表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
829/956

772.動乱の渡河船

「面倒だな」


 NPCとモンスターの乱戦になっていて、魔法などの広範囲攻撃による一掃ができない。


 とはいえ、チンタラなんてしていられない!


「――“妖精の戯れ”」


 ユニークスキル、“悪戯妖精”の能力を行使し、火を司る赤、水を司る青、雷を司る黄色、風を司る緑色の半透明な妖精を呼び出す。


 それぞれが上級の単一属性魔法を操る奴等で、規模の小さい攻撃で“アポピスの雑兵”共を始末してくれる。


「コイツら、一体一体が頑丈だな」


 ツグミも、いつもの“エロスハート”によるごり押しが出来ないから、黒い凹凸のある棒、“ディフェクティブクラブ”と“竜殺しの鎚矛”で戦ってるし。


「七人ミサキ」


 指輪から呼び出した亡霊七体に、この場を任せて別の喧騒の方へ。


 ――船が大きく揺れる!


「……なにあれ?」


 黒い巨大なワーム? みたいなのが、船に体当たりしている!


「あっちは私が! “万雷砲”、“連射”!!」


 ツグミに任せるべきだろうけれど、私達ペアは十メートル以上離れられないから、私も実質ここから動けない。


「あんま使いたくなかったけれど――“古代兵装/四枚盾フェルミオン砲台”!!」


 盾と二つの発射口が付いた浮遊砲台を四つ、この場に顕現。


挿絵(By みてみん)


「行け!!」


 頭のイメージで四台を操り、一発でTP60を消費する砲撃を繰り出していく。


「このマルチタスクを強要されてる感じ、苦手なのに」


 頭がおかしくなりそうな感覚に襲われる。


「……そうだ」


 コセさん♡は、共鳴精錬を成功させるために、敢えて神代文字を刻んでいた。だったら!


 ――鎧、“神秘は秘奥であるが故に”に九文字刻む。


「……おお」


 頭が程よくクリアになって、複雑な思考の練りが手脚を動かすように出来る。


「残り時間は、四十分て所か」


 頼んだわよ、エレジー達。



○生贄数127/444。




●●●



「“太刀風”――“飛剣・靈光”!!」


 スキルの重ねがけ強化状態で放った斬撃で、問題なく“アポピスの雑兵”三匹を始末。


「“幻影肩腕”――装備セット3」


挿絵(By みてみん)


 幻の腕に持たせた“精気食らいの大妖刀”と“アマゾネスの大刀”を的確に振るわせながら、自身は弓を引くシレイアさん。


 あんな器用な真似、どんな才能があっても人間に出来る芸当とは思えない……。


「雑兵だけじゃないみたいだね」


 シレイアさんの前に、変異した船長と同じ姿の敵が。


「私がやろうか?」

「マスターは、アポピス戦まで力を温存しときな」


 “アポピスの戦士”と、剣を打ち合わせるシレイアさん。


「“威風剣術”、プレステージブレイク。“古代剣術”、オールドブレイク」


 致命打にはなっていない物の、確実に敵の戦闘力を削ぐ戦い方。


「“古代弓術”――オールドブレイズ」


 至近距離から頭を打ち抜き、息の根を止めた。


「アポピスの奴等は再生能力が高いからね。一気に畳み掛けるのがコツだよ、マスター」


「ああ……うん」


 アポピスと戦う時は、こうしろってこと?



●●●



「お掃除完了です!」


 “マキシマム・ガンマレイレーザ”の“光線支配”で、あっという間に二番区のモンスターを殲滅してしまうリエリア。


「SSランクか……私も、一つ欲しくなって来たわね」


 “マッスルハート”をコセに渡してしまったのが、今更ながら惜しくなってくる。


 まあ、私が持っててもメグミのようには使いこなせなかっただろうけど。


「ミキコさんも、精錬剣を作れば良いのでは?」

「あのエセSSランクか」


 とはいえ、私はまだ九文字しか刻めないし……コセの奴と繋がるっていうのは……。


「て、今はそんな話をしてる場合じゃなかったわね。ここは片付いたし、手が足りない三番区の方へ――」


 空から大量の気配!!


「またアポピス系か」


 鱗の生えた大量の黒コウモリが、一斉に降下し始めた。



○○○



「こっちです!」


 ハルバードで敵を薙ぎ払いながら、“袖振り合うも”で感じる方へと進み続ける。


「ノーザン、この方向って!」

「ハユタタさんが居た場所ですね」


 ナオさん達には心当たりが?


「エレジー、ネロ、この連結部の後方に窓があるから、そこからハユタタの居る場所に出られるわ」

「お二人は?」

「僕たちは、一番区のモンスターを片付けに行きます!」

「分かりました!」


 ネロと共に、ナオさんが言っていた窓を見付け、そこから一番区の内部に侵入。


「……エレジー、さっきはありがとう」

「なにがですか?」


 礼を言われるようなこと、ありましたっけ?


「まあ、分かんないなら別に良いし」


 なんかいじけてる?


「ほら、行くよ」


 ネロがドアを開けた瞬間――鋭い指が襲い掛かって来た!


「“霊化”」


 身体を透かせてやり過ごすネロ!


「“影鰐・六重”」


『“閃光魔法”――フラッシュボール!!』


 強烈な光に、ネロの影鰐が消される!?


「へー、対策してたんだ」


『黙れ!!』


 蛇の下半身を、ハユタタさんの居る水槽に巻き付けている?


「そんなに他人の肉体が欲しいわけ? 浅ましいわね」


 清々しいまでの悪辣ムーブをするネロ。


『お前に殺されたから、私達はッ!!』


 荒ぶるままに攻撃してくる、ニシィーさんだった何か。


「暴風脚!!」


 その顔面に蹴りを食らわせようとするも、防がれてしまった。


『クソぉぉッ!!』


 “死者の書”を開いた?


『“水流弾”! “邪悪魔法”、ウィケッドランサー!!』


 この狭い場所で手数による攻め!!


「“暴乱惨禍”!!」

「“鉄球魔法”、メタルクラッシュシェルター!」


『ハハハハハハッ!! このまま残り三十分持ち堪えれば、このゲームは私の勝ちよ!』


 MPが尽きないのか、この攻撃の手が緩む気配が無い。


「……終わらせましょう、ニシィー」


 “暴風は惨禍を撒き散らす”に、私の今の在り方が吸い込まれていくみたいに――自然に十二文字が刻まれ、“暴風惨禍は暴虐を刻みつける”へと至る。


挿絵(By みてみん)


「――“暴虐惨禍”」


 一回り大きくなった黒緑のハルバードの槍部分から、黒い暴虐の竜巻を放つ!!


『ま、“魔力障壁”ッ!!』


 防がれはしたものの、果たしていつまで持つか。


『あ、頭逝かれてんの!? この人魚も一緒に死ぬわよ!?』


「ああ、だからそこに張り付いてたんですか」


 大事な肉体でありながら、私達の盾にするために。


「その水槽、壊そうとしても壊せなかったって聞きましたけれど?」

『クッ!?』


 破壊出来る可能性も考えて、念のため神代文字を消してから仕掛けたんですけれどね。


『え、エレジー……ねー、私達、仲間でしょう? 同じ人を好きになった……』



「裏切り者呼ばわりしてくる相手が、仲間なんですか?」



『――このクソビッチ女がぁぁッッ!!!!』


「ギャーギャー煩いっての」


 私に気をとられていたニシィーの喉に、ネロの紅の太刀が突き刺さった。


おまけ

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ