756.猛威のSSランクと遍く世界
洞窟から森に踏み入れた瞬間、多種多様な大量のモンスターが襲い来る。
「私がやります――“深海支配”!!」
人魚のスゥーシャが、ザッカルから譲り受けたSSランク、“ゲイボルグ・ディープシー”の力を使って一網打尽に。
「見たことないモンスターが結構多いわね」
「一つ目の巨軀がサイクロプス、緑の狼がフォレストウルフ、瘴気を纏っていた骨甲冑がデスストーカー、緑色の大蛇がスカイスネークです。マスター」
ドライアドのヨシノが教えてくれた。
「あの空を泳ぐように落ちてきたやつ、スカイスネークっていうのか」
「私も、初めて見たときは驚きました」
自嘲気味のタマが近付いて来る。
「……スゥーシャ、大丈夫そう?」
「たぶん……ただ、今は見守るしかないと思います」
「……そうね」
目の前でバルンバルンを失ったスゥーシャが思い詰めて居るのは解っているけど、その事に対するスゥーシャの向き合い方、心境までは判らない。
パーティーメンバーとして、タマ達と一緒に見守るくらいしかできないか。
一番辛いときほど私達人間は、独りで立ち向かわなければならないのかもしれないのだから。
●●●
「“発射”!」
樹上から飛び掛かってきたバーバリアンの胸を、機械槍の頬先を射出して仕留めるリンカ。
元々槍使いだったらしく、ハユタタからランクの高い“ギミックジェットジャベリン”を、タマからは“魔術師殺しの槍”を譲り受けたらしい。
「散発的になってきたけれど、気を抜いていられないわね」
槍を持っている姿を見てると、なんか既視感が……。
「なに、マリナ?」
マジマジと見過ぎたか。
「ううん、なんでもない」
「リンカってさ、五十八ステージまでは進んだんだよね? ここも通ったん?」
コトリが話し掛けた。
「そうだけれど、私の時は色んな虫モンスターばかりだったわ。仲間が“殺虫液”を持っていたから、あの時は楽だったけれど」
この数日間で互いの事をある程度話して親交を深めてはきたけれど、何故かリンカ対して警戒心を解けない私が居る。
「私の記憶が確かなら、この森を抜けるまでモンスターが次々と襲ってくる。最大限に警戒しておきなさい」
「元パーティーリーダーだったからか、指示が板についてますね」
ケルフェからの純粋な評価。
「……そうね」
このダンジョン・ザ・チョイスをクリアする気はあるらしいけれど、いまいちリンカがどこに向かってるっていうか……どういう人間なのか掴めないのよね。
●●●
「また来ました――“桜火砲”、“連射”!!」
ユニークスキル、“人工知能”のアイちゃんからの情報で、大量の人獣系モンスターを捕捉。“エロスハート”を生かした無限火力で瞬時に殲滅し終える。
「本当、ツグミが居るとやることないね~♪」
「もう少し真面目にやんなさいよ、ネロ」
ハユタタさんがネロさんを窘めるいつもの光景。
「でも……本当にすることない」
「こらこら、マスター。“人工知能”だって万能じゃないんだよ。例えば――」
ユイさんとシレイアさんが鋭い動きを見せた瞬間、樹上から落下してきたモンスターを切り裂いて仕留めた!
「“ワーキメラ”か」
人獣タイプだけれど、様々な生物の特徴が見られるうえに有翼。
「こんな風に、一度も遭遇してないモンスターは、“人工知能”じゃ捉えられないからね。気を抜いてると本当に死んじまうよ」
「「……はい」」
反省したらしいハユタタさんとネロさん。
「……ツグミさん」
ユイさんが、すぐ傍まで来て話し掛けてきた?
「お願いがある……」
「なんですか?」
かつてないくらい真に迫った空気感……。
「今度、コセさんと一対一でエッチして居るところ見せて」
初夜の時に潜り込もうとしたの、全然反省してないですよ、この人。
「この間、“透明人間”使ってもバレたからって直談判ですか……」
「うん!」
ダメだ、この人。基本的にエッチな事しか考えてない。
「ダメだコイツ」
セリーヌさんからも辛辣な突っ込み。
「セリーヌさんは小柄なのもあって、他の人には無い神秘性があって良い!」
サムズアップするユイさん……。
「……俺、お前と一緒に寝たことあったっけ?」
“透明人間”で潜り込んで覗いたんだ……。
私が気付けるくらいだから、ユウダイさんだってユイさんに気付いてそうなのに……無視してたのかな?
●●●
「……キツい」
「さすがにヤバくないですか?」
ナオさんとミキコさんが弱音を吐く。
「半数が古生代モンスターですからね」
序盤のステージと違って、この森では積極的に襲ってきますし。
古生代モンスターは動きが鈍重なため、今はまだなんとかなってますけど、全然進めない。
「どうすんの、クマム?」
魔神子のナノカに尋ねられる。
「……安全を優先しましょう。リエリアさん」
「はい!」
最近、大人の階段を登ったように元気になったリエリアさんを頼ることにします。
「倒せなくても構いません。“マキシマム・ガンマレイレーザ”で一斉に、古生代モンスターの機動力をできるだけ削いでください」
脚や翼の片方だけでも破壊できれば、鈍重な古生代モンスターは私達に追いつけない。
「動きが鈍った隙に、森を抜けてしまおうということですね。良いと思います」
「神代文字による強化を使えば、倒すことも不可能じゃないかと。僕が協力しますよ」
「では、私も」
牛獣人のノーザンさんと鹿獣人のエレジーさんは賛成と。
「では、直後に私とミキコさんで露払いを。殿はナノカとナオさんで」
力を振り絞るであろう三人には、移動中くらい楽をして貰おう。
「お願いします、リエリアさん」
「分かりました!」
●●●
「オールセット3」
SSランクの“マキシマム・ガンマレイレーザ”を、砲身を真上に向けて地面に置き――左腕の青と黄金の銃、“遍く世界に問い掛けよ”に九文字刻む。
“マキシマム・ガンマレイレーザ”を使うようになってから、“遍く世界に問い掛けよ”を使用する機会がなくなっていた。
でも今なら――コセさんがくれた自信に溢れている今の私なら、スッゴい事ができちゃう気がします!
――“遍く世界に問い掛けよ”に十二文字が刻まれて――“遍く世界に祝福を届けましょう”へと進化!!
「“偏在融合”!!」
生まれ変わった“遍く世界に祝福を届けましょう”を、“マキシマム・ガンマレイレーザ”の引き金部分に同化させます!
「行きます!」
エレジーさんとノーザンさんの神代文字の力が、私の力と溶け合っていく――
「――発射!!」
フルチャージ状態の“マキシマム・ガンマレイレーザ”の一撃を大きく超える青い光線が数十を超える流星となって――目に映る全ての古生代モンスターと、それ以外のモンスターも……全部……消し飛んだ?
「「「「「「…………なにこれ」」」」」」
「…………あれ?」