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797.菓子好きの痴女キャロル

「……ここは」


 クエストから抜けた事で始まった転移後、俺が居たのは……契約していた屋敷のリビング。


 外に居たはずのジュリーやルイーサも戻ってきているうえ、服も元の白い法衣に。


「トゥスカ達は?」


 遅れて光が立ち昇り、トゥスカたち奴隷組も戻ってきた!


「ご主人様!」


 トゥスカが抱きついてくる!


「どうした、トゥスカ?」


挿絵(By みてみん)


「フフ。格好良かったですよ、ご主人様」


 満面の笑みで尻尾を振っているトゥスカ、最高に可愛いんだが。


「……もしかして、クエストのとき見られてたのか?」

「はい。私達はここに似た屋敷のような場所に閉じ込められていたのですが、飲み食いしながらご主人様達の活躍を映像越しに見させて頂いてました♪」


 鑑賞会か何かかよ。


「だ・か・ら――マスターがジャスティス野郎に“超同調”を使ったのも知ってるからね」


 トゥスカとは対照的に、笑顔でブチ切れているメルシュ。


「……すみません」


「あれほど言っているのに、このマスターは……」


 直感的に、必要な事だと思ったんだけれどな。


 ――突然、インターホンが鳴る!?


「誰?」

「私達以外は、まだクエスト中でしょ?」


 サンヤとカナの反応。


『すいませーん、イケメンポニーテールのユイさん、居ませんかー』


 映像に映し出されたのは、黒髪ツインテールの女の子?


挿絵(By みてみん)


「……あ、キャロルさんだ」


 眠たげなユイの反応。


「知り合い?」


 ユイに尋ねる。


「クエスト中に仲間になった」

「ああ、メダルで鞍替えさせてた女だね。入れてやっても良いんじゃないかい? せっかくのSSランク持ちなうえ、神代文字も刻めるようだし」


 クエストを見学してたアマゾネスのシレイアは、彼女の事を知っているらしい。


「ナターシャ、迎えてあげてくれ」

「畏まりました、ユウダイ様」


 客を迎える間に、全員の無事を確認する。


「コセ!」

「アウ!」


 特に懐いているドライアドのヨシノと交流を終えたモモカとバニラが、俺にかまいに来てくれる!


「二人とも、クエストは怖くなかったか?」

「大丈夫! タマとスゥーシャとおっぱいの人がいっぱい遊んでくれた!」

「アウアウアウ!」


 おっぱいの人って……ノゾミさんの事だよな?


「ノゾミさんな。ちゃんと名前で呼んであげような」


 俺も、あまり人の名前を覚えるのは得意じゃないけれど。


「コセっちは、“おっぱいの人”でうちのノゾミって、なんで解ったんだろね~」


 後ろから抱きついてきたサンヤにからかわれる。


 ふと気になって視線を送ると、ノゾミさんが赤面しながら顔を逸らした……すいません、ノゾミさん。


 その横では、使用人NPC達によって食事の準備が進められていく。


「お客様をお連れしました」


 ナターシャの後ろから、例の女性、キャロルが顔を出す。


「初めまして! 僕、キャロル! イケメンポニーテールのユイさんに会いに来ました!」


 さっきから、イケメンポニーテールってなんの事だろう?


 何故か、奴隷組メンバーが必死に笑いを堪えているように見えるんだけど?


「初めまして、このレギオンのリーダーをやってるコセだ」


 握手を求める。


「どうも、どうも。それで、ユイさんはどこですか?」

「なにを言ってるんだ? ユイならそこに居るだろ」


 本人が居る方向を指差す。


「もー、揶揄(からか)わないでよー! 確かに目鼻立ちは似てるけれど、男と女の区別が付かないほど僕だってバカじゃないよ~」

「ん?」


 本当に何を言ってるんだ、この子は?


「ユイ、女だよ?」

「ガウ?」


 モモカとバニラの言葉を聞いた瞬間、なんか空気が止まった。


「ユイさんが……女の子?」


 状況が呑み込めない様子のキャロルの肩に、優しく手を乗せるシレイア。


「キャロル、うちのマスターは男になるスキルを使えるんだよ。だから、本来の性別は女だよ」


「……うそ」


 崩れ落ちるキャロル。


「ユイ、言ってなかったのか? そもそもなんで男の姿で……」

「……なんとなく?」


 なんとなくって……。


「ああ……取り敢えず、飯でも食ってけ。なんなら泊まっていっても良いぞ」


 他に仲間が居るのかどうかも知らんけど。


「……食べる。借金だらけだったし、手作り料理なんて久し振りだし」


 借金だらけ……。


「……あれ」


 なんか、キャロルが俺をジーッと見てる?


「よく見たら、この人もイケメンポニーテールじゃん!」


 ダメだコイツ。ユイと同類の匂いがする。



            ★



「あの、昨日は大変お世話になりました」

「おかげで、仲間のほとんどが生き残れました」


 早朝、エレジー達が助けたという二つのチームの代表が、わざわざうちに礼を言いに来たそうな。


「こちら、せめてもの礼です」

「どうぞ、お納めください」


 手渡されたのは白いキューブ。


 チョイスプレートにしまって確認すると、どちらも“SSランク解禁の首輪”だった。


「ど、どうも、ありがとうございます」


 自分より一回りくらい年を取っていそうな相手にこうも畏まられると、ちょっと困る。


「あ……」


 アチコチで青白い光が!


 少しずつ、クエストを脱出する人間達が増えているらしい。


「コセ、バニラと一緒にお外行きたい!」

「アウ!」


 モモカとバニラ、外に出る気満々だな。


 この数日間、屋敷に押し込めてたしな。


「解ったよ。トゥスカ達も呼んで散歩しようか」


 さすがに、三人だけで出掛けるわけにはいかない。


 トゥスカと使用人NPCを引き連れ、【上級平和街】へと繰り出した。



●●●



(ドル)、必要以上に集まっちゃったね」


 マスター達が出掛けたあと、ジュリー達と今後について意見を出す。


「100万$を目指すはずが、クエストのおかげで57億$以上集まっちゃった」


「あのクエストのいやらしいところが、$はこの街でしか使えない通貨で、Gに両替する事もできない事だ」


 呆れているジュリー。


「使い切れるか解らないけれど、とにかく買える物は買い込むか。このステージじゃ、買える物なんてたかがしれてるけど」


 有用なアイテムなんて、まったくと言えるほど売ってないからな。


「お店の種類とか、色々変えられたよな? 嗜好品を買い込むってのはどうだろう?」


 ルイーサからの提案。


「私はお酒! ワインが良いわ!」

「お前、まだ未成年だろ」


 メグミから、サトミへの突っ込み。


「あれよ、料理に使うためよ……本当に」

「とか言いつつ、コッソリ飲むつもりだろ」

「ち、チーズも良いわよね~。生ハムとかも~」

「ワインに合うからだろ?」

「……」


 笑顔のまま固まるサトミ。


「まあ、使い切れないだけあるから、マスターの許可が下りたら良いんじゃない」


 使い道は食料品、日用品くらいしか無いかなー。


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