751.報酬のEXランク
「今朝も見たけれど……色々あるんだな」
解散後、俺はチョイスプレートでSSランク以外の交換一覧を眺めていた。
○以下のEXランクとも交換できます。
☆SS適合の指輪 3000KP
☆ダブルユニークの指輪 5000KP
☆ツインSSランクの腕輪 8000KP
☆世界樹の腕輪 6000KP
☆奴隷神の腕輪 6500KP
☆一攫千金の腕輪 8000KP
☆転移の腕輪 9000KP
☆死後奴隷の腕輪 14000KP
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☆EXグリップ 3000KP
☆EXコーティングスプレー 1500KP
「本当に良かったの? “マス・ホログラフィック”を選んで」
メルシュに尋ねられる。
「便利だからって、自分から言いだしたくせに」
残っていたKPのほとんどを使用し、“SS適合の指輪”と交換。実体化し、機械の甲手と一緒にメルシュに渡す。
「……あ、ありがとう、マスター♡」
我が儘を言った自覚があるのだろう。珍しく奥ゆかしい。
精錬剣を作れず、武器も装備できないメルシュが強力なSSランクを持てるなら、俺としても安心だし。
“マス・ホログラフィック”の性能を聞く限り、NPCでもないと使いこなせなさそうだしな。
本当は、万能装備欄を使って、“フラクタル・カオス”をメルシュに装備させる予定だったけれど。
「良いんですか、本当に貰ってしまって?」
「どう考えても私よりチトセ向きだし。代わりに、これからも薬液プリーズ」
アオイが、チトセに何か渡している?
「コセ、私のパーティーは“アトリエ・コンポジション”を選んだ」
ルイーサが報告に来てくれた。
「アオイの我が儘で選んだのにね。あの子、なんで一癖も二癖もありそうな物ばかり好むんだか」
姉のアヤナが呆れ顔。
「どういうSSランクなんだ?」
「“アトリエ・コンポジション”は、素材消耗無しで調合品を次々と生み出せるSSランク。戦闘向きというには微妙だが、薬液メインのチトセの方が性能を生かせるだろうな」
ルイーサの契約隠れNPC、マクスウェルのフェルナンダの言葉。
「それでチトセに譲ったのか」
チトセの使用人NPCであるヘラーシャも、薬液中心の装備だしな。
イチカのパーティーには、SSランク使いが居なかったし。
「――あ!?」
いきなり叫んだのは、いつも落ち着いているツグミさん。
「ど、どうしたの?」
「すみません、コセさん。選ぼうと思った瞬間、“フリーダム・トゥルーセイヴァー”が取られちゃいました!」
ちょうど誰かが選んじゃったのか。
「残ってるの、申請権を除けば、この“パーマネント・パーパス・コーン”てやつだけだよ?」
ピエロの隠れNPCであるシズカに指摘され、ますます慌てるツグミさん。
「こ、これ以上取られる前に!」
「「あ……」」
シズカとハユタタの二人が、ツグミさんが選んだ物を見て固まっている。
「コーンて、トウモロコシの事でしょう? 何よ、“玉蜀黍支配”って?」
「そのまんまの意味じゃないの? ……硬い玉蜀黍?」
どうやら、本当に“パーマネント・パーパス・コーン”を選んだらしい。
「マスター、どうやら“パーマネント・パーパス・コーン”は、NPCでも装備できるSSランクみたい」
手に入れた事で、メルシュ達NPCがデータを更新したようだ。
「NPCでも? 支配能力があるのに?」
例外は支配能力の無い“レギオン・カウンターフィット”だけだったから、NPCが装備できるとすれば“フリーダム・トゥルーセイヴァー”くらいだと思っていたのに。
「まあ、トウモロコシだから当然と言えば当然だよ。だってトウモロコシだもん」
「……ごめん、メルシュの言っている意味が分からない」
だから、そんなドヤ顔で見つめないで。
「まあ、半分冗談は置いといて、“パーマネント・パーパス・コーン”はNPC専用のSSランクみたいだね」
「つまり、NPC以外は装備できない?」
ならNPCが装備できるのは納得だけれど、NPCが居ないパーティーやレギオンが選んでたら、完全に宝の持ち腐れになってただろ。
「コセ、メルシュ」
声を掛けてきたのはリューナ。
「私達のところは申請権を選んだんだが、少し相談にのってほしい」
「何か構想はあるのか?」
「ああ、実は」
リューナがチョイスプレートを開いて見せてくれる。
「どうにかして――精錬剣をたくさん使えるSSランクを作ろうと思ってる」
★
「大旦那様~、こっちですよ~♪」
「みなさーん、次の鬼は大旦那様よ~♪」
「なんか……恥ずかしい」
三日も離れ離れだった分、モモカ達と遊ぶことになったわけだけれど……モモカとバニラの世話のために皆が作った使用人NPC達(全員メイド)も“鬼ごっこ”に参加しているため……金持ちのいけない遊び感が凄い。
「ていうか……」
使用人NPC達の動きがナチュラル超人のため、気を抜いているとなかなかタッチできない!
「ちょ、ちょっと休ませて」
「では、私めが鬼を代わりましょう」
手を差し出してくれたのは、イチカの使用人NPCであるニャモ。
「よ、よろしく」
彼女の手にタッチし、草むらに大の字になる。
「ハァー、ハァー……クルーザーで昼寝でもしよっかな」
魔法の家の領域に作った、ちょっとした湖に浮かべた“耐弾性ボート”を見ながら、ふと思う。
明後日まで突発クエストが絶対に無い今じゃないと、時間を贅沢に使えないしな。
「……ギルマス様」
傍にやって来たのは、ホーン・マーメイドのリエリア。
「……どうした?」
彼女とこうして二人で話すのは、初めてな気がする。
「ギルマス様と……二人きりでお話したくて」
赤面する様子を見て、彼女が自分に向ける感情を察した。
「向こうで話そうか」
湖に浮かぶ“耐弾性ボート”を指し示す。
「は、はい! よろしくお願いします!」
●●●
船の上、下へと続く階段前にある椅子に、ギルマス様と横並びで腰掛ける。
「……♡」
一緒に居るだけで、どうにかなってしまいそうなほどドキドキする!
「それで、話って?」
「あ、あの……もし私が神代文字を十二文字刻めたら……私を……――私を、ギルマス様の正式な妻にしてください!」
言った! 私、言っちゃった!
「……なんで十二文字?」
あれ? 良くも悪くも、予想と全然違う反応……。
「十二文字刻めないと……ギルマス様に相応しくない……かなと」
十二文字刻めれなければ、精錬剣だって作れないって言うし。
「……」
困ったように頭を掻き出すギルマス様。
「あの……ご迷惑でした?」
「いや……正直、リエリアの事は普通に好ましく思ってるよ。気が利くし、優しいし、結構したたかだし」
したたか? 私が? へ、なんでそんな評価に?
「ただ……交流がなさ過ぎて、いまいち乗り気になれないというか……」
そう、初めてお目にかかってからおよそ二カ月、私とギルマス様はろくに接する機会が無かった。
だからこそ今回、勇気を出してお誘いしたのです!
「……“超同調”、使ってみる?」
「い、良いのですか!?」
それはつまり――私と精神セックスしようって、ことぉ!?
「お互いのこと、正確に知るには一番良い方法だと思う。君が少しでも拒んだら、すぐに止めるから」
「は、はい! お願いします!」
これは、最初で最後のチャンスかもしれない!
「いくよ――“超同調”」
ギルマス様の意識が、私の中に入っていく。
同時に、私が彼の中に――
彼の人としての在り方、悩み、苦しみ、弱さ、プライド、優しさ、覚悟、様々な物が私という存在に触れ、相互に影響を与え合っていく。
私がギルマス様に抱いていた幻想と実態がぶつかり、折り合いを付け、お互いの分かり合えない部分、尊重できる部分、敬愛を抱ける部分、その逆もハッキリとしていく。
「……終わったよ」
私達は最後まで、互いを交わらせ終えた。
「……はい」
そっとコセさんの頬に触れ、私から唇を重ねる。
「リエリア?」
「なんですか、その顔?」
子供みたいに驚いちゃって。
「いや……幻滅したんじゃないのか?」
「確かに、ギルマス様に抱いていた幻想は、すっかり無くなってしまいましたね」
もっと強くて、漢らしくて、賢くて、立派な人だと思ってた。
でも、今は――この人を、私に甘えさせてあげたい。
「コセさんは、とってもエッチですね。私の
身体に、前々から欲情していたなんて」
耳元で、あまく囁く。
「そういうものだろう……お互いに」
顔、真っ赤にしちゃって。そういうのも全部バレるって、覚悟していたくせに。
まあ、私もギルマス様でそういう妄想してましたけれど♡
「じゃあ、今から解消しましょうか。お互いに♡」
キスをしながら、私は彼の股をなで回し始めた。