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79.牛獣人のノーザン

 早朝、”怪魚の港”を囲む山の麓にやって来た俺達は、さっそく十人で第五ステージのダンジョン入り口である洞窟に入った。


 ……どことなく、今朝から俺を見るナオさんの目が冷たい気がする……なんでだ?


 ノーザンに至っては、常に俺達を警戒しているようでずっと真顔のまま。


 まあ、そういう態度を取られる方が良い顔して近付いてくる奴等よりは信用できるか。


 洞窟を進むこと数分後、三つの別れ道が現れる。



○左:魔獣の野原

○真ん中:戦士の戦場

○右:血に飢えた迷路



「気を付けてな、トゥスカ」

「ご主人様も、お昼に会いましょう」


 トゥスカとキスを交わし、予定通り俺が真ん中の道へと進もうとした時だった。


「コセ」


 名前を呼ばれたので振り返ると――ジュリーに唇同士でキスされた!?


「なんで……」

「私のパパとママは、しょっちゅうしてたからさ♡」


挿絵(By みてみん)


 蠱惑的なジュリーの態度に、ドキッとさせられる!


「なら私も」


 呆けていたら、ユリカにも唇を奪われた!


「お、お前ら」


「「フフフフフ♡」」


 二人とも、この前の突発クエスト辺りから妙に積極的になった気が……。


「……リョウ達の方がマシだったかも。ハァー」


 呆れた様子で、ナオさんが右の洞窟へと進んでいった。



●●●



 フフフフ♡ コセとまた、キスしちゃった♡


「良いな~、ジュリー様」

「タマ、あんまり積極的になるとご主人様は引いてしまうから、程々にね」


 ぐ! 急に冷や水を浴びせられたような気分に!!


 多分、トゥスカがコセの一番の理解者だろうからな。


「き、気を付けないと……出口が見えてきた」


 洞窟の中に、陽光が差し込む。


 暫く歩くと、洞窟の外へと出た。


「色んなモンスターが出て来ましたね」


 ここ、魔獣の平原では、様々な獣型モンスターが襲ってくる。


「それだけ色々な素材が手に入りそうだね。出来るだけたくさん狩っておこう」


 トゥスカと、打ち合わせ通りの会話をする。


 私達三人は、この平原で百種類以上のモンスターを討伐することで手に入るドロップアイテムのため、このルートを選んだ。


 隠れNPCを手に入れるために必要な、特別なアイテム。


 事情を知らないナオとノーザンを、私達のパーティーに入れなかった理由でもある。


「では、私は援護に回ります」


 トゥスカが一歩下がる。


 理由は、トゥスカが私とタマとは別パーティーだからだ。


 トゥスカはコセの奴隷であるため、私達とはパーティーを組めない。


 一度奴隷から解放すると二度と奴隷に出来ないため、トゥスカが拒んだのだ。


 一つのパーティーで百種類以上のモンスターを倒さないと意味が無いため、トゥスカに活躍されると困るのである。


 コセの奴隷でいたい……か。


 理解出来るような、出来ないような。


 まあ、今の私とタマなら、第五ステージのモンスターの大群くらい問題無い!


「やるよ、タマ。トゥスカなんかに、経験値を渡さないようにね」

「はい、ジュリー様!」


「ちょ!?」


 アドリブで険悪さを演出。


 結果的に、さっきのキスが良い布石になった。


「――”魔力砲”!!」


 開始早々、MPを半分消費して数十体まとめて葬り去る。


「”避雷針”、”雷光”」


 ”雷光の甲手”から生まれた雷光を、”避雷針”を発動した状態の”避雷針の魔光剣”に吸わせた。


「――”雷光斬”!」

 

 雷属性の斬撃により、十数体を切り裂く!


 吸わせた雷の威力により、“雷光斬”の威力も変動する。


「”ホロケウカムイ”!」


 青いオーラを纏ったタマが、別方向から押し寄せる魔物の群れへ!


「”逢魔槍術”――オミナスチャージ!!」


 昏いエネルギーを展開した状態でタマが突撃――先頭のネイルグリズリーごと、十体以上のモンスターを紅の槍でバラバラに吹き飛ばす。


 そのまま、モンスターの群れの真上へと跳躍するタマ。


「”咎槍”――セブンジャベリン!」


 ”咎槍”が”投槍術”によって輝き、七つに増えてモンスターの群れの中へ。


 分散させたとはいえ、”ホロケウカムイ”発動状態での”咎槍”を媒介にした発動。


 このステージのモンスターの息の根を止めるには、充分過ぎるほどの威力があった。


 Lvも装備もスキルも、第五ステージではあり得ないくらい充実している。


 相性や特別な条件下でならともかく、突発クエストでも起きない限り、暫くは私達が勝てない敵はいないだろう。



●●●



 緑の甲冑を着た騎士三体が襲ってくる。


「あらよっと!」


 アマゾネスのシレイアが”法喰いのメタルクラブ”で突き飛ばすと、すぐに光に変わっていく。


 弱い。


 ”下級騎士”というモンスターらしいけれど、その名の通りさして強くない。


「代わろうか、シレイア?」

「良いから良いから、ココはアタシに任せな。面倒なのが出たら交代するからさ!」


 コイツ、ずるい!


「とか言っているうちに、見えてきたよ」


 洞窟の空間が広くなると、そこには二メートルを越える黄金の騎士が佇んでいた。


「”ゴルドソルジャー”。魔法ダメージを半減させる、”黄金障壁”を使うモンスターだね。いきなり厄介なのが出るとは。誰が行く?」


 戦士の戦場は、魔法があまり効かない戦士系モンスターと、何度か一騎打ちをしなければならない。


 ちなみに、出て来るモンスターは全部で十三種類居るとか。


 その中でも、メルシュが二番目に厄介だと言っていたのがゴルドソルジャーだった。


「新しい武器を試したいし、俺が行くかな」

「すみません、僕に行かせてください」


 申し出てきたのはノーザン。


「良いのか?」

「僕の武器……強力なのが必要なので」


 一騎打ちルールの場合、相手モンスターはこっちと同じタイプの得物をランダムに使用してくるらしい。


「だからゴルドソルジャーと? 分かってんのかい、アンタ? ゴルドソルジャーの武器は、強力な”黄金の太陽系”シリーズだよ?」

「大丈夫です」


 小柄な女の子が前に進み出て、チョイスプレートを操作し始める。



●●●



「ノーザン。お前はもうすぐ、デルタに連れて行かれる事になるかもしれん。その先で、アクァッホから龍意を持つ者を守れ。それが、お前の使命だ」


「分かりました、叔父さん。必ずや、父を見付け、龍の民を守ってみせます!」


 それから一ヶ月後、僕は英知の街で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 コセ。龍の民の男。


 この男から父の事を聞き出すまでは、死なせるわけにはいかない!


 だが、もし父を手に掛けたのがこの男であれば――殺す。



○ゴルドソルジャーと戦いますか?



 部屋の入り口付近に近付くと、チョイスプレートが出現。


 YESを選択すると、僕の首に黄金の首輪が嵌められた。


 部屋に入ると、ゴルドソルジャーの手に光が集まり、黄金の斧を形成する。


 ゴルドソルジャーは一騎打ちの際、”黄金の太陽系”シリーズの中から近い系統の武器を使用する特徴があるとのこと。


 僕は、トゥスカさんから借りた”古生代の戦斧”を構える。


 ”古代の力”という、防御に優れた力があるらしいSランク武器をあっさり貸してくれるなんて、トゥスカさん達は何を考えているのか。


 いずれ返さねばならない物だから、早く代わりになる武器を手に入れておきたいと思っていた矢先に、コイツは現れた。


『オオオオオオオォォォォォォォォ!!』


 甲冑を着たマントの男が、いきなり踏み込んで来た!


 ――姿勢を低くして横薙ぎを回避し、”古生代の斧”を金色のお腹に打ち付ける!!


「……硬い」


 ろくに傷付きもしない。


「”深淵斧術”――アビスブレイク!」


 すぐに背後に回り込み、一撃を入れる!


 金色のマントが裂けるも、黄金の鎧は多少凹んだだけ。


『”土星斧術”、サタンブレイク!!』

「――ぐあああああッ!!」


 斧そのものは避けたけれど、発生した茶色いマーブル状の衝撃波に吹き飛ばされる!


「く!」


 思ったよりもダメージが少ない……”古代の力”のおかげか。


「フー」


 もっと強く――より苛烈に!


「”悽愴苛烈”」


 ”無名のスキルカード”を使い、”伝統の山村”付近で出たレアモンスター、ボルテージバッファロー倒して手に入れたスキルを使用。


「はあああああッ!!」


 ”瞬足”で踏み込み、”振り抜き”が発動するように身体全体で振るう!


「”深淵斧術”――アビススラッシュ!」


 左脇下から、右腰に掛けて切り裂いた。


 ゴパッ!! と、黄金の血が飛び散る。


 ”悽愴苛烈”の反動で、痛みが身体を苛む!


「ノーザン!!」


 男の緊迫した声!!


『オオオオオッ!! ”土星斧術”――サタンスラッシュ!!』


 ゴルドソルジャーの横薙ぎを、”古生代の戦斧”で受ける!!


「ぐううッ!!」


 痛んだ身体に、衝撃が駆け抜けた!


 手脚の先端が、バラバラになりそうだッ!!


「――”水流弾”!!」


 攻撃に耐えながら、ゴルドソルジャーに水の玉を何度もぶつけ続ける!


「プハッ!! ハアハア、ハアハア」


 ゴルドソルジャーの巨軀がようやく、光に変わっていく。


 あ、危なかった!


「ノーザン! ハイヒール!」

「思ったよりもやるね、アンタ」


 コセとシレイアが近付いて来てなにかを口にしたところで、僕の意識は…………。


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