778.モンスターエレベーター
○これより、モンスターエレベーターを起動します。
「思っていたより広いな」
エレベーター内部は、ボス部屋程じゃないものの、縦にも横にも広い円柱状の機械部屋だった。
勝手に表示されたチョイスプレートには、事前にメルシュやジュリーから聞いていた内容が表示されている……だけでもないな。
○最上級コース
・敵が全てSランクモンスター
・合計ポイント250以上で報酬の数を二倍
・自分の分の報酬のみ、ライブラリに記載のある物の中から選択可能
○コースを選択してください。
★通常コース ★最上級コース
「聞いてたのと違うけれど……まあ、やってやるか」
“ディグレイド・リップオフ”を大量に手に入れるチャンスだし、観測者もそれを見越して乗ってくると思ったんだろう。
俺は、最上級コースを選択。
○第一試合を始めます。準備はよろしいですか?
YESを選択すると、床の中央の円輪が回りだし、二つの赤い光がモンスターを形成していく。
「いきなり二体とは聞いてないが?」
まあ、必要クリアポイントが250以上って所で、なんとなく察してたけれどさ。
『第一試合、ジャイアントオーガ二体との戦闘を開始します』
グレートオーガよりも巨大な、赤黒いオーガ二体が動き出す。
「いきなりだけれど、楽をさせて貰おうか――“贋作”、“レギオン・カウンターフィット”」
クマムが第三回大規模突発クエストで手に入れたというユニークスキルで、ライブラリ欄にある武具を生みだして装備。
「弾劾し尽くせ――“雄偉なる業魔悪鬼共を蒸発させよ”」
その力で、チトセとの精錬剣へと変える!
「――“随伴の水蒸気”」
高温の水を生み出し、ジャイアントオーガの間近で強烈な爆発を連続発動。
「さすがSランクモンスター」
随伴の能力だけだと、決定打に欠けるか。
「“神代の剣”――“水蒸気大地剣術”、イヴァポレイショングランドスラッシュ」
身体のあちこちが欠損していた二体を横に切り裂き、始末を終える。
「どうせだ。“カードダセ”で手に入れたスキルも試していくか」
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「“稼働”――“重力砲”!!」
Aランクモンスター、“黒鬼”二体の半身を消し飛ばす。
“レギオン・カウンターフィット”を変化させた“エロスハート”のおかげで、MP消費を気にせず大火力攻撃ができる。
「“重力魔法”――グラビティーベクトル!!」
一体にとどめを刺し、残り一体を武術で仕留めた。
「ハァー、ハァー、ハァー、ハァー……これで、十試合目もクリア」
体力の回復のためにも、一度休憩を取ろう。
自分でチョイスプレートを操作しなければ、次の試合が始まらないのは救いだな。
「最上級コースなんて聞いてなかったから通常コースを選んだが、最上級を選ばなくて正解だったな」
今でもキツいのに、これ以上はおそらくクリア不可能。
「レギオンリーダー殿は、今頃どうして居る事やら」
“エロスハート”から“マッスルハート”に変え、TPも回復させる。
“ソーマ”で軽く喉を潤したのち、身体が本格的な休息を取り始める前に、十一試合目を開始。
『第十一試合、“アサシン・レジェンド”との戦闘を開始します』
大柄な、白フードを被った人間?
「――速い!」
跳躍から壁を自在に蹴り跳び、目で追うのも難しい移動速度!
「――“重力支配”」
“マスターアジャスト”化した“レギオン・カウンターフィット”ディグレイド・リップオフ”、略して“偽レギ”によって“この重圧に堪えきれるか”に付与した能力で、急速接近してきた“アサシン・レジェンド”を這いつくばらせる。
「さいなら――“重力砲”」
さすがの威力。“稼働”を使ってなくても、一撃でSランクモンスターを消し飛ばしたか。
「黒鬼が頑丈だったのか、防御能力だけならアサシン・レジェンドよりも上だった気がするな」
●●●
「エレジーとネロ、すっかり関係性が変わっちゃったね」
コセ達を送り出した後、魔法の家の領域に戻ってきた私達。
二人のイチャイチャ振りはすぐに始まった。
一応、モモカとバニラの前では気を付けているみたいだけれど。
「あれ、“超同調”を使ってからああなったんですよね?」
ノゾミがリューナに確認しちょる。
「らしいな。もしかしたら、精錬剣を作る時以上に深く交わったのかもしれないが」
「だとしても、あんなにも人格に影響が出る物なんですか? ……どうしよう」
コセと精錬剣を作るか悩んでいるノゾミ……こっちは、その土台にすら上がれてないっていうのにさ~。
「……人格に影響か」
私も、リューナとかに“超同調”を使って貰えば、十二文字刻めるようになるっすかねー。
●●●
「“大地肩腕”」
両肩に大型の腕を出現させ、飛んできた大剣を裏拳で弾く!
「“キング・オブ・ソード”に、“キング・オブ・アックス”、更に盾の奴か」
王剣を中心に様々な浮遊剣、王斧を中心に様々な浮遊斧、王盾を中心に様々な浮遊盾が展開し、取り巻き的な浮遊武具だけが襲ってくる。
「十戦目で、Sランク三体を相手か」
これ、250ポイント以上って言ってたけれど、強制的に二十試合するの決定だよな。
「オールセット4」
カードダセで手に入れた“大地肩腕”に、“偉大なる鬼神の腥風剣”と“偉大なる英雄竜の猛撃剣”を持たせる。
「“二重武術”――“破壊武術”、バスターブレイク」
武具破壊Lvが高い攻撃で、高速で飛んできた剣と斧を砕き壊す。
「さてと」
二振りの剣で対抗している間に、トゥスカから借りた“偽レギ”を“マスターアジャスト”に変更し、“サムシンググレートソード”に融合させる!
「“大地支配”」
岩石の壁に、飛んできた浮遊武具をめり込ませて閉じ込めた。
“大地支配”。精錬剣の“大地支配”より負担は少ない物の、随伴の能力と比べると能力行使がワンテンポ遅れて、融通が利かない感じだ。
本当、自発的に付いてきてくれる随伴と、無理矢理に従わせる支配の差って感じだな。
閉じ込めている間に、“破壊武術”で確実に減らしていく。
「だいぶ減ってきたな」
本体は、おそらく中央の直立している武具。
「“破壊武術”、オブジェクトブレイク――“拳腕噴射”!!」
魔神・隕鉄巨兵から手に入れたスキルを使用し、破壊エネルギー纏う剣を持ったまま――ロケットパンチ!!
“キング・オブ・ソード”と“キング・オブ・アックス”を撃破。
本体が倒されると、取り巻きの浮遊武具が消失した。
「お前も終わっとけ」
“大地支配”で、“拳腕噴射”の勢いのまま飛ぶ“大地肩腕”を操り――“キング・オブ・シールド”の本体も破壊。
「うん、良い訓練になった!」