781.魔神・合成獣
「満足した?」
「……うん」
ゴツゴツした床で、白い布にくるまり、抱き合いながら語り合う私達。
「行為の一つ一つに、愛情を感じた♡」
「お、おう」
照れた反応、可愛い♡
「……無理に迫ってごめん」
「良いよ。本気で嫌なら拒んでたし」
この人なら、そう言うだろう。
「私は、肌の色で差別的な扱いを受けてきたから……強くて私を受け入れてくれる雄を逃したくなかった」
このコミュニティなら、私のもう一つの望みも受け入れてくれそうだし。
「コセ……私は、子供は作らない。自分の子供は欲しくないんだ」
「……肌のこと?」
「ああ」
すぐに察してくれる……私をちゃんと見て、理解しようとしてくれていた証拠。
「自分の子供や孫が、その先の子孫が……私と同じ肌で生まれたら……可哀想だ」
自分で言って、胸の奥がブスリと重くなる。
「女がたくさん居るんだ、子供は私以外が産めば問題ないだろう?」
それが、私がこの男を選んだもう一つの理由でもあった。
「……モーヴが本当にそれを望んでいるなら、俺もそれで良いよ」
「ありがとう……」
短い付き合いなのに、私の望みを最高の形で叶えてくれやがる。
「でも――気が変わったら、産んだって良いんだからな」
「……」
コイツは、どこまで私を理解してしまっているのだろうか……。
「……気が変わったらな」
自然と、更に身体を密着させる自分が居た。
●●●
「第五十三ステージのボスは、魔神・合成獣。弱点属性は竜、有効武器は剣、危険攻撃は、今までの魔神の色んな攻撃全般かな」
ボス部屋前でのメルシュさんの説明。
「ステージギミックは無いけれど、通常より“天賦覚醒”しやすいから気を付けて」
説明が終わり、最初に私とクマムさんのパーティーで挑む。
「じゃあ、よろしく。ツグミ」
「よろしくお願いします」
ネロさんとエレジーさん、また見つめ合って笑ってる……微笑ましいですね♪
「来るわよ」
ハユタタさんの声に部屋の奥に目を向けると、暗がりで様々な色合いの光が線状に走って……今までで一番多いかも。
「て、へ?」
色んな魔神の特徴を持った魔神が、二体いる!?
「聞いてないんですけど?」
右は人型魔神の集合体で、左はそれ外の魔神の集合体に見えます。
「分担しましょう! 左は私のパーティーで受け持ちます!」
クマムさんが迅速に動いてくれた!
「ありがとうございます! 皆、私達は右を!」
「頑張れ、ツグミ」
「ツグミならやれるわ!」
ネロさんもハユタタさんも、戦わない気満々ですか!
「もういいです! “六重詠唱”――“連続魔法”」
ユウダイさんが手に入れてくれた、“ダイバビロンのスキルカード”から得たスキルを行使!
「“桜火魔法”――フレアブロッチェカノン!!」
掲げた右手の先の六つの魔法陣から、火花の美しい砲火を連続発射!!
私のMPが続く限り、私が止めない限り、この魔法の連続発動は終わらない!
『“火喰い”』
途中から、炎が全て――魔神・火喰い鳥の能力ですか!
「“二重武術”、“万雷投槍術”――サンダラスジャベリン!!」
ハユタタさんの神代文字込みの攻撃が決まり、魔神の歪な人型の身体を貫いた!
『“氷炎魔法”、アイスフレイムバレット』
魔神・四本腕の魔法!
「“神秘魔法”――ミスティックブラスト!!」
青い炎が広範囲に広がる前に、セリーヌさんが対処してくれる。
「アイツ、能力が多過ぎでしょ!」
ネロさんの言うとおりで、今度は大きな雲に乗ったあげく、髪から毒を持った猿に、小魔神まで出てきた!
「“人工知能”!」
『魔神・紫雲猿と魔神・受胎母像の能力です』
アイちゃんが教えてくれる!
「“逢魔砲”――“連射”!!」
雑兵がこれ以上増える前に、一気に殲滅!
『“逆三暗黒宮”』
『無数の黒の槍、追尾して来ます』
背後の黒い逆三角紋より、闇の槍が連続発射。
「“絡繰り鬼兵”」
ネロさんが呼び出した金属骸骨の上半身が変形――鞭のように撓らせた腕と胴体の盾で、暗黒の槍を全て防いでくれる!
「“狂血投擲術”、ブラッドフリング――“分裂”!!」
投げた黒いナイフ、“道化の投げナイフ”が無数に増えて、魔神にダメージを与えただけでなく、雲を壊して落下させた!
『魔神・転剣狼と魔神・多腕円輪の武器を装備』
アイちゃんの言うとおり、いつの間にか巨大なブーメランとチャクラムを装備している!
「させっか!!」
セリーヌさんが、この前見せてくれた“古代兵装/四枚盾フェルミオン砲台”を操り、肩から生える腕に持った投擲武器を、腕ごと撃ち飛ばしてくれた!
『“天賦覚醒”、来ます』
「これ以上はやらせない――」
掲げた左腕に装着されたピンクの機械甲手、“紡ぎ噤む春の鳴”に十二文字が刻まれ――“紡ぎ噤む春の胎動”へ!
「――来た」
この数日、心の奥で感じていた躍動が、ようやく形となって顕現した!
『魔神・銛人魚の武器を装備しました』
青い石の銛を振りかぶっている。
『“氾濫武術”――ハープーンブレイク』
「“神代の拳”――桜火拳!!」
正面から、放たれた魔神の銛を粉砕!!
「“ワッカカムイ”――“泥土魔法”、ベリアルバイパー!!」
『“二連瞬――』
ハユタタさんの魔法で出現した泥の大蛇が、魔神の動きを止めてくれる!
「「「行け、ツグミ!!」」」
三人の神代文字が、私の神代文字と共振していく!
「“神代の発射口”――“魔力砲”、“連射”!!」
“天賦覚醒”で上がった防御能力で耐えられたのは一発目だけで、三発目を受ける頃には、跡形もなく、魔神・合成獣は消し飛んでいた。
○○○
「“熾天使化”――“天使の威圧”!!」
神代文字の力込みの光の重圧で、異形の魔神・合成獣の動きを止める。
「カードダセでコセさんが手に入れてくださったスキル、便利ですね」
「“破邪解放”、“ニタイカムイ”、“神代の斧”――ハイパワーアックス!!」
「“神代の拳”、“氷炎の競演”――氷炎拳!!」
『“水晶魔法”――クリスタルバレット』
魔神の魔法を物ともせず、ノーザンさんとナオさんの攻撃が決まる。
「行きます――発射!!」
リエリアさんの“マキシマム・ガンマレイレーザ”が直撃――効いてない?
「魔神・大盾亀の“偶発無敵”だ余!」
ランダムにダメージを無効にするスキル!
『“樹液弾”』
「――“暴虐惨禍”!!」
エレジーさんの黒い竜巻がリエリアさんを守っただけでなく、魔神にダメージまで与える。
「“天賦覚醒”――“魔人武術”、サタニズムブレイカー!!」
『“猪突猛進”!!』
自身を強化したナノカの一撃と、エネルギー纏う突撃が正面からぶつかり合う!
「行け、私のマスター!!」
ちょうど、魔神の頭上を取った!
「――“裁きの降臨”!!」
私の全身から下方へと降り注ぐ光の柱が魔神に当たり、光の流星となった私が急降下!!
魔神の巨体の一部を穿ち抜き、更に周囲へと光の暴威を拡散――異形の魔神・合成獣を、粉々に消し飛ばした。
「さすが、一日一度しか使えない強力なスキル」
総TPの半分も持っていかれるため、何気に使い所が難しい。
○おめでとうございます。魔神・合成獣の討伐に成功しました。
○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。
★合成魔神の技能腕輪 ★魔神王の覚醒指輪
★合成魔神の武具腕輪 ★魔神化のスキルカード
○これより、第五十四ステージの【上級平和街】に転移します。