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789.陣地の恩恵

 アイテム武具店、【ジュリーのブグブグ店】内部に、四人無事に転移。


「クレーレ、サンヤ、ヒビキ、問題無いか?」

「大丈夫だよ、リューナ姉」

「こっちも問題無し」

「店の中には、誰も侵入してないようですね」


 入り口が破られたような様子もない。


「よし、コトリの作戦通り、私達は屋敷を一つ制圧する」


 狙うのはレギオンではない集団が契約している屋敷で、住宅区の中でもかなり奥地なうえ、周りの屋敷は空いているため、私達には非常に都合が良い相手。


「連中は、私達にたびたびちょっかいを出していた奴等だ。遠慮も躊躇いも要らない」


 生き残れるのは、四人に一人以下。


 私達は六十四人の大所帯なんだ、遠慮なんてしていられない。


「相手の戦力は未知数。気を抜くなよ」

「「「おう!」」」


 私を先頭に店を出て、頭に叩き込んだ道を素早く進む。


「よ、“四重魔法”!!」


 私達の存在に気付き、慌てて魔法陣を構築するやつれた女――対応が遅い。


「――“稲光瞬跳”」


挿絵(By みてみん)


 光と共に、瞬間的な爆発的速度で女に接近――“殺人術”の撲殺を胸に決め、即死させる。


「……さて、どうしたものか」


 私達が狙っていた屋敷に対し、魔法攻撃を行っているエルフと異世界人の男の二人組。


「とっとと降参しろよ、雑魚共がよ!」

「たった八人で、俺達のレギオンに勝てると思うなよ!」


 結界に大きな罅が入っている。


 屋敷内の人数も掴めたし、二人組は悪魔モンスターを召喚している……こちらとしては好都合。


「出番だ、クレーレ。正面の奴等ごと、屋敷を蹂躙しろ」


「了解――“雄大なりし悪魔神の夢”」

 

 不気味な黒肉がクレーレから湧き上がり、それが鎧状に変化。


「――“悪魔支配”」


挿絵(By みてみん)


 鎧から様々な悪魔系モンスターが出現していき、屋敷を囲むように拡散――一斉に結界を攻撃し始める。


「な、なんだ、コイツら!?」

「ぼ、“暴風魔法”、ダウンバ――」


 奴等が呼び出していた“グレーターデーモン”が叛旗を翻し、背後から胸を貫いて両者を仕留めた。


「大丈夫か、クレーレ?」

「うん、鎧を長時間維持する特訓は続けてたから、まだまだ全然余裕だよ!」


 結界が壊れ、“アバター”などの集団が一気に流れ込む。


「いや、人を殺した事に対して訊いたんだが……」

「大丈夫、大丈夫。私がギオジィ達に会うまでに――いったい何十人殺してきたと思ってんの?」


 無邪気なクレーレの言葉に、殺し慣れている私ですら戦慄が走った。


「そっか。なら良い」


「屋敷から出て来た――もらい!」


 サンヤが敷地内に入り、逃げ出してきた人魚の男を不意打ちで両断。


「“地球儀”、見付けたよ!」


「よし、乗り込むぞ!」


 私達が屋敷まで辿り着くと、悲鳴が怒濤の如く響く。


「見付けた“地球儀”、もう破壊しちゃって良い?」


 クレーレからの確認。


「よし、やってやれ」

「よっしゃ!」


 気合いを入れた直後、悲鳴が一斉に途絶えた。


「あ、“地球儀”を破壊したら、見た目が変わった!」

「クレーレ、その場所に案内してくれ」



●●●



「お」


 連絡が来た。


「……もしもし」

『私だ、リューナだ』


 小型コンソールから声が出る。


「こちらはコトリ」

『陣地の確保に成功。“地球儀”は“満月”になった』

「満月? “地球儀”との違いは?」

『“満月”が破壊されても、私達が当初危惧していたような危険は無いようだ。ただし、手に入れた陣地は奪われる』


 これなら、陣地取りに力を入れても良いかも。


『それと、陣地を奪って間もなく、屋敷の損傷と結界が一瞬で復活。その後、私達は再び外に出られなくなった』


 話を聞きながら、コンソールの機能を改めて調べる。


「陣地を手に入れたからか、こっちに新しい機能が追加されてる。転移の枠を使って、お互いの屋敷を行ったり来たりできるようになったみたい」


 とはいえ、これだと屋敷の外へは出られないわけだけれど。


『こちらのコンソールでも転移は可能なようだが、転移枠はそちらと共有のようだな。これからどうする、コトリ?』


 クエスト開始から、もうすぐ二時間が経過しようとしている。


「時間経過と共に転移枠が増え、お互いに大胆な動きができるようになる……リューナさん達はそこの陣地の防衛を。状況次第で援軍を送るから、暫くは静観して転移枠を増やそうと思う」

『大胆な動きが起きる。つまり、相手の防衛が手薄になるとも取れるか。了解……ん?』


 リューナさんの妙な反応。


「どうしたん?」

『どうやら、$を使って色々購入できるらしい。“偵察ドローン”、2000$。“ミサイルドローン”、4500$。“自爆ドローン”、3200$。この三種類だな』


 こっちのコンソールには、そんな機能見当たらない。奪った陣地特有の機能かな。


「リューナさん、ドローンの機能を詳しく」


 このクエスト、外に居るメンバーとの連絡手段の確保が、命運を分ける事になるかもしれない。



●●●



「結界にこんな機能が……」


 私の溶解液攻撃が、完全に無効化されている様子。


「“極光魔法”――オーロラレイ!」

『く、クソ!』


 私達の背後から仕掛けてきた人獣のプレーヤーを、ルイーサさんが追っ払ってくれる。


「仕方ない。私が結果を破壊しよう――“破邪十字”!」


 結界の側面に光の十字架を生やし、持続ダメージを与え続けるルイーサさん。


「おい、何やってんだ、テメーら!!」


 結界内側の門前に、プレーヤーが七人も出て来た。


「解ってんのか、テメーら! 俺達のレギオン、《子羊たちを愛でよう》は、三百人を超える大所帯なんだぞ!! 勝てると思ってんのか!」


 僕達はピンチなんです! と自ら告白するような脅迫口撃。頭が悪いのがよく分かる。


「お前さ、この前俺達に誘拐され掛けてた間抜けじゃん! お、お前なんかが、俺達に勝てると思ってんのか?」


 昨日、私の身体を押さえ付けたのはこの男か!


「俺達が同じ手口で、いったい何人の女を攫ってきてレイプしまくってたと思う? わかったらとっとと消えろよ、低脳女共が」

「そーだ、そーだ!」

「帰れ、ガキビッチ!!」


「――もう、我慢できねぇ。オールセット2」


「ち、チトセ?」


「“ニタイカムイ”――ファイアッ!!」


 “業魔悪鬼共を弾劾し尽くせ”からの、本気の一斉射撃!!


「な! や、やめろぉぉぉ!!」


 あっという間に結界に罅を入れて粉砕――そのまま門ごと、のこのこ出て来た七人を蜂の巣に。


「――行くぞ、ルイーサぁぁぁッッ!! 皆殺しパーティーだぁぁッ!!」

「は、はい……怖い(ボソ)」


 私はもう、誰にも止められねぇぞぉぉッ!!



●●●



「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃッ!!」


 二丁のガトリングから“魔力弾丸”を高速掃射――屋敷の扉や窓、柱などを破壊していくチトセ。


「さ、さすがにMPが持たないんじゃ……」


 私の危惧を察してくれたのか、ガトリングを止めて“ニタイカムイ”も解いた?


「“工房展開”――“宇霊羅の泉龍”!!」


 ユニークスキルの水の龍を呼び出した……この組み合わせ、コセがモンスターエレベーターに挑んでいた時にチトセが試していた戦術!


「――行きなさい」


挿絵(By みてみん)


 SSランク、“アトリエ・コンポジション”で大量生産された“溶解液”を大量に取り込んだ水龍が、破壊された玄関から突入――割れた窓から強酸の飛沫を飛ばしながら、屋敷中を駆け回っている!?


「な、なんて凶悪な……」


 屋敷の中から、阿鼻叫喚が響き渡り……次の瞬間には静になっていく。


「やめろ、お前らぁぁ!!」


 門から、《子羊を愛でよう》のレギオンリーダーと聞いていた茶髪ピアスがやって来た。


「チトセの邪魔はさせんぞ」

「クソ女共が! 来い、聖王騎士!!」


 三メートルを超える白い騎士が、剣と盾を手に、マントを棚引かせながら現れた。


「コイツは、EXランクの指輪で呼び出す正真正銘の化け物だ。今更泣いて許してっつっても――遅いからなぁ!!」



「“極光黄昏剣術”――オーロラトワイライトブレイク!!」



 コセから借りた“メダライズ・ブレイド”と鎧に刻んだ六文字分の力で、聖騎士の巨軀を吹き飛ばす事に成功。


挿絵(By みてみん)


「く、クソッたれが!! こうなったら、俺のユニークスキルで黙らせ――」


 何か仕掛けようとした男が、突然光となって消えた――と思ったら、いきなり結界と屋敷が修復され始めた!?


「もしかして、“地球儀”を破壊したのか?」

「おそらく。“宇霊羅の泉龍”を消した瞬間、いきなりお屋敷が元通りになり始めたので」


 口調が元に……二重人格って、目の当たりにするとこうも怖いんだな。


「取り敢えず、“地球儀”の状況を確認しようか」


おまけ

挿絵(By みてみん)

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