780.偉大なる英雄VS二体のSSランク
『第二十試合、ダイバビロンとオールダイブ・クロコダイルとの戦闘を開始します』
巨大な赤い光が二つ、立ち昇――くすんだピンクのゴシックドレスを来た大柄な貴婦人が現れた物の、もう一体はどこだ?
「――“偉大なる黄金の翼”、“飛翔”!!」
湧き上がった危機感に任せて上空へと飛び上がると、直後に巨大な顎が、俺がいた場所を下から呑み込む!
「バカデカい鰐か。それにしても、地面は抉れないんだな」
ゲーム的な演出なんだろうけど、何か理不尽を感じる。
『“大精吸い”』
――“ダイバビロン”がスキルを使った途端、MPとTPが急速に失われていく感覚が!
「優先すべきはアイツか! “精霊魔――」
気を少し逸らした瞬間を狙って、“オールダイブ・クロコダイル”が壁側から飛び出してきた!?
「――“超噴射”!!」
無理矢理な急加速で間一髪回避――壁を蹴って“ダイバビロン”を狙う!
『“連続詠唱”、“逢魔魔法”――オミナスカノン』
魔法を持続的に発動し続けてるだと!?
回避で手一杯に!
「オールセット1。撒き実れ――“雄偉なる大地母竜の永劫回帰”」
左手に、大地竜の大剣を生みだす。
『“悪魔逢魔魔法”――デビルオミナスランサー!!』
「――“黒竜霊”」
相手の魔法を取り込むと同時に、“古代竜魔法”のドラゴノヴァで全MP――ではなくOPを取り込ませる!
「“大地竜剣術”――グランドドラゴンスラッシュ!!」
『“魔力障壁”!!』
張られた障壁ごと、大柄の貴婦人を両断――内側から暴威が炸裂し、完全に吹き飛ばした。
「残り一匹」
とはいえ、“ダイバビロン”を確実に倒すためにかなり消耗してしまった。
「オールセット2」
両手に“偽レギ”とそのコピーを握りながら、再び襲ってきた巨大鰐の突撃を回避!!
「耐え破れ――“雄偉なる極寒忍耐の破邪魂”! 怒り消せ――“雄偉なる溶解の鬱憤慟哭”!」
ノーザンとカプアの精錬剣をこの手に!
「“随伴の溶解液”!!」
緑色の大河を、壁を基点に逆巻かせ、床にも満たしていく!
『ギュアアァァアアアァァアアアアアアッッッ!!!?』
壁から出現と同時に、全身溶解液まみれになる鰐野郎。
「“二刀流”――“飛王剣”!!」
躱しながら腹部分に斬撃を叩き込むと、“オールダイブ・クロコダイル”が溶解液逆巻く壁に激突。溶解液の池へと落下した。
「“随伴の氷塊”!!」
巨大な氷を次々と投入し、ダメージを追加しつつ溶解液の沼を凍らせていく。
「かなりのダメージは与えたはずだけれど――消えた?」
奴の姿が沼にない。
『――ギュァァァァアアアアアアアアアアッッッ!!』』
真上からダイブして――躱せない! 迎撃するしか――鎧に、十二文字を刻む!!
「――“神代の天竜”!!」
青白い光の竜を纏い、自ら顎へと飛び込む!
「“氷塊大地剣術”――アイスグランドブレイク!!」
鰐の上顎を、綺麗に吹き飛ばす!
『ギュア……ァァ』
まだ息があるか。さすがSSランク!
「――“溶解大地剣術”、アシッドグランドブレイク!!」
落下のすれ違い様に、奴の背中を溶かし爆ぜさせた。
「ハアハア、ハアハア」
巨大な鰐の死骸が、光となって消え出す。
「トゥスカから、“ディグレイド・リップオフ”を受け取っておいて良かった」
でなきゃ、この最終戦は絶対に勝てなかっただろう。
溶解液と氷塊を消し、床に降り立つと、モンスターエレベーターが二十回目の上昇を開始。
上昇が止まると、入り口の反対側が何重にも変形――巨大なドアとなって開く。
「……もうボス戦か」
ドアの先にあった円状の大空間、その中心にある円柱には、ボス扉といつもの妖精が。
○モンスターエレベーター、最上級コースの報酬をお受け取りください。
●報酬選択権×10 ●グレートグランドキャリバー
●凍結掌のスキルカード ●ブラックオリハルコン
●荒野の黄昏に歩みは止めず ●伝説の虹色舞茸
●鉄塊の竜核 ●二重魔法の指輪 ●オリハルコン
●煉獄にて嘲笑う獄卒の形相 ●降雹王の指輪
●高機動移動砲台×2 ●苦悩を堪え続けて
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○SSランクモンスター二体撃破の報酬をお受け取りください。
●ウェポン・クラスター EX
「これが、例のEXランクか」
どういう能力だろう?
「よう、大将!」
声を掛けて来たのは、モーヴ。
「先にクリアしてたのか」
「まあな。それにしても遅かったじゃないか。最上級コースに挑んでたわけじゃないんだろう?」
「いや、最上級コースをクリアしてきたけど?」
変な間が生まれる。
「……またまた。Sランク二体相手でもキツかったろ?」
俺がAの扉を選んで入ったのを、モーヴは知ってるからな。
「いや、三体相手しなきゃいけない時もあったし、二十試合目なんて、SSランクモンスター二体だったから、Sランク二体くらいで弱音なんて吐いてられなかったよ」
「……大将は何と戦ってたんだよ」
「SSランクは“ダイバビロン”と“オールダイブ・クロコダイル”。Sだと“キング・オブ・ソード”や“ゴブリンエンペラー”、“ジャバウォック”、“ジャイアントオーガ”、“デーモンロード”、“ズー”。あとは……」
「いや、大将が強いのはもう判ったから」
これ、疑われてる?
「俺が手に入れた素材とか見るか?」
チョイスプレートを開いて見て貰う。
「……ちょっと待てよ……SSランクのモンスター欄に、二体追加されてる」
「ああ、モーヴはランクで表示してるのか。俺は種族ごとが基本だから失念してたよ」
SSランクで表示すればNEWって文字があるだろうから、すぐに信じて貰えただろうな。
「……大将、本当に強いんだな」
「まあ、何回か死にかけたけれどさ」
貴重なアイテムを集中してくれたからこその勝利だったと、素直に思う。
「……大将って、緑色の肌の女はどう思う?」
「へ? ……単純に肌の色で訊かれると抵抗あるけど、モーヴはその肌の色が似合ってると思うよ」
「――それは皮肉か?」
「え?」
モーヴは、自分の肌の色に抵抗が?
「いや、だってモーヴは美人だし」
「び、美人……いや、肌の話をしているんだよ!」
「だから、緑色の肌が似合ってて可愛いって言ってるんだよ!」
似合ってない服を着ている人間を見ると感じる忌避感のような物を、モーヴからは全然感じないし。
「じゃ、じゃあなんだ? 大将は私を抱けるのか?」
「へ? ……抱かれたいの?」
「そんなこと言ってないだろうが!!」
付き合いが短いからか、微妙にモーヴの言わんとしている所が解らない。
「うーん……俺の妻になる気があるなら抱くけど?」
今のところ、モーヴ個人の事は嫌ってないし、モモカとバニラも懐いているみたいだし。
「……と、とっとと戻るぞ。アイツら、きっとお前を心配してる」
「モーヴの事だって、心配してると思うけど?」
俺に対して程じゃないだろうけれど。
「……こ、この女たらしが!」
モーヴが装備を解除し、服だけの姿に!
「だったら……今すぐ私を抱けよ」
「ここで? さすがに夜まで……」
「――やだ」
我が儘モードのモーヴは、正直――もの凄く可愛かった。