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80.スキルキラー

 巨大な黒いヒルが、天井からボタボタと落ちてくる!


「”煉獄魔法”、インフェルノ!」

「”紅蓮魔法”、クリムゾンフレア!」


 頭上のヒルをユリカが焼き払い、地面に落ちたヒルはメルシュが焼却してくれる。


 この”吸血ヒル”は火属性が苦手らしい。


 だったら、なんで氷特化の私を入れた!


 ヒル気持ち悪いし、ジュリー達と一緒が良かったよ~。


「ナオ、ちゃんと付いてこないと危ないよ?」

「う、うん……」


 メルシュの忠告に感謝。


「ユイはなんともないの?」

「……なにが?」


 あ、この子、全然気にしてない。


「あ、出た。ユイ、ナオ、お願い!」


「うっ!!」


 派手なオレンジ色の体色を持つ、痩せ細った男のようなモンスター。


 頭は、たらこ唇の魚のよう。


「あれが”チュパカブラ”か」


 確か、奴の攻撃方法は――。


『ギエーーー!!』


 舌を伸ばして、先端のぶっとい針を突き刺す!


「――ハッ!」


 ビュルリと高速で迫ってきた舌を、ユイが抜刀と同時に切り裂いた!


 これが、日本の居合いってやつ?


「ナオさん」

「ああ、ごめん! アイスカノン!」


 舌を無くして苦しむチュパカブラに、氷の杭を叩き込んだ。


「あうぅ……ごめんね」


 生きてるわけじゃないって分かってても、生物に怪我させるって抵抗あるなー。


 始まりの村に辿り着いたとき、モンスターを殺すのが嫌で……五日間なにもせずに奴隷堕ち。


 本当、私ってバッカみたい!


「また来ますよ!」


 メルシュの声に確認すると、最初のチュパカブラが倒されたのが合図だったみたいに、ぞろぞろと別のチュパカブラが!


「私に任せて!」


 無理言って同行させてもらってるんだから、活躍しなきゃ!


「”氷塊魔法”、アイシクルバレット!」


 チュパカブラ共を串刺しにしていく。


「フッフッフ、どうよ!」


 あっという間に全滅! 私が本気を出せばこんなもんよ!


 年長者の威厳、見せられたかしら♪


「さっさと進まないと、またヒルに囲まれるよ?」


「あ、ちょっと待って!」


 皆の反応、薄くない? リョウ達ならもっとなにか言ってくれるのに!

 

 メルシュ達が、私を置いてさっさと進もうとした時だった。


 ――ボトッて、なにかが私の背中に乗ったのは。



「イヤーーーーーーーーーーッッッッkjkjっsfg!!!?」




●●●




「お父さん、どこ行くの?」

「アクァッホの蛮行を止めるため、俺は戦わねばならない。じゃあな、ノーザン。叔父さんの言うことを、よく聞くんだぞ」



 そういって頭を撫で、父は僕の前から去って行った。


 僕のお母さんは、僕を産んでまもなく死んだ。


 だから、僕の親はお父さんだけという認識が強い。


 獣人ではなかったお父さん。別の世界から来た、日高見の方々の末裔。


 龍の意を持つ者に敬意を。


 それが、僕達の祖先が日高見の方々に対して抱いた想いであり、これまで伝え続けてきた教え。


 神々に、愛される資質を持った方々。


 アクァッホの血を色濃く受け継ぐ者達によって、死の遊戯に参加させられた日高見の方々を守るため、お父さんはアクァッホに戦いを挑んだんだ。


 日高見の血を引く、お父さんは。


 ――頭が、ボーッとする。


「……お父さん?」


 僕は、縋るようになにかを掴んでいた。


 お父さんに、よく似た手を。


「おはよう、ノーザン」

「…………コセ!」


 自分が誰の手を握っているのかを理解した瞬間、慌てて立ち上がり、飛び退く!


「おい、急に動いて大丈夫か?」


 頭が、クラクラしてきた……。


「ヒール」


 温かい光が、僕を包み込む。


「……どうも」


 ()()()()()()()()()()()()()()に、助けられるなんて!


「歩くのが問題無ければこのまま進もうと思うんだけれど、どうかな? この先暫くは、一対一の戦いしか無いし」


「大丈夫です」


 この人が分からない。


 変に優しくもないし、乱暴というわけでもない。個性とも言えるクセのような物を、この人からは感じられない。


 歪さがとても薄い。


 そのせいで、この人の人としての在り方がよく分からないんだ。


 理解出来ない者は理解出来ないと感じ取れるのに、この人の場合、なにが理解出来ないと思わせるのかが理解出来ない。


 こんなの……初めてだ。



●●●



「”法喰い”!」


 シレイアが”法喰いのメタルクラブ”を使い、銀甲冑の騎士、マジックナイトが放った魔法を消し去る。


「”狂血剣術”、ブラッドスラッシュ!!」


 突発クエストで手に入れたサブ職業を使い、赤黒い血を纏った”アマゾネスの大刀”が、マジックナイトを切り裂いた。


「ちょいと楽勝過ぎるね、コイツは」


 長い黒髪と大きなバストを振りながら、踵を返すシレイア。


 マジックナイトを倒したことで、奥の扉が開く。


「”エレメンタルソード”、Bランクだね。要るかい、現マイマスター?」

「いや、要らない」


 ドロップアイテムをくれようとするけれど、遠慮した。


 メルシュのおかげでAランクの武器が手に入ったばかりだし、細剣タイプは俺には合わないしな。


「まあ、魔法使い向けの武器だしね」

「じゃあ、次は俺だな」


 扉の向こうへと進み、マジックナイトやゴルドソルジャーと戦った場所とよく似た部屋に出る。


 次の一騎打ちの相手は……筋骨隆々でありながら細身を思わせる、黒褐色の肌に銀髪の戦士。


「凄いね。二番を引き当てたと思ったら、今度は一番の強敵を引き当てるなんてさ」


 シレイアの言葉に、敵の正体を察する。


「コイツが……”スキルキラー”」


 あらゆるスキル攻撃が効かない敵。


「気を付けなよ、マスター。スキルキラーはスキルを使ってこない分、身体能力がずば抜けてるからさ」


「ああ……うん」


 コイツ相手だと、メルシュのプレゼントは意味を成さないな。


 チョイスプレートでYESを選択し、部屋の中心部へ。



○スキルキラーが使用する、武器ランクを設定出来ます。


      A級  B級  C級 



 スキルを使ってこないなら、武器ランクでかなり難易度が変わりそうだ。


「ここで、Aを選ばないわけにはいかないよな」


 選択を終えると、金の刃持つ赤紫色の毒々しい大剣が、スキルキラーの右手に握られる。


「”ヴェノムキャリバー”、”猛毒”の剣だ! 触れるとヤバいよ!」


 猛毒!? 状態異常を防ぐ装備やスキルなんて無いのに!


 使う武器はランダムなため、対策のしようが無かった。


 スキルキラーが身を屈め、剣を振りかぶる!


 曲げられた左脚をバネに――一気に距離を詰めて来た!!


「”瞬足”!」


 横に飛んでスキルキラーのこうげきを回避――と思いきや、剣は振り下ろさずに右脚で方向転換――すぐに接近してきた!?


「ハッ!!」


 気合いの声を上げ、”強者のグレートソード”で”ヴェノムキャリバー”を受け止める!


「く……ぐッ!」


 膂力じゃ……勝てないぃッ。


「ハルマゲドンは使わないのかい、マスター?」


「アレに……頼りたくないッ!」


 この前の突発クエストの時、”滅剣ハルマゲドン”を使っていれば、安全にデスアーマーを倒せたかもしれない。


 でも、普段から頼っていたら、いざという時に力を発揮出来なくなりそうで怖い!


 アレは、本当に危ないときのための切り札として使う! そう決めたんだ!


 ”強者のグレートソード”を構え、剣先に神経を研ぎ澄ませていく。


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