表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第19章 才能と正義

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

819/956

762.霜の巨人と残虐巨人

「……濃いなー」


 “環境”ルートを進んで間もなく、視界が濃霧に包まれ、近くに居る仲間の姿すら見失いそうになるレベルに。


「……霧の奥に居やがるな。つか、なんか寒いな」


 ザッカルも、巨大で鈍重な何かの存在を感じ取っている。


「霧が邪魔ね」

「私がやる――“精霊魔法”、シルフ!」


 フェルナンダが呼び出した風の精霊が突風を起こし、周囲の霧を吹き飛ばして……が、霧の密度と範囲が凄まじく、さほど遠くまでは見通せない。


「木々のある山脈……ああ、なるほど。私達の相手は“ユミール”か」

「どういう能力だ?」


 断定したフェルナンダに尋ねる。


「アルーシャ」

「はい。霜による地面からの広範囲攻撃に、どんな攻撃も一度だけ塞ぐ“霜の鎧”を使います」


 なんで丸投げした、フェルナンダ?


「霧に紛れて襲ってくるから、実際の強さ以上に厄介なのが“環境”の特徴だ。気を付けろよ」


「お前、自分は戦う気ないのか?」


「私はよく言えば魔法万能型。悪く言えば器用貧乏だ。巨人はデカいだけでも厄介なのに、耐久力が高いからな。なにより、各々がこの霧に対処できないと、ばらけるのも危険だ」


 ――霧の中から、外獣の気配!


「フェルナンダは視界の確保。アルーシャは周囲のモンスターから私達を守ってく――」


 地面から霜の波が迫ってくる!!


「――“極光支配”!!」


 “オーロラ・オーラ・カーテン”の力で生みだした光の壁で、霜の波槍を防ぎ溶かす!

『――ァァアアアアアア!!』


 霧の奥から現れたのは、十五メートルはありそうな氷の巨人。


「……この距離でも届くのか」


 飛行できないと戦いにもならないうえ、霧の対処までしなければならないとは!


「“神代の剣槍”、“跳躍”――“逢魔銛術”、オミナスハープン!!」


 ザッカルが跳び上がり、遠距離攻撃を仕掛けた!


「チ! アレが、“霜の鎧”ってやつか」


 氷壁を一瞬で全身に纏い、ザッカルの攻撃を完全に防いだように見えた。十二文字を刻んだ一撃を。


「つうか、思ったよりデカいな」

「ユミールの全長は二十メートルですから」


 アルーシャの暴露。


「二十メートルはデカすぎでしょう」

「まあ、でも――これで、出し惜しみしている場合じゃないってハッキリしたかな」


 双子が、フェルナンダを見ている?


「装備セット4。おら、持ってけ」


 フェルナンダがアヤナとアオイに渡したのは、偽“レギオン・カウンターフィット”!


「そういう事か」

「ルイーサとザッカルは、力を温存しておきなさい」

「やるよ、姉ちゃん!」


 出るか、コセと双子の精錬剣!



「「重ね羽ばたけ――“開闢光線の水銀鳳凰導”!!」」」


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


「アレ?」


 コセとのじゃないの!?


「一気に決めるわよ、アオイ!」

「オッケー!」


 二人とも、剣に十二文字刻んだ!


「「“神代の剣”」」


「俺の後にやれ! “万悪穿ち”!!」


 ザッカルの放った剣槍が分裂し、“霜の鎧”を使わせて尚かつダメージまで与える!



「「――“水銀光線剣術”、メリクリウス――アトミックスラーッシュッ!!!!」」



 真っ正面から、数十メートルは離れているであろう“ユミール”の、肩から膝まで一刀両断にしてみせた!


「「とどめ――“随伴の水銀光線”!!」


 光と水銀に巨人が食い潰されていく様は、どこか美しくもあった。


「「ハアハア、ハアハア」」


「ハハ……やったな、二人とも」


 消耗して座り込む二人に声を掛ける。


「「おうよ!」」


 二人揃ってのピースサイン……この二人、今までこんなに息ピッタリだったっけ?



○○○



「“強さ”を選んだはずなのに、いきなり巨大な洞窟に変わった時は、“環境”と間違えたのかと思ったけれど」


 目の前には、全長十メートルは優に超える……籠手を身に付けたゴブリン?


「“グレンデル”。見た目よりも遥かに硬い上に、巨人にしては動きが俊敏。特殊な能力がない分、シンプルに強いです」


 ナターシャが情報をくれる。


「更に、通常よりも強化されてるんだったな」


 “偉大なる鬼神の腥風剣”を右手で逆手に持ち、神代文字を限界まで――十二文字刻む!


「――“大地讃頌”!!」


 神代の力で強化し、足元からの攻撃で動きを鈍らせる。


「食らえ!!」


 鬼神の大刀を振り抜き、“鬼神・斬魔”を放つ!!


『――グギャーッッ!!!?』


 籠手で受けられたとはいえ、“鬼神・斬魔”で切り刻まれても……腕が繋がってるとはな。



「写し照らせ――“荒野の秘境に硝子は黄昏れて”」


「……へ?」


挿絵(By みてみん)


 トゥスカが精錬剣を? でも、今の言葉とか名前、俺、知らないんだけれど?


「“随伴の黄昏硝子”」


 夕焼け色の硝子が巨大な杭となり、何本も放たれてグレンデルの身体に突き刺さっていく。


「本当に頑丈なのですね。貫通させるつもりで放ったのに」


 神代文字によるブースト無しとはいえ、あの速度と質量で貫けないのは確かに凄い。


「“ミケカムイ”、“神代の剣”」


 速度重視のカムイを纏って、トゥスカが仕掛けた!


「“爆走”跳躍”」


 ルイーサお得意のノータイム連続発動をトゥスカなりに使い、グレンデルの蹴りつけを回避しつつ――顔の正面を取った!?



「“黄昏硝子剣術”――トワイライトグラススラッシュ!!」



 “グレンデル”が真っ二つにされ……光に換わっていく。


「あの……トゥスカ、その剣て……精錬剣だよな?」

「はい、そうですよ?」


「作ったのか……俺以外の奴と、精錬剣を……」


「ええ。実はこの数日、マリナに協力して貰ってまして」

「マリナ? ……ああ、なるほど」


 硝子要素はマリナだったのか。


「コセが居るからアタシらはSSランクを幾らでも増やせるとはいえ、やっぱり一つは“ディグレイド・リップオフ”があった方が良さそうだね~」


 なんだ? シューラのトゥスカに対するあの視線?


「トゥスカ様が、“ディグレイド・リップオフ”を一つ所有しておきたいと」

「……ああ」


 ナターシャの言葉で、シューラが言っていた意味にようやく思い至る。


「実は、コレは私がこの前、“幼児化”したときに手に入れた物で……」

「良いよ。それはトゥスカが持っていても」


 この前の大規模突発クエストの時、俺は共鳴精錬と“メタモルコピーウェポン”があるのを良いことに、“ディグレイド・リップオフ”は全部、他パーティーに優先させたからな。


「よろしいのですか?」

「この前、それでピンチに陥っちゃった部分もあるし」


 クエスト中、ろくに休めない状況で、同時の共鳴精錬を二日に渡って戦闘に使用した……アレは、我ながら無理をしすぎだった。


「俺達のパーティーが手に入れた分は、次はシューラに渡すか」


 他のパーティーを優先して、自分のパーティーの戦力を整えないなんておかしいもんな。


「それよりもマスター。この前のクエストから――()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


 ――メルシュに痛いところを突かれた。


「……まあな」


 “超同調”の弊害と模造神代文字の影響で、俺はどんどん……刻める最高文字数が減っていっている。


「だから、あの堕剣は使わせたくなかったのに」

「メルシュ様、そこら辺で」

「あの状況を乗り切るには、仕方なかったと思うよ?」


 ナターシャとシューラが庇ってくれるけれど……。


「本当に反省してる……けれど――いざという時は、頼む」


 メルシュに、真摯に訴えかける。


「ぅ! ……私が、どうしてもって判断したときだけだからね」


「惚れた弱みってやつかね。宝箱から回収してくるよ」

 

 巨人を倒した後に出て来た黄金の宝箱に、取りに行ってくれるシューラ。


「ち、違うし……」

「メルシュ様は時々、子供っぽいですね」

「確かに!」

「ちょ、ナターシャにトゥスカまで!」


 微笑ましい雰囲気に包まれる。


「……さあて、どうしたもんかなー」


 久しぶりに、どうにかなる気がしない壁にぶち当たってしまった気がするよ……。



○“グレンデルの残虐籠手”を手に入れました。


○“免許皆伝”×3を手に入れました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ