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809.第四回大規模突発クエストの参加概容

 早めの夕食を終えたのち、俺達は全員が食堂で、その時をゆったりと待っていた。



『私の名はオッペンハイマー。これより、第四回大規模突発クエストの概容を説明させて貰う』



 第一回、第二回の説明時に聞いたのと同じ声。


『第四回大規模突発クエストの開催は、一週間後の十月四日、16:11分』


 また11か。


『参加できるのは、五の倍数のステージの街や村に居る――男のみだ』


 男のみ……。


『当日、五の倍数のステージに居る男は強制参加。参加したくない者は先へと進んでおくことをおすすめするよ』


 五十五ステージの街を出たばかりなんだけど……俺が参加するには、急いで六十ステージまで進む必要があるのか。


『クエスト中はソロ扱いだが、手を組むかどうかは自由。Lvは全員が100に固定』


 Lv調整……到達ステージに関係なく、今回も全員を同じフィールドで戦わせる気か?


『格差を無くすため、参加者全員に疑似SSランクアイテムをプレゼントする』


「疑似SSランク?」


 参加者全員にプレゼントだと!?


 どんな物かは判らないものの、こんなの、SSランクを持っていない人間は全員が参加しようとするに決まってる。


『突発クエストの報酬は様々。一例はのちほど。詳しいクエスト内容は、参加後に知らせる』


 魅力的な報酬で釣って、クエスト内容は伏せる気満々か。


『だが、これでは参加できない女性陣は損だ。そこで未参加者には、150000(十五万)Gでクエストを見学する権利を与えようと思う。見学希望者は、五の倍数のステージ、その安全エリアか街に居るように』


 見学するだけじゃなんのメリットも無いだろ。見学費まで払ってんのに。


『ちなみに、見学者にも様々な報酬を得られる仕組みを用意してある。クエスト参加者の奴隷は、見学費用無しで招待させて貰おう。この場合、特殊なアイテムによる奴隷化は認められず、NPCには報酬を得る権利はない』


 うちのレギオンだと、実質トゥスカしか無料で報酬を得る機会が無いな。


『それでは、報酬一覧を見て参加を決めてくれたまえ』


 勝手に展開されていたチョイスプレートが消える。


「報酬ね」



○第四回大規模突発クエストで手に入る報酬の一例。


★EXランクアイテム ★SSランクアイテム

★Sランクアイテム ★守護神 ★古代兵装

★おまもり ★EXランク申請権 ★SSランク申請権 

★Sランク申請権 ★ニューボディー ★サブ職業

★隠れNPC ★ユニークスキル 



「具体的なアイテム名は無いか」


 それでも、参加プレーヤーを釣るには充分だろう。


「“ニューボディー”ってなんだ?」


 これだけ、よく分からない。


「……私にもデータが無いね」


 今のメルシュの反応は……。


「オリジナルでは、容姿を変えられるアイテムですね」


 応えてくれたのは、意外にもノゾミさん。


「容姿を?」

「はい。ダンジョン・ザ・チョイスは本来、自分が操作するキャラは自分でキャラクリします。なので、途中でキャラの見た目や種族を変えたくなった時用に、低額の課金アイテムとして用意されていたんです」


「これって、私達全員が使えんのかな?」


 シズカのセリフ。


「で、コセは参加する気なのか?」


 ルイーサからの問い。


「出るさ。不確定要素が多すぎるけれど、参加して生き残った人間の恩恵が大きすぎるからな」


 参加するだけで疑似SSランクが手に入るらしいし、このクエストの目的は、俺達に対抗できるプレーヤーを増やすためな気がしてならない。


 それなら、提示された報酬のうちどれだけの物が手に入るか分からない物の、一つでも多く手に入れて戦力アップを図るのが最善だろう。


 明らかに、俺やアテルを狙っていると解ってはいても。


「なら、残り六日か五日で、六十ステージまで到達する必要がありますね」


 トゥスカの言葉。


「というわけで、少し攻略を急ぐ必要が出て来たな」


 残りのステージが、どの程度攻略に時間が掛かる物なのか分からないけれど。


「それにしても、今回の大規模突発クエストはずいぶんと早い開催だな」


 今までは、もっと間を開けていたのに。



◇◇◇



『というわけで、準備の方は任せたよ、サミュエル』


『お任せを、オッペンハイマー様』


 今回の大規模突発クエストは、前回に比べると色々スケールダウンではあるが、悪くはない。


『ところで、オッペンハイマー様のコードネームは、やはりあの、原爆の父から取られたので?』


 我々、観測者の仕事上の名は偽名。ユダヤ系とされる者達の名をコードネームに用いている。


『ああ、その通りだとも。それがどうかしたのかい?』

『いえ、我等が長に相応しい名かと』


 くだらない応問だ。


『それでは、私はこれで』


 通信が切れる。


『……原爆の父、オッペンハイマー……か――クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!』


 それが本当に、原爆がこの世で最初に作られた瞬間であったなら、確かにオッペンハイマーは原爆の父と呼ばれるに相応しい存在だっただろう。


『本当に、地球人類は滑稽だね』



●●●



 五十五ステージの攻略二日目。


「――“猪突猛進”」


 トゥスカの横合いからの突進により、“ジャイアントボア”が吹き飛んでいく。


「トゥスカ、上から来てる!」


 メルシュの叫び。


 頭上から、大量の“セメタリーコンドル”が降下し始める。


「――“煌々たる雲海の黄昏”!!」


 俺がモンスターエレベーターの報酬で手に入れたスキルを行使し、頭上に、オレンジ色に輝く灰色の雲を展開するトゥスカ。


 すると、雲にコンドル達が突っ込む度に強く輝き、敵を消失させていく。


「ハイパワーアロー!!」


 “ジャイアントボア”の眉間を貫いて仕留めるシェーラ。


「ハイパワースラッシュ」

「ハイパワーランス」


 俺とナターシャの二人で、“トロルキング”も倒し終えた。


「森から草原に出た途端、引っ切りなしにモンスターが出てきてまいったね」


 安全エリアへと到達した瞬間、岩に腰掛けながら独りごちるシェーラ。


「次が最後の安全エリアになるだろうね」


 メルシュ、今日はやけに言葉数が少ないような。


「マスター、ちょっと」

「うん?」

「なんだい、メルシュ? アタシらには言えないことなのかい?」

「いや、それは……」

「メルシュ、あまり隠し事は感心しませんよ?」


 シェーラだけでなく、トゥスカにまで釘を刺されるメルシュ。


「“ニューボディー”の件であれば、よろしいのでは?」

「……まあ、この面子にならいっか」


 ナターシャの発言に、とうとう観念したらしい。


「言っておくけど、昨夜から私、かーなーり、悩んでたんだからね!」

「“ニューボディー”についてか?」


 なにを悩む必要が……。



「“ニューボディー”一つにつき――隠れNPCになった元人間を、ダンジョン・ザ・チョイス終了と同時に消える運命から救えるの」



「「「――!?」」」


 シズカ、レイ、リンカの三人の死の運命を、変えられるっていうのか!?


「……なるほど。もしその事を知った状態で一つか二つだけ手に入れたりすれば、諍いに発展しかねないと」


 昨夜メルシュが、皆の前でハッキリと“分からない”と口にしたのは、NPC達に対する口止めだったのか。


「メルシュは、“ニューボディー”の情報を前から持ってたんだな」


「ううん。昨夜のクエストの説明後に、勝手に情報が流れ込んで来たんだよ。そのタイミングで実装されたのと、元は課金アイテムだったからかもね」

「もしくは、観測者側がわざと情報を流したか」


 俺を釣るための餌なのかなんなのか知らないが、厄介な事をしてくれる。


「どうしますか、ご主人様?」

「他の奴等に伝えんのかい?」


「……少なくとも、今回の大規模突発クエストが終わるまでは伏せる。メルシュ、ナターシャ、NPC達には徹底させてくれ」


 俺が三つ手に入れられれば本当の事を伝えれば良いし、手に入れられたのが二つ以下だったら…………。


「……レギオンリーダーである俺が、選ばないとな」


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