746.偉大なる鬼神の腥風剣
“雄偉なる精霊と剣は千代に”に十二文字刻み、その力で六つの大剣を操るも、一進一退を繰り返す攻防が続くばかり。
下手にこの均衡を崩すほどの攻勢に出ると、小さな隙を突かれて一気に畳み掛けられる恐れがある。
「“嵐の穿孔”!!」
右手の“ストームブリンガー”から、強化した風の鏃を飛ばす!
『“効能狩り”』
盾を叩き付けて、“嵐の穿孔”を消した!?
《“狂血悪魔剣術”――ブラッドデビルブレイク》
俺の精錬剣だけが使えるはずの、二種系統武術だと!?
「――“拒絶領域”!!」
なんとか弾き防ぐ!
『貰った!』
“魔術師殺しの騎槍”持ちのドラコニアン・アバターが、背後から“拒絶領域”が消える瞬間を狙ってきた!
「“精霊剣術”――ウンディーネスラッシャー!!」
水の斬撃でリーチ勝ちし、槍で防いだドラコニアン・アバターを後退させる。
――即座に盾で仕掛けてきたアバターによって、“ストームブリンガー”を弾き飛ばされた!!
『死ね、ノルディック!』
「――“神代の飛踊剣”!!」
浮遊剣全てに“神代の剣”を施し、三体に二振りずつ襲わせて牽制。体勢を立て直す!
剣を操る集中力に精錬剣二本分の維持でただでさえキツいのに、アバター二体が武具効果と魔法を封じる装備持ち。
おまけに、アルファ・ドラコニアンは強力な武術を使える剣ときた。
援護を期待したいところだけれど、このままじゃ俺の方が先にお陀仏になりそうだ。
「攻めるか――“六腕”、オールセット3」
上右腕に“ヴェノムキャリバー”、下右腕に“ケラウノスの神剣”、上左腕に“ストームブリンガー”、下左腕に“魔術師殺しの剣”を装備。
“剣倉庫の指輪”より、“グレートオーガの短剣”を抜いて右手で構える。
「“大地番の豊穣神”!!」
総MPの四分の一を消費し、大地の女神を呼び出す!
「古代竜亀」
指輪で呼び出した竜亀で、盾持ちを攻撃させる!
女神にはアルファ・ドラコニアンの足止め――フリーになった浮遊剣全てで、ランス持ちを狙う!
「“二重魔法”、“古代竜魔法”――エンシェントドラゴブラスター!!」
“二重魔法の指輪”の効果で魔法陣を二重展開――浮遊剣で逃げ場を塞いで、直撃コースを作り出す!
『バカが、“法喰い”!!』
“魔術師殺しの騎槍”で魔法を吸収――してくれたおかげで、隙だらけに。
「踊れ、浮遊剣!!」
念能力では六つの浮遊剣を防ぎきれず、少しずつ損傷していくランス持ちのドラコニアン・アバター。
『“効能狩り”!!』
盾持ちが竜亀を消失させ、そのままの勢いで近付いてくる。
「“四重武術”――“魔人武術”、サタニズムフリング!!」
機械腕に握らせた剣、全てを魔人の暴威と共に投げ付け――盾と念能力で抵抗された物の、“ストームブリンガー”だけは胸に命中!
「古代竜亀! ……ダメか」
“効能狩り”のせいで、暫くは再召喚出来ないらしい。
《“狂血悪魔剣術”、ブラッドデビルブレイク》
豊穣の女神が、一撃で吹き飛ばされた!?
「“大地投擲術”――グランドフリング!!」
《――くだらぬ!!》
投げ付けた“グレートオーガの短剣”が、念能力を凝縮させた一刀の元に叩き砕かれてしまう!!
『――ノルディックがぁぁッ!!』
念を集約させた盾で、刺さっていた“ストームブリンガー”を叩き折った!?
『おい、この剣をどうにかしてくれ!』
アバター二体に損傷は与えた物の、数は減らせ――アルファ・ドラコニアンの接近に気付くのが遅れて――“雄偉なる精霊と剣は千代に”を弾き飛ばされてしまう!
左手から離れた事で精錬剣が解除され、予備欄から“雄偉なる精霊と剣は千代に”の効果で呼び出していた浮遊剣まで全て消えた!
クソ、一つ一つの行動が中途半端な結果に!!
「“超噴射”!! オールセット3」
後退しつつ、投げた剣を機械腕に戻す――折れた“ストームブリンガー”は戻って来ないか!
《逃げるなよ、腰抜け!》
超スピードで追い付いてきやがった!
「――クロススラッシャー!!」
『“狂血悪魔剣術”――ブラッドデビルブレイク!!』
鎧に十二文字を刻むも強化が間に合わず、“ケラウノスの神剣”と“魔術師殺しの剣”に罅が!!
「――大地脚!!」
アルファ・ドラコニアンの腹に蹴りを入れて吹っ飛ばすも、大して効いてはいないだろう。
「装備セッ――」
二体のアバターからの衝撃波に、声を出していられない!!
損傷で“六腕”が解除される直前、なんとか“ヴェノムキャリバー”を左手で回収。
《さすがに、三対一じゃつまんねぇなー》
――更なる重圧!! 鎧の神代文字で必死に抵抗している物の、身体が潰れそうだッ!!
欲しいのは――――声を発する事なく振るえる能力と、圧倒的な破壊力の剣!!
――“ヴェノムキャリバー”に、“グレートオーガの短剣”と“ストームブリンガー”の破片が集まってくる!?
『ノルディックめ、また奇蹟を起こそうというのか!!』
『死ねよ、劣等種ぞ――』
「“御神火”――“火山弓術”、ヴォルケーノブレイズ!!」
盾持ちのアルファ・ドラコニアン・アバターが、猛火の一撃によって貫かれ、爆発した!?
――左手の再構築中の剣を、思いっ切り振りかぶりながら神代文字の力を流し込み――――振り抜く!!
『――な……ぜ』
放たれた斬撃、“鬼神・斬魔”に斬られた瞬間、一瞬で細切れとなる槍持ちのドラコニアン・アバター。
《――死ねぇ!!》
「“神代の刀剣”」
生まれ変わった剣、“偉大なる鬼神の腥風剣”を逆手に持ち直し、アルファ・ドラコニアンの剣を受け流――しながら、魔人拳を顔面に叩き込んですぐさま後退!
「コセ!!」
「シューラ?」
彼女が、“名も無き英霊の劍”のコピーを手に駆けてくる!?
「アタシに――“超同調”を使え!!」
考える前に、口が動いていた。
「――“超同調”!!」
シューラの憎悪と嫌悪の思い出、トゥスカ、レリーフェ、ツグミ達に向けた親愛の情、ミキコへの共感、そして――俺への気持ちも流れ込んでくる!!
「「噴き上がりたまえ――――“雄偉なる噴出火口の――大御神火”!!」」
迸る溶岩が黒煙と共に塗り固まった、火の神剣を投げ渡される!!
「――“随伴の御神火”!!」
溶岩の奔流よ、アルファ・ドラコニアンを捉えろ!!
《――こんな物で!!》
不可視のバリアで溶岩を止め、跳ね返してきたか。
「――だが、あまい」
これらの溶岩は全て、俺とシューラの隣人なのだから。
“随伴の御神火”で、跳ね返ってきた溶岩を無数の球体となし、アルファ・ドラコニアンの前以外の周囲に配置。
「終わらせようか」
《――舐めるなよ、奴隷種族がぁぁ!!》
互いに正面へ、全力で駆け出す!!
《“狂血悪魔剣術”――ブラッドデビルスラッシュッ!!》
「“火山大地剣術”――ヴォルケーノグランドスラッシュ!!」
“偉大なる鬼神の腥風剣”に神代の力を流し込んで、ドラコニアンの腕を“鬼神・斬魔”で細切れにしながら片刃の剣を逸らし――シューラと生みだした御神火の剣で、奴の胴体を切り裂いた。