798.贅沢なクレープ
○突発クエスト・上級国民戦争が終了しました。
○脱出者が五百人を超えたため、生き残った五百七十三名を奴隷とします。
○本日の正午、大通りにて奴隷の販売を開始!
○丸一日経っても売れなかった者達は、各ステージの奴隷商館に転移予定。
○助ける事に成功したNPCの数だけ、以下のEXランクアイテムと交換できるポイントを進呈。
■2ポイント
☆SS適合の指輪 ☆ダブルユニークの指輪
☆紅蓮神の指輪 ☆水蒸気神の指輪
☆レースチェンジの指輪
■3ポイント
☆ツインSSランクの腕輪 ☆世界樹の腕輪
☆奴隷神の腕輪 ☆一攫千金の腕輪
☆転移の腕輪 ☆指輪+4の首輪
☆その他+3の首輪 ☆万全能の首輪
■4ポイント
☆ウェポン・クラスター
☆ザ・メダライズ・ヘイロウ
☆ポゼッション・マニピュレータ
☆アラストール・ガントレット
☆メダルシリンダーガン
「ちょうど丸一日で終わったか」
助けたNPCは、全員で37人だったよな。
「コセ、あれ食べたい!」
モモカが指し示したのは、NPC経営のクレープ屋さん……朝ごはん前なのに。
「どれが良い?」
「桃のなんとかってやつ!」
“桃のコンポート生クリームクレープ”か。美味しそうだな。
「ガウガウ!」
「バニラはなんて?」
「赤いお肉の奴だって!」
「赤いお肉……」
“ローストビーフとアボカドのクレープ”……モモカのクレープの三倍近い値段!
「トゥスカ達はどうする? 全員、一つずつ頼んで良いぞ」
どうせ、使い切れないくらい$が残ってるし。
「では、私は“唐揚げマスタードマヨクレープ”を」
トゥスカも肉系か。
「“バナナホワイトチョコソースクレープ”をお願いします、ユウダイ様」
「“チョコミントアイスクレープ”を願いします、大旦那様」
「大旦那様、“キャラメルプリンクレープ”が食べたいです!」
「“サーモンの焙りマヨクレープ”が良いです」
「“ソースメンチカツクレープ”。キャベツマシマシで」
ナターシャ、アルーシャ、ヘラーシャ、レミーシャ、エリーシャの順で注文。
「「「「「ありがとうございます、大旦那様!」」」」」
「お、おう」
美女、美少女メイド五人からの一斉ありがとう……破壊力ヤバいな。今はメイド服じゃないけど。
「ご主人様は注文しないのですか?」
トゥスカに尋ねられた。
「モモカ達が食べきれなかったら、代わりに食べようかと」
「では、私の分を一口どうぞ」
香ばしい唐揚げと、温められたマヨマスタードの匂いに食欲を刺激される!
「ありがとう」
遠慮なく、三つある唐揚げの一つを一口で貰う!
「あっツ!」
でも美味い!
「ユウダイ様、こちらもどうぞ」
「私のもいかがですか、大旦那様」
「一口どうぞ! 一口だけですよ!」
「お、おう」
ナターシャ、アルーシャ、ヘラーシャの分も貰う。
「「……どうぞ」」
「無理にくれなくても良いんだぞ?」
レミーシャとエリーシャとはあまり接してないから、機微を察するのが難しい。
「「どうぞ」」
「あ、ありがとう……」
甘いのと脂っこいのを交互に……美味しいけれど。
「……モモカも一口!」
「アウ!」
二人も一口くれるらしい。
「分けてくれてありがとう、モモカ、バニラ」
「へへへ♪」
「アウ~♪」
……何気に、丸一個分以上食べた気がする。
「そろそろ帰ろうか」
二人が食べ終わったのを見計らって切り出す。
「プレーヤーも、だいぶ戻ってきたようですしね」
トゥスカの言うとおり、食べている間に街に人が増え始めていた。
奴隷の販売が行われる大通りって、目の前の道だよな?
今日の正午から明日の正午に掛けて、モモカ達を屋敷から出さないようにしないと。
★
正午過ぎ、レギオンメンバーの三分の一程の人数を引き連れ、例の大通りまでやってきた。
大通りの真ん中に、一直線になる形で巨大な檻が幾つも並ぶ。
「檻の中身は、チームごとになってるみたいだね」
メルシュの指摘。
「中の人数にバラつきがあるのはそのためか」
「なら、お目当ての方々を見付けるのは難しくなさそうですね」
トゥスカがそう口にした時だった。
「あ、キャロル!!」
二つ離れた檻の方から、大きな声が響く。
「オーっす! クミン、ロフォン。元気だった?」
彼女達が、キャロルの仲間か。
「元気だった? じゃないわよ! なんでアンタが外にいんのよ!」
「生きてんのかどうかも判んなくて、私達がどれだけ心配したと思ってるんだ!」
「あれ、彼女達って……」
「知り合いか、ヒビキ?」
「コウモリの群れが現れたとき、ジュリーさんが居た陣地に攻め込んできた方々です」
「たった二人で?」
「はい。屋敷の結界を、あっという間に破壊してました」
結界の強度がどの程度か知らないけれど、ヒビキがそう言うのならなかなかの実力者なのだろう。
「ちょっと、聴いてんの! キャロル!」
「そんなこと言って良いのかな、クミン~?」
魔女っぽい格好の女性、クミンを挑発するキャロル。
「僕がせっかく、二人を購入して助け出そうとしてんのにさ~」
嫌なムーブしてんな、コイツ。
「……すみませんでした」
「落ち着け、クミン。コイツの金の無さを忘れたのか? 私達がどれだけ借金していたと思ってる」
黒髪のエルフ美女、ロフォンと呼ばれていた人物の冷静な指摘。
「チッチッチ。甘いね、ロフォン。グラブジャムンのように甘いよ」
「グラブジャムンてなんです?」
「世界一甘い、インドのお菓子だね」
トゥスカとメルシュの会話。
「どんなお菓子なんです?」
「簡単に言うと、ドーナツをシロップ漬けにした物です」
ナターシャもメルシュも、NPCは俺の世界の知識を当たり前のように知ってるな。
「またわけ分からんこと言って……」
「今の僕は、クエストのおかげで大金持ち! さあ、二人の身請け額を言ってみな!」
天狗になるって言葉がこれほど似合う状況、初めてかもしれない。
「164500000$よ」
「76200000$だ」
「…………コセさん、お金貸して」
足りなかったんだな。
「良いですよ。元々そのつもりでしたし」
神代文字が使えるキャロルの仲間なうえ、聞いた話だと彼女達も神代文字を使えるみたいだし。
「他に助けたい人がいたら、言ってください」
$なら、使えきれないくらいあるからなぁ。
「あんがとさーん。で、メリーは?」
「奴隷は主とセットになっているらしいわ」
値段からして、メリーという人はクミンの奴隷なのだろう。
「なら、取り敢えず二人だけで問題ないか。じゃあコセさん、お金ちょーだい♪」
あざとい笑顔……この人、絶対にお金の管理を任せちゃいけない人間だ。