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827.金剛石雨街

「天気が悪いな……屋根がある?」


 いつもの祭壇の上なのに、これまで無かった金属製のアーチ状の屋根が。


「ユリカは、いったいなにをしているのです?」


 トゥスカの視線の先、階段で何かを探している様子のユリカとナオ……それにミキコも。


「三人とも、もうやめろって」


 レリーフェ達が呆れている。


「思ったほど落ちてないな。さっきはあんなに降ってたのに」

「降ってた?」


 ナオの不可解な発言。


「メグミ、ユリカ達はなにをしているんだ?」

「私達が来たときにはああだったから、よく分からないんだ……このステージにはドラゴンは出るのだろうか」


 すっかりドラゴンマニアみたいになっているメグミ。


 頭上から、ゴロゴロと轟く音が。


「……雷の音、結構凄いな」

「――三人とも、すぐに降ってくるよ! 早く避難して!」


 メルシュの急な叫びに驚いていると、三人が慌てて戻ってきた?


「いったいなにが……」


 ――いきなり上からゴガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!! という音が!


「この音、雨じゃないよな?」

 

 落ちてきた何かが、地面から強く弾け飛んで来た!?


「これって、バカでかい雹か?」


 掴んでみるも、全然冷たくない?


「それは“ダイヤモンド”ですよ」


 ヨシノが教えてくれる。


「【金剛石雨街】ってそういう……」


 金剛石はダイヤを指す言葉。つまり……。


「その名の通り、ダイヤモンドが降る街なのか……」


 ユリカ達が必死に探していた理由が判ったよ……ジュリーが、ボス戦の報酬で★ダイヤモンド×50は選ばなくて良いと言っていた理由も。


「それにしても……」

「な、何よ……」


 ミキコが見られている事に気付いて、睨み返してきた。


「意外と、女の子らしいがめつさもあるんだなと」

「うっさいわね! 別に良いでしょ、私が宝石好きだって!」


挿絵(By みてみん)


 指輪とか、簡単に手に入る世界なのに……。


「はいはい」


 全員が合流したのち、ダイヤモンド模様を窺いながら、俺達は祭壇の麓へと急いだ。



           ★



「そんなにしょっちゅう降るの? ダイヤモンドの雨って」


 食堂にて五十七ステージ攻略の説明を全員で受けていた際に、アヤナが驚きの声を上げる。


「五十七ステージ前半はね。街は巨大な傘で覆われているから自由に出歩けるけれど、外に出ると祭壇周りよりも高頻度、長時間降るのが当たり前」


 ジュリーの説明。


「【金剛石雨街】からのルートは二種類。街の外に出て山道を進むのと、街中から地下を通って進むタイプ」


「ルートによる違いは?」


 メルシュに尋ねる。


「前者は専用の高額アイテム、“ダイヤモンドゲート”が必要な代わりにモンスターが少なめで採取物多め」

「後者は、通行料が必要だが安く済み、代わりにモンスターと宝箱が多めだな」


 メルシュとジュリーの息の合った説明。


「ただ、どちらにも分岐カ所が用意されているから、パーティー数を綺麗に二つに分けたい」


 モンスターが少ない山道か、モンスターの多いトンネルか、か。


 時間がないため、早めに決めるよう促しておく。



           ★



「いらっしゃい」



○以下から購入できます。


★ダイヤモンドゲート   5000000(五百万)

★宝石巨兵の腕輪     300000(三十万)

★ジュアルメモリー    2500000(二百五十万)



「さっき言ってたのが、この“ダイヤモンドゲート”か……高いな」


 一つのパーティーにつき、一つは必須とか。


「地道に街の外で“ダイヤモンド”を拾ってれば、すぐに元は取れるけれどね。この辺のモンスターは大金を落とすのが多いし」



 今回はその暇が無いんだけれどな。


 さっさと購入を済ませるメルシュ。


「“宝石巨兵の腕輪”、さっそく装備するのか」


 それも、左右の腕に直接。


「低ランクだから安いけれど、地味に便利なんだよ、これ」


 さっそく“ダイヤモンド”を実体化させ、腕輪のくぼみに嵌め込んだ?


「嵌め込んだ宝石によって呼び出せるゴーレムに違いが出る。しかも、倒されると触媒の宝石が消滅しちゃうけれど、別の宝石を嵌めればすぐに再召喚可能だし」


「腕輪や指輪で喚びだした物は、倒されると暫く呼び出せなくなるんでしたか」


 トゥスカの言葉。


「じゃあ、“ジュエルメモリー”ってのもそうなのかい?」


 シューラからの質問。


「そう。杖なんだけれど、嵌め込んだ宝石と同種の“宝石魔法”を使えるようになるって代物なんだよ」

「“宝石魔法”って、ユニークスキルじゃなかったか?」


 ユニークは一つしかないはずなのに。


「私のは、制限なく全種類の“宝石魔法”が使えるから。“ジュエルメモリー”とは比べものにならないくらい破格だよ。武具効果かスキルっていう違いはあるけれど」

「そういえば、“ケラウノスの神剣”の“雷帝魔法”、“雷帝剣術”も武具効果扱いになるのか」


 そんな話をしていると、頭上、十数メートル程の高さからズガガガガガガガガガガガという激しい激突音が鳴り響く。


「ダイヤモンドの雨か」


 普通に怖い。


「これだけ簡単に“ダイヤモンド”が手に入ると思うと、希少性としての付加価値が下がるな」


 実際には大した価値なんてなくても、希少性、話題性、芸術性など、様々な付加価値によってありもしない価値が付けられる。


 大昔、胡椒が黄金よりも価値が高いとされていた時期があるのも、希少性がゆえ。


「本当、価値って概念がアホらしい」



●●●



 朝八時頃、【金剛石雨街】の円状の外壁、そこの扉から十メートル程の通路を抜け、街の外へ。


「寒いな」


 ご主人様のぼやき。


 通路の先には、植物生い茂る山々が広がっており、冷たい空気と湿気が辺りを満たしている。


「寒さ的には、日本だと秋の中旬くらいかな」

「そういえば、俺がいた世界も十月に入ったんだったか」


 メルシュとご主人様、二人だけで通じる話をまたしてる!


 ユリカ達にソシャゲ? とかアニメの説明をして貰ったけれど、結局よく分からなかったし。


「じゃあ、“ダイヤモンドゲート”を装備するよ」


 メルシュが装備を変えると、メルシュの頭上数メートルの位置に、渦巻く黒い空間が出現。


「直径、二十メートル程ですね」

「この下に居れば“ダイヤモンド”の雨の直撃を逃れられるから、ゲートの下に出ないように気を付けてね」


 だからこそ、もっとも動く必要がないメルシュがゲート担当となった。


「ステージの凶悪性、厄介さが目立ってきたな」


 ご主人様に続き、五人で山道を行く。


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