779.あからさまな罠
『第二十試合、ゴブリンキングとゴブリンクイーンとの戦闘を開始します』
「最終戦がゴブリンとは……」
ホーン族には、自分達が最強のオーガの末裔という伝説がある。
その伝説を信じている者もいれば、胡散臭いデタラメと軽んじる者も居るが、何故か奴等は、私のような者に対してだけは一丸となるんだ。
ホーン族の中でごく稀に生まれる皮膚が緑色の人間は、ゴブリンの末裔だと罵る時だけは!
「“重力支配”!!」
動きを封じて、“重力砲”で吹っ飛ばしてやる!
『『ギャギャギャギャギャ!!』』
クイーンとキングが同時に笑い出した瞬間、赤い光が出現し――多種多様なゴブリンが出て来た!?
「二対一じゃなかったのか……だが!」
纏めて吹っ飛ばすだけだ!
「“稼働”――“重力砲”!!」
――“ゴブリンジャイアント”が出現と同時に盾になった!?
他のゴブリン共が、大挙して押し寄せて来る!
「クソ!」
只のゴブリンなら“重力支配”の重圧だけでも始末できるが、重圧が自分から離れれば離れるほど弱くなってしまうのもあり、上位種のゴブリン多数相手には大した決め手にならん!
「――“重圧圧壊”!!」
上段からの振り下ろしの際に一気に威力が上がる一撃で、突出して来たゴブリンブレイダーを始末。
「“四重・重力球”!!」
カードダセとかいうので手に入れたらしい“重力球のスキルカード”四枚で手に入れたスキルを行使! 私の前面に四つの引力球を用意。
突っ込んできたゴブリンが“重力球”に吸い寄せられ、球の限界容量を超えた所でゴブリンごと消滅。
『『ギャギャギャギャギャ!!』』
「まだ増えるか!」
クイーンとキング、どちらかだけでも始末できれば!
「――やってやる!」
まだ上手くやれない、神代文字の力を他の武具に移して強化する技術!
「“稼働”――――“重力砲”ッ!!」
大量のゴブリンの肉壁をぶち抜いて、キングの上半身を吹っ飛ばした!
「ハアハア。よし、上手くいった――おい、ふざけるな」
既に召喚されたゴブリンの中に、キングやクイーンよりも強い“ゴブリンジェネラル”が居るだと!?
ジェネラルは存在するだけで、キング以上にゴブリン共を強化するのに!
「だが、これ以上は増えない! 装備セット2!」
“重力重砲”と“この重圧に堪えきれるか”を
消す。
「“可変”!!」
“カラミティーアーマー”の両甲手の上部分が回転し、肘向きに付いていた爪部分を前に持ってきて固定される。
「――重力連拳!!」
正面から、多種多様なゴブリン共を始末していく!
――奴等の後方で魔法陣が展開して――“ゴブリンシャーマン”共、仲間ごと吹っ飛ばすつもりか!
「――“魔力障壁”ッ!!」
後方に跳びながら前面に障壁を展開――放たれた十を超える魔法に、前線のゴブリンはほぼ全滅した。
「ハアハア、ハアハア」
魔法の余波、完全には防ぎきれなかったか。
「――オールセット2!!」
“マキシマム・ガンマレイレーザ”にした“レギオン・カウンターフィット”を装備し――チャージ三割でぶっ放す!!
厄介なゴブリンシャーマンと……ゴブリンジェネラルまで仕留められたのは、運が良かったな。
「ハァー、ハァー、ッ――」
『――ギャギャギャ!!』
クイーンの爪が眼前に!!
――首を、頸動脈をザックリと――急いで治療しないと死――それよりもッ!!!!
死の瀬戸際だというのに、私は酷く冷静で……落ち着いていた。
「“重力爪術”――グラビティースラッシュ!!」
すれ違い様に、クイーンの腹の贅肉を大きく切り裂く。
『ギギャー!!』
デブ雌が。脂肪に救われたな。
「装備セット2」
“この重圧に堪えきれるか”を手にした瞬間、十二文字が刻まれ――“最後までこの重圧に堪えてろよ”へと強化!!
「“超重圧”――“重圧圧壊”」
重力系を強化する“最後までこの重圧に堪えてろよ”の能力、“超重圧”適用状態で上段からの振り下ろしをぶつけ――クイーンの頭を粉砕した。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハイ……ヒール」
正気に戻った瞬間、上手く呼吸できなくなった喉で無理矢理に言葉を紡ぎ……なんとか一命を取り留める。
「ハアー、ハアー……ジュリー、全然楽勝じゃなかったぞ」
後で文句言ってやる。
「……レギオンリーダーの男、最上級コースなんて選んでないよな?」
せっかくできた居心地の良い場所なんだ。
私が帰還したら全員死んでたなんて事になったら……絶対に赦さないからな。
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「守護の名の下に排せ――“雄偉なる銀翼の凶兆極右”! 守護の名の下に黙せ――“雄偉なる銀翼の吉兆極左”!」
“贋作”と“ディグレイド・リップオフ”で、双子の精錬剣をこの手に!
「“随伴の光線”!! “随伴の水銀”!!」
高さ二メートル越えの大きな石像、“狛犬・吽形”と“獅子・阿形”の二体の連携を、水銀と光線の奔流で乱す!
「“水銀大地剣術”――マーキュリーグランドスラッシュ」
狛犬の胴を両断。
「“光線大地剣術”――レーザーグランドスラッシュ!!」
射程無視の超距離上段降ろしで、獅子は正面から一刀両断。十九試合目を終える。
「フー、ちょっと焦った」
二体の連携の凄まじさは本当に容赦がなかったし、口が開いている方にしかダメージが入らないとか……何気に初見殺しだろ。
「……やっぱりか」
すぐさま倒した敵の情報を確認すると、ダメージ無効は二体が揃った時にのみ発動する特殊能力である事が判明。
「少し休も」
TPとMPの総量が凄まじいとはいえ、ここまで来るのにだいぶ消費してしまっている。
「俺は“世間師”のおかげもあってまだまだ余裕あるけれど、全員が最上級コースを選んでたら間違いなく脱落者が出てたろうな」
○二十試合目のルールを、以下から選択可能です。
・Sランクモンスター五体
・SSランクモンスター二体
最悪の選択肢しか用意されてない。
「数か質か、か」
俺が知っているSSランクモンスターは、“湖の主”と“イービルヘキサドラゴン”くらい。
“アンラ・マンユ”に関する情報もあるけれど、三体ともとにかく巨大でタフなのが共通、て所か。
「SSランク二体よりは、Sランク五体の方がマシな気がするけれど」
それが証拠に……。
○・SSランクモンスター二体 をクリアされた場合、素敵なEXランクアイテムを進呈致します。
後者を選ばせる気満々じゃん。
「……まあ、良いか」
軽く食事をしたのち、俺はSSランク二体との勝負を選択した。