763.岩石の巨人と一つ目巨人
「打ち込み続けよ――“雄偉なる鏡面の一意専心”!!」
偽物の“レギオン・カウンターフィット”を媒介に、私の精錬剣を構築!
「“随伴の鏡面”!!」
円形の鏡を作り出し、太陽光を収束――巨大なレーザーと成して“ウルリクムミ”にぶつける!
「表面が少し熔けただけですか」
“強さ”を選んだ先に現れた、十メートルを超える岩石巨人。
「代わろうか、フミノ?」
レンちゃんがふざけた事を口にする。
「冗談。アレは私の獲物よ」
最近の私、ちょっと肉食系かも。
「“神代の竹刀”、“蜃気楼”――“有象嘘象”!!」
正面から、巨大化した鏡面剣を打ち込む!!
「“鏡面大地剣術”――ミラーサーフィスグランドブレイク!!」
山に叩き付けて衝撃を逃がせない状況から、ゼロ距離で最上位武術を叩き込んだ。
「やりましたね、フミノさん」
イチカちゃんが褒めてくれる。
胸辺りから広がった亀裂を起点に、全身がバラバラとなった“ウルリクムミ”が、天へと還っていく。
直後、この場所が安全エリアへと変わり、黄金の宝箱とポータルが出現。
「宝箱から回収してまいります」
ヘラーシャちゃんが行ってくれる。
「この後は飯食って、魔神戦か。なんか早ーな、五十一ステージ」
「その分、後が恐そうですけれどね」
レンちゃんの言葉に対するチトセさんの台詞。
「冷静に考えろ。砂漠で止むことなくコーンに追い掛けられただろう? バイクなどの高速移動方法とSSランクなんて物があったから、楽々だっただけだぞ」
ヴァンパイアロードのエルザさんの発言。
「まあ、徒歩だったら確かに大変だったかも」
「私は、あの大人数で高速移動したから、あれだけいっぱい“恵みのコーン”が集まったとジュリーさんから聞きましたけれど?」
同意しかけていたチトセさんの横から、冷や水爆弾をぶつけるイチカちゃん。
「そういえば、三十八ステージ? のことをコセさんが前に聞いてきたわね」
私が死んだ場所の事だから、よく覚えてる。
「ああ、霊属性か古代属性魔法を選べるあそこか」
レンちゃんが食い付いた。
「その魔法のスキルカードを受け取ったあと、一本道の大空洞を抜ける場所があったでしょう? そこをどうやって抜けたのかって」
エルザさんがそっぽを向いた?
「それで?」
「私が徒歩でって答えたら、どれくらいのモンスターに襲われたのかって聞かれて、それにも素直に答えたら、なんか少ないとか言ってたわ」
「五十一ステージの“恵みのコーン”と同じですね。人数が多くて速く移動するほど、一度に沢山のモンスターを相手にしないといけなくなるスポットです」
戻ってきたヘラーシャちゃんが断定した。
「……コセの奴、怪しんでたのか」
今、エルザさんから不穏な呟きが……ま、いっか。
○○○
「“強さ”を選んだはずなのに……」
森に現れた一つ目の巨人を囲うように、“グリフォン”が大挙して押し寄せている!?
「“アリマスポイ”。“グリフォン”とは敵対関係にある設定がありますなぁ」
九尾のタマモの言。
「これってさ、待ってれば勝手に巨人を倒してくれたりする?」
コトリの尋ね。
「まあ、理論上は。せやけど――」
「“氾濫槍術”――リバーストライク!!」
「――砂鉄脚!!」
リンカと共に、襲ってきた“グリフォン”を排除する。
「“アリマスポイ”が倒されるまで“グリフォン”が湧くうえ、今みたいにうちらにも襲い掛かってきますえ」
「あの様子だと、あと何時間かかるか判らないわね」
マリナの視線の先では、“アリマスポイ”と“グリフォン”の集団が死闘を繰り広げていた。
「ちなみに、自分達で倒さないと宝箱が出現せんからね」
「「「それを早く言って!」」」
高ランクアイテムを、みすみす逃す手などないのですから!
「そいじゃ、私とマリナがメインで攻めるから、皆はグリフォンを散らして」
「「「「了解」」」」
適当そうでいて分かりやすいコトリの簡潔な指示に、新入りのリンカも即座に動く。
私達がすべきは、コトリとマリナの邪魔をするグリフォンを始末すること。
「“砂鉄磁鞭”!!」
空中を駆けながら鞭で翼を打ち付け、グリフォンを次々と落下死させる。
『キエーッ!!』
「“砂鉄盾術”――アイアンサンドバッシュ!!」
吹き飛ばしたグリフォンを、離れた位置を飛行していたグリフォンにぶつけた。
「少し離れすぎました――か!?」
群れの中に、一回り大きくて色の違う個体が居る!
『グギェーッ!!』
「行かせない!」
マリナを狙った、二回りはデカいグリフォンの足首に砂鉄を巻き付け、九文字刻んだ際の膂力任せに――地面に叩き付けた!
「“瞬足”――“穿孔脚”!!」
超速で落下しながら蹴り抜く――通常の緑グリフォンが、金色のグリフォンの盾に!?
『――グギャーッ!!』
金色グリフォンが、雷を吐き出して来た!!
「“魔力障壁”!!」
防ぎきると同時に、“障壁支配”で“魔力障壁”を射出! 金色グリフォンにぶつける!
「ソレは“ゴルドグリフォン”! “黄金障壁”持ちどす!」
タマモの声……私の周囲のグリフォンの相手をしてくれているんだ。
「了解」
着地すると同時に、前へ!
「砂嵐脚!!」
翼を痛めたのか飛翔する様子は無い物の、その翼を盾にしてきましたか。
「――“砂鉄砲”!!」
砂鉄の奔流を食らわせて根元から左翼を引き千切るも、まだ仕留めきれない。
「――避けて、ケルフェッ!!」
コトリの声――頭上から、巨人の足裏が!?
「――“拒絶領域”ッ!!」
神代文字を流し込んで強化――弾き飛ばせない!?
「――ッ!?」
死に体のゴルドグリフォンが、背後から“拒絶領域”に体当たりを!
「……まず」
地味に、“拒絶領域”の維持が体当たりで難しくなっている……。
「こんな所で……」
ようやく、コセ様の伴侶になれたのに――
「こんな所で――死ねるものですかぁぁッ!!」
左腕の盾、“貫けぬは剛直なる魂のごとく”に十二文字が刻まれ――“貫けぬは剛直なる毅魄の悟得”へ!!
コセ様の雄姿が、私の相棒に宿ったかのような力強さを得た!!
「――ハァァァッッ!!」
強化された神代の力と“障壁支配”の合わせ技で、“拒絶領域”を一気に拡大――巨人、アリマスポイを弾き転ばせる!
『グギギ……』
「いつまでも――ギャーギャーうるさい!! “神代の剣”!!」
“貫けぬは剛直なる毅魄の悟得”の中心から生える刃に、青白い刀身を形成!
「“砂鉄剣術”――アイアンサンドスラッシュ!!」
“ゴルドグリフォン”の首を――切り裂いた。
『『『ギャー!! ギャーッ!!』』』
「邪魔な奴等――」
脚甲の“蹴り飛ばせぬは剛直なる魂のごとし”までも変質し――“蹴り殺せぬは剛直なる毅魄の如し”へ。
「“剛直なる矛盾”――“神代の瞬足駆け”」
盾同様の能力を脚甲で使用――青白い軌跡を残しつつ、グリフォン共を蹴り殺しながら天高くへと駆け上がる!!
「まだ生きてるのか、あの巨人」
なら、借りを返して差し上げましょう!!
「“神代の脚”――――“穿孔脚”!!」
倒れている一つ目巨人の胸を穿ち抜き……絶命させた。
「……フー」
私、いま人格が変わってた? ……“超同調”によるコトリからの影響? それとも……。