンガン”と“薬液ガトリング”による攻撃が“停止視眼”に阻まれる直前に解除し、砂で再拘束してくれるアルーシャ先輩!
大量の“浄化液”を至近距離から浴びせ、“ノーライフキング”の身体を滅ぼした。
「やった!」
拾った青のロザリオを首のロザリオに近付けると、勝手に同じ首紐に繋がれる。
「貴女、なんの遠慮もなくロザリオを……」
「アルーシャ先輩のロザリオは青じゃないですか」
宝箱から手に入れた赤のロザリオを投げ渡す。
「優先すべきは、大旦那様の妻と隠れNPCの皆さんです。まあ、これに関しては礼を言いましょう」
とか言いながら、自分だってさっさとロザリオを首紐に繋いでるし。
「合流を図りつつ、ロザリオを回収しますよ」「了解であります、先輩!」
今日の私は、機嫌が良い!