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764.魔神・隕鉄巨兵

「第五十一ステージのボスは、魔神・隕鉄巨兵。弱点属性は水。有効武器は鎚。危険攻撃は、腕を飛ばしてくるロケットパンチ。ならぬ“拳腕噴射”」


 ボス部屋とやらの前で、以前のように参謀メルシュの講義。


「ステージギミックは、隕鉄でできた腕が周囲に生まれて、次々と襲ってくる事だよ」


 説明が終わったのか、最初に不思議ちゃん女、ツグミのパーティーと清楚レベルカンスト女、クマムのパーティーがボス部屋へ。


「メグミ、身体は問題ないか?」

「だから大丈夫だって言ってるだろ、コセ」


 ハーレム野郎は、一応の気遣いができる人間らしい。本性は判らんが……さっき、何故か妖精にお供えしていたし。


 朝食前の巨人戦で倒れたらしいメグミを気遣い、我々は正午頃にボス戦に挑む事に。


「エトラ、あの男は本当に強いのか?」


 私に対して、珍しく忌避感の無い同胞に尋ねる。


「……まあ」

「煮え切らないな」

「戦っている所を見たことないわけじゃないけれど、強敵らしい強敵と戦っている所を見た覚えがなくてね」


 パーティーごとに進むとなれば、別パーティーの我々は他パーティーの活躍の場を目にする機会はまず無いしな。


「モーヴ。サトミ達と一緒にボス戦に挑むけれど、巨人戦と同じく、モーヴが主体でトドメを刺すように」


 私のご主人様からの無茶ぶり。


「Lvを上げるためだ、仕方ない」


 この数日で七十を超えた物の、この集団の平均Lvは九十越え。


 私だって、一人だけ劣っているなんて許せるか!


 前の二パーティーがボス戦を終えたらしい。


「“ツインリーダー”のサブ職業、付けたよ」

「コトリから私に、パーティー申請を頼む」


 よく分からないが、ああやって二パーティーを一つのパーティー扱いにするのか……やはり判らん。


 十三人と人形二体と共に、ボス部屋へ。


 奥で、くすんだブラウンのライン光が走る。


 これで、二度目のボス戦か。


「私とクレーレでモーヴの援護をする。皆は自分の身を守ってて」


 コトリのパーティーは、だいぶ消耗しているらしいな。特にケルフェ。


「全力で行くぞ!」


 十五メートルはありそうな巨人が立ち上がると同時に――“この重圧に堪えきれるか”に三文字刻んで駆け出す!


『――ガァァーーッ!!』


 跳躍して――拳を打ち下ろしてきた!!


「“重力魔法”――グラビティーベクトル!!」


 間一髪、拳が落ちる位置を手前にずらせたな。


「“雷支配”」


 ジュリーによる雷の雨。


「“跳躍”――“氾濫鎚術”、リバーブレイク!!」


 雷が止んだ直後、頭部分に“この重圧に堪えきれるか”を叩き込む!


 罅は入ったが、デカくてどんだけダメージ入ったのか判んねぇ。


「来るよ!!」


 ジュリーの言うとおり、ステージギミックとやらの巨腕が虚空に出現し始めた。


「――“悪魔支配”」


 真っ黒なキモい蛇やら大コウモリが大量に現れ、隕鉄の拳とやらを封じてくれる。


 嫌でも経験の差を、潜った修羅場の差を思い知らされている気分だ。


「やってやる! “水属性付与”!」


 “この重圧に堪えきれるか”に水属性を加える!


「ハイパワーカウンター!! ――ハイパワーブレイク!!」


 起き上がった魔神の蹴りを盾で発動した武術で跳ね返し、落ちてきた頭に別の武術を叩き込む!


「ハァー、ハァー」


 いつの間にか六文字刻まれて……凄えパワーだks3vh。


「……やば」


 意識が飛びそうだ……ジュリーやクレーレは、当たり前のように倍以上の文字を使いこなしてるってのに。


「モーヴ!!」


 後退した魔神が、腕を高速で――危険攻撃の“拳腕噴射”ってやつか!!


「――ハイパワーカウンターッ!!」


 シビアなタイミングの見極め、なんとか上手くいった!


「“天賦覚醒”を使う前に決めて、モーヴ!!」

「――装備セット2!!」


 魔神・隕鉄巨兵が仰け反っている間に、鎧の右手甲の部分に黒い機械筒――Sランクの“重力重砲”を出現させ、構える!!


「これは……」


 私はまだできない、神代文字の力を流し込んで強化するっていう……ジュリーにクレーレ、コトリのパーティーメンバーもか。


 理由があるとはいえ、私に花を持たせようなんて奴等がこんなに居るとか――奴隷としてこの世界に連れて来られたこと、悪くなかったのかもな。


挿絵(By みてみん)



「“稼働”――“重力砲”ッ!!」



 “稼働”させる事で威力が更に上昇した“重力砲”が、魔神・隕鉄巨人の胸なのか顔なのかよく判らん部分に直撃――ぶち抜いて四肢を散乱させる!!


「ハァー、ハァー、ハァー、ハァー」


 他人の文字の力を受け取るだけで、こんなにも精神が持っていかれるものなのかよ、神代文字ってのは……。


「大丈夫か、モーヴ?」

「そこは……よくやったって言ってくれよ、ご主人様」


 なにを言ってるんだ、私は?



○おめでとうございます。魔神・隕鉄巨兵の討伐に成功しました。


○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。


★隕鉄巨兵の石甲 ★サブ職業:隕鉄武術使い

★拳腕噴射のスキルカード ★隕鉄の腕の指輪



「私は何を選べばいい? リーダー」

「私が決めて良いの?」


 魔神・竜殺しの時、お前が選んだだろうが。


「欲しいのが無いなら魔神装備だけれど、地味に希少な“拳腕噴射のスキルカード”を選んで貰っても良い?」


「ああ」


 さっさと選ぶ。


「……モーヴ」

「うん?」


 ジュリーがチョイスプレートを操作した直後、私の胸の辺りが光って消えた?


「……なにをした?」

「奴隷から解放しただけだよ」


 解放って――


「……私はお役御免てわけだ」

「へ、なんで?」


 心底、不思議そうなジュリー。


「奴隷から解放ってことは、要らないって事だろう?」

「モーヴは信用できそうだと思ってたから、そろそろ契約を解除しても良いと思っただけだけれど?」

「そう……なのか……」


 私を、信用云々で自由の身に……そっか。


「そうなんだ……」


 コイツらは私を、人間扱い……してくれるのか。


「モーヴ、泣いてるの?」

「アウ?」


 チビ共に気付かれてしまった。


「ちょっとな。クレーレ、サポートありがとよ。ジュリーも……その、助かった」


「――でしょ、モーヴ姉!」

「どういたしまして」


 私なんかに礼を言われて嬉しそうにしやがってよ、コイツら! 嬉しいじゃねぇか!



○これより、第五十二ステージの【黄河の湾港】に転移します。



おまけ

挿絵(By みてみん)

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