表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
852/956

795.お門違いの才能

「うわー……」


 結界を覆うように、人食いコウモリが張り付いている。


 数はどんどん増える一方……この状態で結界が破壊されたらと思うと、ゾッとする。


「コトリさん……」


 ノゾミが顔を出す。


「どうしたの?」

「状況が状況なので、話を聞きに――外に人が!?」


 ノゾミの視線の先、女が何かを抱えながら飛行し、こっちに突っ込んでく――あの女が抱えてるの、大量の“ダイナマイト”!?


 その形相から、声にならない声を発しているのが理解できてしまった。


 ――屋敷が激しく揺れ、遅れて急に爆音……十中八九、結界が破られたよね、これ!


 あの女、理由は判んないけれど、私達を道連れにする気か!!


「ノゾミ、モモカ達の元へ行って守って!」

「は、はい」


 一つ目コウモリが、敷地内に雪崩込んでくる!


「――みんな、結界回復までの五分、なんとしても持たせて!!」


 急いで“マスターアジャスト”をセット!



「“悪夢支配”」



 外にクオリアが!


挿絵(By みてみん)


「……凄い」 


 悪夢の霧が、一つ目コウモリを蹂躙していく!


「クマムさん、ナオさん、ノーザンさん、“地球儀”を守ってて!」


 タイミングを慎重に見極めながら、窓を開けて外へ。


「クオリア! 五分持たせられる?」

「コトリ様、さすがにこのまま五分は厳しいです」

「じゃあ、五分間維持できるように手を抜いて! 私がカバーするから!」

「私も手伝うわよ」


 ナオさんまで外に!?


「じゃあ、私の能力を突破した奴の対処を! “光輝支配”!!」


 “生き様と死に様の向こう側へ”に与えた能力を行使して、クオリアの悪夢を掻い潜ってきた奴等を焼き殺す!


挿絵(By みてみん)


「“氷炎支配”!!」


 凍える炎を操って、私達の穴を埋めてくれるナオさん。


「皆さん、あと三分半を切りました!」

「疲れたら僕達が代わります! いつでも言ってください!」


 クマムさんとノーザンの声。


「まったく、優しい人達ばっかだな、このレギオンは!」


 こんな状況なのに、幸せって感情が込み上げてきちゃうよ!



●●●



「ハアハア、ハアハア……なんとかなった」

「普通に……疲れた」


 結界が再生するまでの五分、キャロルさんと一緒になんとか凌ぎきった。


 精錬剣も消え、また使えるようになるまでには暫く休息が必要そう。


「お前ら……よくも」


 無理矢理入れさせて貰った宿から、一人の男が出て来た。


「お、なかなか精悍な顔立ち。ポニーテールじゃないのが惜しい!」


 何を言ってるんだろう、キャロルさん……座ったまま動かないし。


「よくも俺達を危険に晒しやがったな!」


「一匹も残さず始末した。文句を言われる筋合いは無い」


「今回はそういうことにしておいてやる――」


 急接近からの居合い切りを、バク転で回避。


「装備セット1」


 “波紋龍閃の太刀”を握る。


「やるな。同じ太刀使いとして、正々堂々勝負しようや」

「……疲れてるんだけれど」

「問答無用!!」


 なかなかの連撃だけれど……。


 隙を突いてわざと大振りを繰り出し、男を下がらせた。


「やるな。俺程じゃないが、アンタもなかなかの才能があるらしい」

「才能? ……この程度で?」

「は? 俺は中学で剣道四段。六段の相手にだって勝った事がある。県大会でも個人戦の常連優勝者だったんだぜ?」


 だから何って感じ。


「現代剣道は、しょせんスポーツ。本物の殺し合いには大して役に立たない」


 妙な癖があると思ったら、剣道の延長線で真剣を振るっていたからか。


「剣道と真剣はお門違い。その程度の違いも判らないの?」


「はあ? 俺はそれだけ才能に恵まれてるって言いたいんだよ。本当に才能があるやつはな――なにやったって凄ーんだよ! お前ら凡人と違ってな!!」


 斬り掛かってきた瞬間、向こうの太刀に赤い文字が六!?


「――“斬鉄”!!」


 私の“波紋龍閃の太刀”が、断ち折られた!?


「これが俺の実力――ブゲッ!?」


 顎に膝蹴りを見舞う。


 今ので、間違いなく砕けたな。


「得物を壊して油断したね……だから、殺し合いだって言ってるのに」


 これが、試合想定のスポーツと実戦想定の古武術の違い……て奴だよ。


「よ、よぐも――しゅ、“瞬足駆け”ッ!!」


「次の行動に移るまでが遅いかな」


 コセさんじゃ剣道ではこの人に勝てないだろうけれど、殺し合いだったらコセさんが絶対に勝つ。


 脇に差した“切毒の紫花により縁切られ”に、抜かぬまま九文字刻む。


「俺を侮辱するやづは――死ね゛ぇぇッ!!」


 紙一重で後ろからの面打ちを避け、神代文字の力を収束した掌底を腹に叩き込む!!


挿絵(By みてみん)


「き、汚ぇ……ぞ。格闘技……なんで……」

「先に文字とスキルを使った人が、どの口で」


 骨ごと内蔵を潰したからか、お門違い男はくたばって光へと還った。


「……なんかイラつくな」


 自分の実力を才能とか言われると、私の努力とか磨いてきたセンスが、全部誰かに与えられた紛い物呼ばわりされているみたいで――


「腹いせと安全確保のためにも……この宿に居る奴等、全員斬るか」


 類は友を呼ぶって言うしね。



●●●



「死ねぇ、無神論者のクズがぁ!!」


 白銀の風を纏う突き。


「“拒絶領域”」


 円柱状の衝撃で、弾き飛ばす。


「――“飛王剣”!!」


 十二文字分の力を乗せた斬撃を放つ。


「クズがぁッ!!」


 模造神代文字と“正義支配”の合わせ技で、なんとか防いだか。


「マサヨシって名前らしいけど、本当に日本人か?」


 日本人なら、日本人に対して無神論者なんて、罵声の類いで言ったりしないと思うんだけれど。


「私はフランス生まれの帰化人だよ!」


 互いに武器に纏わせた暴威が炸裂し、距離が開く。


「どうりで、キリスト教のパクりなんてできるわけだ」


 パリオリンピックは史上最悪のオリンピックで、世界中のキリスト教をブチ切れさせたとか、選手の食中毒とか、白人のアジア人差別がとか、オリンピックの時期になる度にネットで話題になるからな。


 俺はオリンピックそのものが、二四時間テレビと同じくらいバカバカしいと思ってるけど。


「お前達のような野蛮な猿に、私が真の教養を教えてやろうと言うのに!」

「よくいる白人被れか。本当にくだらない」


 両親が日本人なのか知らないけれど、少なくともアジア系の人達だろうに。


 やたら白人を持ち上げて日本下げをしている奴等って、こういう奴等なんだろうか?


「正義を掲げるのは卑怯者とか抜かしたな、バカなクソガキ」

「アンタの信じる神は、人を口汚く罵っても良いらしいな、マサヨシくん」

「……アジアの猿が」


 それ、自分にも刺さる言葉だと思うんだけれどな。


「なら貴様はなんなんだ! ここに乗り込んできたということは、七百人の信徒を皆殺しにするつもりだったんだろう? そこにどんな正義が! 大義名分があると言うんだ!!」



「――ねぇよ、そんなもん」



「……は?」


「まだ、正義を掲げれば自分は許されると思ってるのか? だからお前は、只の卑怯者なんだよ」


 自分の行いを正当化するのは、自分が間違ってると指摘されるのが――大衆を敵に回すのが怖いだけだろ。


「俺の仲間が、家族が、このクエストで生き残り、奴隷にならずに済むために――俺はお前らを殺す」


 ここに来たのだって、クエストが終わったあと《ジャスティス教》が存在するくらいなら、クエストにかこつけて潰した方が良いと考えていたからだ。


 七百人も居るし、一カ所攻めて三分の一も始末できるなら手っ取り早い。


「信徒の人柄を聞いた今なら、尚のこと心は痛んだろうが、その信徒もお前が全員殺してくれたらしいからな」


「……黙れ(ジャスティス)


「なんだ?」



「――黙れぇぇぇ(ジャースティスッ)!!」



 意味が解らん。


「私の全力で殺してやる――オールセット2!!」


 ようやく、あの詐欺っぽい服を捨てたか。


 代わりに纏ったのが、真紅の鎧とはな。


挿絵(By みてみん)


「似合ってるよ、その格好」


「黙れ、下等生物。ここからが本番だ――“災禍の魔道騎士”!!」


 奴の背後に真紅の上半身鎧が出現……大剣と杖を所持している?


挿絵(By みてみん)


「守護神? いや、ユニークスキルか?」


「後者だよ、バカガキ!!」


 SSランクに模造神代文字、そしてユニークスキルか。


「良い訓練相手になりそうだ」


おまけ

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ