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773.決戦 アポピスVS精錬剣

 絶命したニシィー? とかいうのが倒れる。


「フー、ようやく片付いた」


 まだ、あの大蛇の相手が残ってるんだっけ?


「……死体が消えない?」


 ――“霊化”を使う暇もなく、右腕を抉り飛ばされたッッ!?


『クソッ、外した!』

「ハイパワースラッシュ!!」


 エレジーの一撃で、肩から胸までバッサリ切られた蛇女。


 血が派手に……すぐに腕を拾って、ハイヒールを掛ける。


「ハアハア、ハアハア」


 視界が、ザワザワとした青に染まっていく……前に死んだ時も、こんな感じだったわね。


「私が殺るので、ネロは回復に専念していてください」


『エレジー……本気でその女を守るって言うの? いい加減にしなさいよ』

「彼女が……リョウに殺された事は知っていますか?」

『――ええ、知ってるわよ! リョウさんが私達の仇をとってくれたのでしょう!! さすが、私が愛した人よ!』


 よくもまあ……あの一部始終を知らなければ、そう思って当然か。


「……そのまま幸せな記憶の中で、今度こそ死んでください。ニシィーさん」


 エレジーのハルバードに、再び十二文字が刻まれる。


『なんで……なんでアンタばっかりッッ!!』


「――“獣化”」


 エレジーのやつ、わざと身体を貫かせて!?


『な――は、離せッ!!』


 刻まれている文字数がどんどん減っていく。


『――“暴乱惨禍”』

『――イヤだぁぁぁぁッッ!!!!』


 頭から腰まで、バラバラに挽き潰されてようやく……光に変わりだす蛇女。


「……無茶して」


 私の盾になるような女が、ツグミ以外にもいるなんてね。



●●●




○生贄数286/444で、“アポピス”がこちら側に降臨します。



 黒い太陽から、真っ黒な巨蛇が大河に着水――発生した水飛沫が、津波のように船を打ち付けた!!


挿絵(By みてみん)


「あれが“アポピス”……ハハ、巨人が可愛く見えてくる」


 この“渡河船”くらいなら、簡単に締め潰せそうな程の巨体。


「あんなのと、どうやって戦えって言うのよ」


 私の遠距離攻撃手段なんて、大した威力の無い魔法くらいだってのに。


「ミキコさん!」


 リエリアが、“マキシマム・ガンマレイレーザ”を投げ渡してきた!?


「それを使ってください!」

「アンタはどうするのよ?」

「私はコレを!」


 “レギオン・カウンターフィット”の偽物を手にするリエリア。



「遍く世界よ――“雄偉なる世界は――祝福を謳う”」



挿絵(By みてみん)


 アレが、リエリアがコセと共に作り上げた精錬剣……なんて美しい。


「行きましょう、ミキコさん!」

「ええ!」


 やっぱり、このレギオンの人間は頼りになる!



●●●



「クソ、数が多い!」


 “アポピス”も復活したし――出し惜しみする必要は、もう無いわよね!


「ノーザン! 私が“アポピス”を仕留めに行くわ! 装備セット3」


 “ディグレイド・リップオフ”を装備。



「燃え吹雪け――“雄偉なる氷炎の共演に魅せられよ”!!」



 コセとの愛の結晶をこの手に!!


挿絵(By みてみん)


「限界が来たら代わってください!」


 アンタはコセと作った精錬剣が使いたいだけでしょ、ノーザン!


「はいはい――“飛行魔法”、フライ!」

 

 空から船の端へと移動しようとすると、硬そうなコウモリが追撃してきた!


 ……よく見たらコイツら、蛇の尻尾が生えてるし。


「――“随伴の氷炎”」


 燃える青い炎を操り、丸ごと氷漬けにして船へと落下させる。


「余計な力を使わせて」


 急いで、“アポピス”とかいう黒い巨蛇の前へ。


『《贄が足りぬ――強者よ、完全な顕現のため、我が贄となれ!!》』



「“随伴の青雷”!!」



 青い雷が轟き、巨蛇の進行を阻んだ!


「ナオさん!」


 やっぱり、リエリアの仕業か!


「私が動きを封じるわ! “六重詠唱”――“氷炎魔法”、アイスフレイムバーン!!」


 “随伴の氷炎”と合わせ、目の前の大河を一気に凍らせる!!


「あのデカブツ!」


 動きは制限出来た物の、容易く氷の大河を割砕いて来るし!


 ――一筋の青白い光と、“万雷砲”の“連射”が“アポピス”を襲う。


「ミキコさんとツグミさんみたいですね!」

「一気に決めるわよ、リエリア!!」


 刻んだお互いの十二文字か共鳴し、私達の随伴の力が強化される!!


「こ、コイツ!」


 身をくねらせて大河の水を防御に使っている上に、吹っ飛ばした部位があっという間に再生していく!


「これ、どうしろってのよ!」


 セリーヌも文字の力で援護してくれてるけれど、ダメージが再生能力を上回れていない。


 いや、損傷部位は少しずつ増えてる。


 ダメージがほんの少ししか上回れていないこの状況……無限に攻撃し続けでもしないと倒しきれないけれど、神代文字の力はいつまでも持たない!



「刻みつけろ――“雄偉なる波紋夜(はもんよ)の交渉(えにし)”」



 この声、ユイ?



●●●



 雄々しき英雄と私の太刀を、この手に顕現させる!


「私も、ようやく実戦で使える」


挿絵(By みてみん)


 私は十二文字刻めてたのに、何故か最近まで精錬剣を作れなかった。


「――“太刀神降ろし”」


 雄偉の太刀を、十倍の大きさに。


「“神代の太刀”」


 十五文字刻み、青白い刀身を形成して更に巨大化。


 五十三ステージのクエストで自覚した己の未熟さを、弱さを、情けなさを乗り越えるビジョンを追い求め、私が行き着いた境地。それは――夜のコセさんのように!!


「――“随伴の勇猛”!!」


 赤く猛きオーラを刀身に纏わせ、更なる強化。



「“勇猛大地刀剣術”――――ブレイブグランドスラッシュ!!」



 空中にて、邪悪な巨蛇を縦一文字に切り裂く。


「――ハァァァッ!!」


 止むことなく、切り刻み続けるッ!!


「ハアハア――今だよ!!」


 一斉攻撃が巨蛇へと襲い掛かり、肉片の大部分が消失……やがて、再生する気配も無くなった。


「……太陽が」

  

 日蝕が終わり、強い陽射しが私達を照らす。



『と、突発クエスト・波乱の渡河の旅へ――終了だッ!!』



 観測者の悔しげな声……どっかで聞いたことある気がする。



◇◇◇



『……クソ――またあの女!! あの女が!! ユイが、私の計画をぉぉぉぉッ!!』


 運良くターゲットのユイと、仲違いにちょうど良いと見ていた鹿娘にピエロ女まで巻き込めたというのに!!


『……どこまで私をコケにすれば気が済むのだ、ジャップのクソ雌がぁぁッ!!』


 第三ステージといい、第四ステージといい!!


『……次だ。次こそは……』


 次の私の担当ステージで、今度こそあの生意気な小娘ジャップをぶち殺してやるッ!! このセルゲイ様がなぁぁッッ!!



●●●



 クエスト終了後、私達は光に包まれ、どこかの港に転移した様子。


「ここ、いったいどこ?」


 ナオさんの疑問。


「“渡河船”の到着先だ。この遺跡は安全エリア扱いだよ」


 セリーヌさんが教えてくれる。


「そういえばセリーヌさんて、六十ステージより先まで進んでたんでしたね」


「……まあな」


 その先で一度死んだんですし、心境は複雑ですか。


「……どこ、ここ?」


  ハユタタさんが目を覚ます。


「おはよう、ハユタタ。もう昼だけれど」

「おはようございます、ハユタタさん」


 ネロさんとエレジーさん、なんだか距離感が縮んだみたい。


「お、おはよう? あれ、祭壇は? て、あの塔に付いてるのってボス扉……?」


 まだ、だいぶ混乱しているみたい。


「ハユタタさん、丸二日ぶりですね」


 手を差し出す。


「丸二日? なに言ってんの、ツグミ?」


「この様子……もしかしてハユタタって、クエストの最初から水槽に閉じ込められてたのか?」

「そうみたいですね」


 セリーヌさんに同意する。


「え、水槽って何よ? ねー! 私になにがあったのか教えなさいよ!」


「まあまあ。先に“神秘の館”に戻って、私達の安否を伝えましょう。皆さんきっと、心配しているはずですから」


 クマムさんに押し切られる形で、私達は久し振りの我が家へと帰還した。


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