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758.玉蜀黍の農村

「本当に、一面トウモロコシだらけだな」


 祭壇を下りながら、自然と口に出てしまう。


 広大なトウモロコシ畑の端に、木造の家々がチラホラ。


 その外側は、多少の緑はある物の、半砂漠化しているように見える。


 それにしても、プレーヤーと思われる人間は全然見当たらないな。


「着いたね」


 レギオンメンバー全員が祭壇を下り終えた瞬間、元人間を除く隠れNPC全員が前に出て、横一列に並んだ?



「「「――トウ・モロ・コシ! トウ・モロ・コシ! みーんな大好き、トウ・モロ・コシ!!」」」



 ワイズマンのメルシュ、アマゾネスのシレイア、テイマーのサキ、マクスウェルのフェルナンダ、ドライアドのヨシノ、ヴァンパイアロードのエルザ、ウォーダイナソーのバルバザード、ネレイスのサカナ、魔神子のナノカ、九尾のタマモの十人が、唄いながら一糸乱れぬ動きで、キレのある踊りを続ける。


「「「トウ・モロ・コシ! トウ・モロ・コシ! かーみの恵みー、トウ・モロ・コシ!!」」」

 

 ……いつまで続くんだ、これ?


 結局、華麗で俊敏なヘンテコ踊りは暫く続き、モモカとバニラ、クレーレまで一緒に踊り出してしまうのだった。



           ★



「いやー、ごめんごめん。踊り過ぎちゃった」

「アタシらの遺伝子に刻まれた衝動に、逆らえなかったよ」


 メルシュが謝罪するも、シレイアからよく分からない言い訳が飛び出す。


「さっきのって、隠れNPC限定のイベントか何かじゃないのか?」


「「「いや、全然」」」


 踊った隠れNPC全員で否定してきやがった!


「じゃあ、なんで踊って……いや、やっぱいい」


 堂々巡りになってしまう気がする。


「そういえば、SSランクの“パーマネント・パーパス・コーン”は、NPCのみが装備可能でしたね」


 トゥスカの指摘。


「何か関係あるのか?」


 踊り狂ってた隠れNPC達に尋ねる。


「「「……さあ?」」」


 絶対に何か知ってる! 


「そういえば前に、「トウモロコシだから当然と言えば当然だよ。だってトウモロコシだもん」とか言ってたよな?」


「マスター! お願いだから、それ以上はシー!」


 トウモロコシと隠れNPCに、いったいどんな関係があるんだ?


「ほら、早くこの村のお店を回ろうよ! トウモロコシから作られる“コーンスターチ”とか、“ポップコーン”のレシピだってあるし! トウモロコシがとっても安く売られてるんだよ、このステージ!」

「……仕方ないな」


 誤魔化されてやるか。



●●●



「……本当にトウモロコシ関係以外、何も無いんだな。このステージ」


 村を一通り回ったコセの感想。


「まあね」


 このステージが一番の手抜きって、ネットで叩かれてたっけ。ファンは擁護してたけれど。


「ジュリー。このステージって、何かメリットらしいメリットって無いのか?」


「“トウモロコシ”を加工してできる“バイオエタノール”を、“万能樹液”代わりにできるよ」


 SSランクの“アトリエ・コンポジション”がある限り、レシピの無い調合アイテム以外は幾らでも作れてしまう今となっては……意味無いんだよなぁ……。


 そうでなくても、通常の“万能樹液”よりも材料費が安くなるくらいしか、この村の長所って無いし。


「あとは、この村の周りに出現するモンスター、“恵みのコーン”から貰える経験値が高いって所だね!」


 それも、この前の大量Lvアップの前では霞むけれど。


 幾ら多いと言っても、五十一ステージで90越えじゃ、雀の涙程度の経験値にしかならないし。


「経験値が多いから、恵みって名前なのか?」

「それもあるだろうけど、村周囲の“恵みのコーン”はC~Eランクで、倒したランクと同じランクのアイテムやスキルがランダムに手に入るんだよ。あと“トウモロコシ”も」


 オリジナルだったら、“恵みのコーン”を利用して欲しいスキルや数が必要な低ランクアイテムを揃えるんだけれど、このパチモンのルールだと殺したプレーヤーからアイテムが手に入ってしまうから、あんまり意味が無い。


「じゃあ、頑張ればここで“ディグレイド・リップオフ”を手に入れられるかもしれないのか」

「……あ」


 コセに言われて気付く。


 “ディグレイド・リップオフ”は機械系のステージじゃないと宝箱から滅多に手に入らないけれど、ここに出現する“恵みのコーン”の三分の一はEランク!


「モーヴ!」

「ん、なんだ?」

「今からトウモロコシ狩りに行くよ!」

「はあ?」



●●●



「ハァー、ハァー。急に居なくなったな、トウモロコシ共」


 可愛い顔をした、カートゥーンみたいなトウモロコシ集団が。


 強くはないものの、恐ろしい程の数が止むこと無く出て来る出て来る。


「奴等は、夜は現れ無いから」


 丸一日、食事休憩を取りつつジュリー達に付き合っていたら、いつの間にか真っ暗に。


「メルシュ、“ディグレイド・リップオフ”は幾つ集まった?」

「運良く、三つも手に入ったよ♪」


 俺だけでも数千は倒したのに、レギオンメンバーの半数近くが朝から総当たりして……たった三つ。


「それだけ?」

「運が良いって言ったでしょう? 一体につき一つ、必ずアイテムがドロップするわけじゃないし、Eランク以外のコーンもいたし。そもそも、Eランクアイテムだけでも数百種類はあるんだから、狙った物が三つも出るだけマシだよ」


 納得いくような、いかないような。


「どうします? 滞在ペナルティーが、丸二日以上滞在するとLv1ダウンみたいですけれど?」


 この前のクエストでせっかく上がったLvが下がるのは、正直避けたい。


「明日は朝から昼まで、全員でコーン狩りをしよう。昼過ぎからステージ攻略でどうだろう?」


 ジュリーやメルシュからは、特に異論は無いようだ。



            ★



「朝から頑張って……一つだけ」

「まだ落ち込んでんの、ユウダイ? アンタらしくもない」


 マリナに窘められる。


 大規模突発クエストで皆が経験した出来事を知れば知るほど、“ディグレイド・リップオフ”の重要性が俺の中で増しているっていうのに。


「まあまあ。この後、また幾つか手に入れられるかもしれませんし」


 トゥスカに慰められる!


「ほらほら、出発の準備して」


 各々、バイクや車などの高速移動用の乗り物に乗り込んでいく。


 レールバイクの数が足りて良かった。


「トゥスカ」

「はい」


 いつぞやの時と同様、偉大なる古代竜亀のバイク形態、その後ろに乗り込んで貰う。


「全員、聞こえているか?」


 通信機の周波数が合っているか、確認を取る。


『こちらジュリー、聞こえてる』

『ルイーサ、問題ない』

           :

           :


「よし、出発だ!」


 各々の点呼を終えたのち、俺達は一斉に砂漠へと繰り出した。


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