745.厭忌燃やし滅ぼす御神火
「“紅蓮魔法”、“魔法生物術式”!!」
痛い魔法少女風女に炎の獅子を嗾け、その隙に出口へと走る!
「この部屋さえ出られれば!」
この俺のSSランク、“プロメテウス・フォティア”で、全部まともて焼き尽くしてやるぜ!!
「どけ、クソ女共!!」
海賊コスプレ女に騎士メイドに魔導師っぽいエロ女、クエスト中じゃなけりゃタップリ可愛がってやるのによ!
「面倒くせぇ――“怪物戦艦”!!」
海賊女が何かする――いきなりバカでかい船が現れて、落ちてく――
「――ふざけんなぁぁ!!」
最初の十三種のSSランクを手に入れた俺は、選ばれし者なんだぞぉ!!
ムカつくレギオンリーダーを裏切り、ようやく《ハイベルセルクズ》を抜けられそうだったのに……船に潰されて終わりなんて――俺はまだ、二十八人しか日本女をレイプしてないの…………に……。
◇◇◇
『おのれ、キム! 余計な情報を与えて!』
何も知らずSSランクを顕現させていれば、コセ様の“名も無き英霊の劍”の装備を強制解除し、“メタモルコピーウェポン”の、装備しているアイテムをコピーできる能力による精錬剣も封じられたのに!!
クリアできなかった際のペナルティーは、もう期待できない。ゲームオーバーまで、まだ半日以上ありますからね。
コセ様から、第一ステージで手に入れた鎧と剣を奪うために考えた特殊ルールだったというのに……クソッタレが!!
『珍しく荒れてるね、アルバートくん』
休息から戻って来ましたか、オッペンハイマー。
『見苦しい所を見せてしまい、申し訳ありません』
『構わないさ。それにしても、この分だと半日以上残して、第三回大規模突発クエストが終わりそうだね』
『ええ……』
ケンシの奴等を配置していなかった三つのエリアのうち、二つのエリアは狙い通りの者にSSランクが渡りそうです。最後のエリアに関しては、アテルのせいで狙いが外れてしまいましたが……。
コセ様さえ殺せれば、幾らでもお釣りがでると言える。
……彼の到達ステージは五十……まだ少し、ここで彼を死なせるのは惜しい気もしますがね。
●●●
「――邪魔です!」
“雄偉なる黄昏は英雄と共に”を振るい、黄昏色のレーザー刃を放つ!
『犬女風情に!』
十二文字分の力が込められた斬撃。
強化型アルファ・ドラコニアン・アバターでも防ぎきれないようで、必死に躱した。
『死ねよ、獣女!!』
爪の振り下ろしからの、不可視の真空刃。
「“神代の剣”」
青白い刃で切り払う!
銃転剣、“荒野の黄昏は英雄の慰め”に十二文字刻んだ状態で、強化“魔力弾丸”を連射!
そのまま突っ込みながら、“ホロケウカムイ”と“ニタイカムイ”を降ろす!!
『く、来るんじゃねぇよ!!』
口から青白いレーザー!? ――紙一重で躱しながら、剣を横に振り抜く!!
「“黄昏大地剣術”――トワイライトグランドスラッシュ!!」
横からなら、多少剣筋がずらされても当たる!
――剣閃を下にずらされたうえ、ジャンプして損傷を足だけに抑えた!?
『――死ね、獣ぉ!!』
強力な武術の反動に、身体が動か――
「“火山弓術”――ヴォルケーノストライク!!」
大火の豪矢がドラコニアンのお腹に命中し、壁に激突した!
「決めちまいな、トゥスカ!!」
「“黄昏大地剣術”――トワイライトグランドブレイク!!」
頭から腹まで、跡形もなく壊し消す。
「ハアハア、ハアハア」
“雄偉なる黄昏は英雄と共に”が解除される。
精錬剣使用の疲労、昨日の分も癒えぬまに多用しすぎた。
「大丈夫か、トゥスカ!」
「私より、ご主人様を……」
あのアルファ・ドラコニアンに加え、三対一の状況。
にも拘わらず、さっきまで私と自分の分の精錬剣まで維持して戦っておられた。
あの人は……出会ってからずっと、私に敬愛の情を抱かせ続ける天才だ。
「お前、なんでそこまで男に……」
「お願いです、シューラ。私は、すぐには動けそうにない……」
身体が震えるほどの疲労……無理に助太刀しても、足手纏いになってしまう。
「……もしアタシが――コセが欲しいって言ったら?」
「ご主人様がその気になるなら、良いのでは?」
「……お前、男に都合の良い女過ぎだろ」
「失敬ですね。私は、私の信念に従ってここまで来たのに」
そうだ。最初にご主人様の首をへし折ろうとしたのも、その日のうちに生涯を共にしたいと思ったのも全部――私の信念に、あの人が当たり前のように寄り添える人だったから。
「私がご主人様の都合に良いのではなく、私にとって彼がもっとも都合の良い男性だった。それが真実です」
男に興味無さそうだったシューラさんが、私がご主人様に尽くすことではなく、男に尽くすという形に対して懐疑的な態度をとったのには、きっと大きな意味がある。
「……ハァー、アンタが……アンタ達が羨ましいよ」
シューラさんの黒弓に十二文字が刻まれて、形を変えていく!?
「――“神代の矢”」
一回り大きくなった黒弓に、青白い矢をつがえる!
「“御神火”――“火山弓術”、ヴォルケーノブレイズ!!」
神代文字の力が全力で注がれたであろう一矢が、盾持ちのアルファ・ドラコニアン・アバターの胸を捉え――爆散させた。
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アタシは、色んな物が嫌いだ。
エルフも、ダークエルフも、人間そのものも。
その中で、男というカテゴリーに対し、ダークエルフの次くらいには強い嫌悪を覚えるのがアタシ。
出会って間もなく、アタシはトゥスカが気に入った。
若いのに賢く、芯のある言動。
そんなトゥスカには、他の女達からも全幅の信頼を寄せられる男がいた。
異世界人、コセ・ユウダイ。
アタシが秘かに一番共感していたミキコですら、コセには不器用ながらも一定の敬意を示しているようだった。
そしてアタシも、多くの女を囲っているアイツに、不思議と嫌悪を感じなかった。
……初見時に“女体化”していたからかもしれない。だから確かめたくて、トゥスカ経由でパーティーに入れて貰ったんだ。
たった半月、パーティーを組んでそれなりに一緒に行動したが……まさかこのアタシが、アイツにこんな気持ちを抱く事になっちまうなんてね。
昨日の朝、アタシからあんな話までしちまうしさ。
「借りるよ」
“名も無き英霊の劍”のコピーを掴み、コセの元へと駆ける!
「コセ!!」
追い詰められている坊やの名前を、必死に呼ぶ!
「シューラ?」
「アタシに――“超同調”を使え!!」