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85.シュバルツ・フェー

 昨日の続き……左側の”魔女の工房”を、予定通りのメンバーで探索していく。


 通路は狭く、なんとかすれ違える程度の幅しか無い。


 そんな通路を下へ、下へと進んでいく。


「そろそろだよ」


 先頭を行くシレイアさんの合図。


 ジメジメが強くなり、熱気が肌を濡らしていく。


『ガウガウガウガウ!!』


 気が立っていそうな、獣の吠え声。


「行くよ、マスター!」

「うん」


 下りが終わり、教室の横幅くらいある空間に出て、犬のようなモンスターに向かって駆けるシレイアさん。


 打ち合わせ通り、私はシレイアさんとは別の方向に駆け、赤黒い犬の首を落とす。


 メルシュさん達から聞いた話しだと、ここは魔法使いに不利なルートなのにも関わらず、魔法使い専用の高ランク装備が手に入るらしい。


 ……リアルハーレムのコセさんと一緒に行動させて貰えないの……不満。


 同じパーティーに隠れNPCは一人だけしか入れられない。


 隠れNPCが奴隷解除出来ない以上、同じく隠れNPCを所持するコセさんとパーティーを組めることは、今後も……無い。


「マスター、どっか怪我した?」

「ううん、大丈夫」


 犬を四体斬った後……ボーッとしちゃってた。


「ユイ! シレイア!」


 ジュリーさんの声が届いたときには……魔法の炎が傍まで迫っていた。


「”魔斬り”」


 一閃。


 炎が幻影であったがごとく、消失した。


「さすが。初めてでタイミングばっちしか」


 大袈裟に驚くシレイアさん。


「いつ斬ればいいか……なんとなく分かったよ?」


 スキルの効果なんだろうけれど。


「それが分かっても、慣れるまでには時間が掛かりそうな物だけれどね。フン!」


 そう言いながら、シレイアさんも大刀で竜巻を切り裂いている。


『ヒヒヒヒヒ、サンダラススプランター』


 黄白の雷を、黒ローブを纏った老婆が放ってきた!


「”避雷針”!」


 雷が曲がり、ジュリーさんの剣に吸い込まれる?


「”雷光斬”!」


 ジュリーさんが放った緑雷の斬撃により、老婆の一人が斬られた。


「インフェルノバレット!」


 ユリカさんにより放たれた紫の散弾。それに対し二体の老婆が、半球状の白半透明なバリアを生み出して防ぐ。


 あれが”魔法障壁”。魔法を防ぐ事に優れた、魔法使い専用スキル。


「お願い、ユイ!」


 だから、”技能取得”を持っている私が――率先して倒す必要がある。


 愛刀の”ムラマサ”を収め、走りながら、昨日手に入れた”辻斬りの打刀”に手を置く。


 太刀であるムラマサよりも、打刀の方が短いから抜きやすい。


「”抜刀術”――紫電一閃」


 一太刀で、二人のしわくちゃ老婆を切り裂いた。



●●●



「”氷炎魔法”、アイスフレイムバレット!」


 石のゴーレムを青い炎が覆い凍らせ、ゴーレムごと砕けていく。


 右側の”ゴーレムの坑道”に進んだら、いきなり襲ってきたし!


 でも、密集している分倒しやすい!


「氷属性で攻撃すると、鉱物の塊であるゴーレムは特に動きが鈍るからね」


 メルシュの解説。


「”土星斧術”――サタンブレイク!」


 ノーザンが黄金の斧を叩き付けると同時に衝撃波を生み出し、氷付けになっていたゴーレムを一気に砕き消した。


「運がよければ”オリハルコン”のゴーレムとかがが出るんだけれど……出ないね」


 石のゴーレムを一掃後、奥へと進んでいると広い空間に出た。


「お、ブラックオリハルコンゴーレムだ。やっぱり、マスターは持ってるね」

「持ってるってなんだよ……」


 トゲトゲしいパーツのある、黒光りしたゴーレム。


「マスター、アレを試してみてよ」

「そうだな」

「ご主人様、一人で宜しいのですか?」

「ああ、危なくなったら頼む」


 コセが、一人で黒ゴーレムに近付いていく!


「ねー、アレ、強そうだけれど大丈夫?」

「コセ様なら、問題ありません」


 メルシュとトゥスカに聞いたのに、自信満々に返事をしたのはノーザン!


 本当、昨日一日でなにがあったんだか。


「武器交換、”シュバルツ・フェー”」


 コセの鎧と似た意匠の大剣が姿を変え、銀細工が施された黒い大剣になる。



●●●



 メルシュからの贈り物、”シュバルツ・フェー”を手にし、黒金属のゴーレムに近付いていく。


「”黒精霊”」


 シレイアに教えて貰った、”シュバルツ・フェー”の能力を使用。


「”煉獄魔法”、インフェルノ」


 インフェルノを発動すると、”シュバルツ・フェー”に紫の炎が吸い込まれ――刀身に纏われる。


 自分かパーティーメンバーの魔法を剣に宿し、この剣で発動可能な基本武術スキルを一度だけ強化する。


 それが、”シュバルツ・フェー”に宿った”黒精霊”の能力。


 ジュリーの剣は雷に特化している分、”シュバルツ・フェー”は敵の魔法や魔法以外の攻撃は吸収できないという違いがある。


「ハイパワーブレイク」


 ブラックオリハルコンゴーレムが一歩踏み出し拳を打ち込んできたのに対し、下から煉獄の剣で切り上げ――腕を吹き飛ばした。


「……強い」


 普通に振っただけでも中々の威力。


 ただし、纏っていたインフェルノが消えてしまった。


「ハイパワースラッシュ!」


 弾けた腕の方の脇を通り、すれ違いざまに胴をな――ごうとして弾かれた!!


 思っていた以上に、”黒精霊”で威力が上乗せされていたらしい。


「”黒精霊”――”古代竜魔法”、ドラゴノヴァ」


 一瞬の発動後、”黒精霊”発動状態である”シュバルツ・フェー”に竜の力が吸い込まれる。


 ドラゴノヴァは、インフェルノよりも強力な魔法。


「ハイパワーブレイク!」


 さあ、どんな結果になる!



 ――想像を遥かに越える衝撃波が発生し、俺の身体が吹き飛んだ。



「いっ……つー」


 ”滅剣ハルマゲドン”の、”終末の一撃”に匹敵する威力が出ていたぞ!


「大丈夫ですか、ご主人様?」

「ああ、大丈夫」


 ブラックオリハルコンゴーレムは、跡形も無く吹き飛んだようだ。


「MP全消費のドラゴノヴァと組み合わせたからか、とんでもない威力だったね」


「今の一撃はともかく、”煉獄魔法”との組み合わせは使い勝手が良さそうだ。ありがとう、メルシュ」

「そうでしょう、そうでしょう♪」


 大袈裟に喜んでいる姿が、照れ隠しに見える。


「…………怖い」

「さすがコセ様」


 先程の威力に驚いて固まっているナオと、にこやかなノーザンという対照的な様子が、とても印象に残った。



○”ブラックオリハルコン”×3を手に入れました。



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