760.破邪解放
「ウルリクムミは、強くはないけれど硬い。出し惜しみ無しだ余!」
クエストで使ってやれなかった疑似SSランク、“魔神の大石刀”を手に突っ込む余!
「“跳躍”――“魔人武術”、サタニズムブレイカー!!」
大石刀を振り下ろすと同時に魔人のエネルギーを放って、上半身の一部を爆ぜさせる!
「やっぱり硬い余、このデカブツ」
数も一人で二体は相手しないといけないし、ちょっと厄介――リエリアの砲撃で、もう、一体倒された?
「負けてられない余!」
●●●
「“飛龍運河”!!」
“飛龍雲河の細霊剣”の力で雲の大龍を呼び出し、ウルリクムミの一体を拘束。
細霊剣を空へと手放し、代わりに新たな細剣、“メリュジーヌのコリシュマルド”を左手で掴む。
昔、私が宝箱から見付け、リーダーだったミチコさんに半ば奪われたのと同じ剣。
クエストの正式終了直後に手に入れていたことから、ミチコさんが持っていた物で間違いないと思う。
「――“水妖竜穿”」
“メリュジーヌのコリシュマルド”の能力で、水・竜属性、妖精系統の水の渦を纏わせる。
「“竜巻噴射”――“天使の翼”!」
別個体のウルリクムミの踏みつけを、足裏からの噴射で回避――羽毛の翼でバランスを取りつつ滑空!!
「“天使剣術”――エンジェルプリック!!」
“水妖竜穿”で強化されたコリシュマルドを胸に突き刺し――“共振破壊”で内部から破砕!!
「“氷炎の競演”――“氷炎の情熱華”!!」
「“暴乱惨禍”――ハイパワースラッシュ!!」
ナオさんとエレジーさんも、神代文字無しで一体は始末したみたい。
「……へ?」
“リトル・ウルリクムミ”四体が、ノーザンさん一人を襲っている!?
○○○
「クソ――“獣化”!!」
身体能力を強化し、石巨人四体の猛攻に対して回避に専念!
十二文字刻むどころか、攻勢に転じるのも難しい状況――どうする!
『“水流弾”!!』
逃げながら水の弾丸を次々と当てるも、微々たるダメージしか与えられない!
誰かが加勢に来てくれるまで耐え――そんなんだから、いつまで経っても十二文字刻めないんだ!!
『オールセット2」
“獣化”を解いて、右手の“極寒忍耐の破邪魂”と左手の“極寒の暴虐狂い”に九文字ずつ刻む!
「“ニタイカムイ”!」
スピードと火力で、一体ずつ確実に仕留める!!
「“暴虐狂い”」
“極寒の暴虐狂い”に黒い暴威を纏わせると、時間経過共にTPが吸われていく。
でもその分、次にこの斧で繰り出す攻撃の威力を上昇させるのがこの能力。
「“氷塊魔法”――アイスカノン!!」
足が降りてくる瞬間、その真下に球体状の氷を生成――上手い具合に滑らせて、一体を転ばせた!
「“凄愴苛烈”――“瞬足”!」
正面のウルリクムミの股下をくぐり抜け、すぐにUターン――潜ったのとは別個体に仕掛ける!
「“氷塊投斧術”――アイストマホーク!!」
振り返ってきたのには一瞬焦ったけれど、胸に“暴虐狂い”の斧がめり込み、全身に大きな亀裂を生じさせた!
「“氷塊の鎚盾”――“跳躍”!!」
亀裂ウルリクムミに、瞬時に距離を詰める!
「“氷塊鎚術”――アイスブレイク!!」
刺さっていた“極寒の暴虐狂い”の鎚部分から氷の暴威を叩き込み、まずは一体撃破!!
“凄愴苛烈”を解いた瞬間、ろくに身動きの取れない空中で拳が迫ッ――
「“威風堂々”――威風脚!!」
僕を捉えていた拳が、流れ落ちてきたミキコの蹴りで折れ割れた!?
「コイツは引き受けるから!」
ミキコ……コセ様に無駄に楯突いていけ好かないと思っていたけれど、助けられてしまったか。
空中を“天翔のブーツ”の能力で踏んで方向転換――股を潜った個体に向き直る。
「“氷塊王鎚”、“雷属性付与”――“電磁速射”!!」
“マグネットガントレット”の“電磁速射”で飛ばした雷纏う氷の破綻鎚が、リトル・ウルリクムミの顔面に直撃。仰け反らせる!
今のうちに、立ち上がった個体を狙う!
「“瞬足”――“極寒断ち”!!」
ありったけの神代文字の力を込めた一撃――盾にされた腕を両断したものの、胸部分には僅かにしか届いていない!?
――ウルリクムミの指の先端が直撃して……空を舞う。
僕って……こんな程度なの? お父さん――
「ノーザン。お前が大きくなる前に、この地獄みたいな世界を、俺が終わらせてみせるからな」
居なくなる直前に言っていた別れの言葉……そっか、お父さんは……僕との約束……破ったんだ。
コセ様は、僕が居なくなったら悲しむの……かな?
子供を仕込んで貰うって約束したのに――僕は、約束を破るような人間にはなりたくない!!
「ぁぁ――ぁあああああああああああッッッ!!!!」
奥底の魂が軋みを上げるように、内からこれまで感じたことのない叫びが奔流となって――“極寒忍耐の破邪魂”を、“極寒忍耐魂の破邪解放”へと昇華!!
「“破邪解放”――“獣化”ッ!!」
“破邪解放”の能力で、獣の姿に堕ちきる事無く“獣化”の効果を我が身に適用――ズタズタに引き裂かれた肉とバキバキに折れた骨を、MPと引き換えに再生ッ!!
『「“ニタイカムイ”!! “凄愴苛烈”!!」』
空を踏み締めたのち、“獣化”のデメリットを無視して緑色のオーラを纏うッ!!
『「ガァああああああッッ!!」』
十二文字刻んだ状態の身体能力任せに、“天翔のブーツ”で空を駆け――俺を殴ってくれたクソ石野郎の頭上を取る!!
『「“神代の斧”――――“極寒断ち”ぃッッッ!!」』
気持ちいいくらいに、石コロ野郎の巨体を――ぶった斬ったぁぁッ!!
「ああ?」
俺が腕をぶった斬ってやった石コロ野郎、ビビってんのかぁ? ――舐めてんじゃねぇぞぉぉッッ!!
●●●
「“泥土斧術”――ベリアルスラッシュ!!」
“強さ”のルートに進んだ私達の前に現れた葉っぱ巨人、“グリーン・マン”の左足首を両断!!
“木樵”のサブ職業による植物モンスターへの特効と、九文字分の神代の力で、直径四メートルの足首を綺麗に切断してやった!
「“神代の刀剣”――“吹雪剣術”、ブリザードスラッシュ!!」
「“神代の十文字槍”――“紅蓮槍術”、クリムゾンストライク!!」
「“神代の鞭剣”――“水晶鞭術”、クリスタルウィップブレイド!!」
倒れたグリーン・マンの上から、リューナ、ヒビキ、ノゾミが十二文字刻める武器特有の能力を使い……植物巨人を仕留め終えた。
「……」
手を叩き合う三人。
私が刻める神代文字の数、二十ステージの頃から全然増えてない。
「コセに抱かれたら、私も強くなれんのかなー……」