表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
823/956

766.突発クエスト・波乱の渡河の旅へ

「……なんか、猫の置物が多いな」


 湾港を散策しながら漏れた言葉。


「そうだね」


 メルシュの返しが、なんか冷たい。


「“砂卵”! “砂卵”は要らないかー!」

「“砂卵”?」

10000(一万)Gで買える消費アイテムです。その卵をぶつけてモンスターを倒した場合、そのモンスターと同じランクのアイテムが手に入ります。比率的に、砂漠系統に偏っているようですが」


 ナターシャが教えてくれる。


「トドメに使えない場合、使い損になるけれどね」

「“砂卵”そのものの攻撃力はあまり無いので、成功率は低いかと」


 言外に買うなって言われている気がするんですけど……。


「はい、やめておきます」


 などの会話をしながら訪れたのは、入り組んだ裏路地の怪しい店。


「いらっしゃい」


 店主の老婆……少し横にも縦にもデカい。


「今日の品揃えを見せて」

「はいはい、どうぞー」


 ズラリと空中に出現する、数々のアイテム。


 サブ職業メダル、スキルカード、鎧や槍……随分と品に統一性が無いな。


「ナターシャ、ここってなんの店なんだ?」


「墓荒らしによる盗掘品という設定ですが、ここはプレーヤーが過去に様々な店で売り払ったアイテムを買える場所です。SSランクやユニークスキルなどは、さすがに購入できませんが。品は日替わりです」


「それだと、大した物は無さそうだな」


「金策のために、高ランクアイテムを売る可能性はあるんじゃないかね~」


 シューラの意見。


「そういえば、豪奢系の武具もあるな」

「一律100000(十万)Gですので、高く売れる物を買って金策に当てる事も可能ですが、一人三つまでしか買うことができません。奴隷扱いである者にも買う権利がございませんので、この中で買えるのはユウダイ様とシューラ様だけですね」


 そう上手い話はないか。


「だから、後で他の面子にも来て貰う予定だけれど……やっぱり、あんまり良いのは無いね」


 と言いつつ、十以上選んで見せてくるメルシュ。


「お、“ディグレイド・リップオフ”!」

 

 メルシュが選んだ中に一つ!


「この中から選んで欲しいんだけれど、他のお勧めはこのスキルカード」


 メルシュがトゥスカに差し出した?

 

「私に?」


「“煌々たる雲海の黄昏”。かなり便利だよ」

「よし、ソイツはアタシが買ってやろう!」

 

 他四つは、“随行のグリップ”、“暗黒の卓越者”、“シュメルの指輪”、“守護神/果心居士(かしんこじ)”を選んだ。



●●●



 クエストが始まってから、これといった事もなく夜になってしまう。


「なんか久しぶりね、こうして二人で動くのも」


 同じ部屋に泊まる事になったノーザンに声を掛ける。


「第四ステージ以来ですか、ナオさん」


 相変わらず、微妙に壁を感じる。


「ギルマンやワニモンスターが乗り込んで来たのを撃退した後は、本当に何も起きませんね」

「まあ、この一番区船だけでも広いからね。中央の二番区船と左の三番区船で何か起きてても気付きようがないし」


 まだ一日と半日以上ある。事件が表面化するのは、まだまだこれからって事かな?


「明日は、別の番区に行ってみましょう」

「そうね――なに!?」


 船が大きく揺れる!


「……収まった?」

「念のため、交代で寝ましょう」

「その方が良さそうね」


 風通しの良い、高い場所にある宿泊部屋で、ノーザンが先に眠りについた。



●●●



「おーい、起きろ。エレジー」


 ネロの声?


「……あれ?」


 身体が動かない!?


「……どういう状況?」


 クエストに巻き込まれたと思われていた面子が、縛り上げられた状態でこの広間に座らされてる!?


「寝室で見張ってたら、一瞬で縛られた状態でここに居たのよ、私達」


 ネロに説明された。



「私はこの“渡河船”の船長、アフマド! 賊共、貴様らには昨夜の事件の嫌疑が掛けられている!」



 部屋の奥に腰掛かる頭の悪そうなデブ男が、偉そうに叫ぶ。


「……なんのこと?」


 同じく、縛られているユイさんが尋ねる。


「昨夜、二番区の船底が大型の“ギガカンディルワーム”によって食い破られる事件が発生した。現場の状況から、何者かによって船底に設置されていた魔物除けが破壊されていた事が発覚。その容疑が貴様ら余所者に掛かっているというわけだ!」


 偉そうな男の側近らしき男が、ヒステリック気味にまくし立てる。


 これが、解決しなければならない事件というやつなんですね。


「実際、船底から逃げる人影を一つ、見たという者が居る」

「余所者のお前達の中に犯人が居ることは間違いない。素直に罪を認めよ!」


 ……推理がガバガバすぎません?


「犯人が特定できていないうえに、犯人は一人と決めつけているようですが……余所者の仕業である証拠でもあるのですか?」


 ……NPCだからか、私の質問が無視される。


「名乗りでんか、チ! 我々も暇ではない。貴様ら、自分達の身の潔白を証明したくば、真犯人を捕らえよ! ただし、期限は明日の正午まで。それまで、この者の身柄はこちらで預かる!」


 偉そうな男が指を振るうと、ハユタタさんが男の傍へと勝手に引き寄せられた!?


「ちょ、私は人質ってこと!?」

「正午までに真犯人を捕らえて連れて来い! できなければ、貴様ら全員を死刑とする!」


 滅茶苦茶だ……――チョイスプレートが出現した?



○ネロをパートナーに、二人で真犯人を探し出せ。


○パートナー同士は、お互いに十メートル以上離れられない。



 パートナーって……これ、強制的に組まされてる!?


「では、とっとと私の屋敷から出て行け!!」


 兵士達に連れて行かれた先は、二番区の中心にあった大きな屋敷の真ん前。


 勝手にロープが消え、ようやく自由の身に。


「ハユタタさんが人質に……早く、真犯人を見付けないと」


「強制的にパートナーを決められた以上、二人一組で動くしかないね~」


 ツグミさんとシレイアさんの会話。


 自然とパートナーの隣に移動したのか、ユイさんとシレイアさん、ツグミさんとセリーヌさん、リエリアさんとミキコさん、ノーザンさんとナオさん、クマムさんとナノカさんペアに別れる。


「昨日、一緒に行動した相手がパートナーになってるのかしら?」


 ミキコさんの言葉。


「むしろ、転移の時点で意図的に一緒にさせてたとか?」


 ナオさんのその言葉は、ミキコさんの言葉の肯定。


 誰も異を唱えない辺り、ミキコさんの予想は当たっていたらしい。


「手掛かりが何もねぇし、取り敢えずバラバラに行動して情報を集めるか」


 セリーヌさんの提案に従い、私達は最初に転移した番区へと戻って、事件の調査を開始した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ