734.二転三転の結末
「タイシュ、お前がメインで攻めろ!」
「おうよ!!」
タイシュの黄金の獅子のオーラがアルファ・ドラコニアン・アバターを襲うも、球体状の見えないバリアに弾かれて届いていない。
「だったら、コイツでどうだ!」
左腕の“レグルス・アウルム”とは逆の鉤爪、“一撃で決めてやるぜ”に六文字刻み、黄金の獅子オーラへと力を流し込んで炸裂させ、バリアを破った!
「“同系合成”――“紅蓮矢”、“暴風矢”、“氾濫矢”、“万雷矢”」
ラフォルが強大な一矢を準備し始めたか。
「――消えた!?」
ドラコニアン・アバターの姿が、一瞬で!
『まずはお前から』
アイツ、ラフォルの背後に!!
「――“追尾命中”」
ラフォルの奴、頭を守った二の腕を潰し飛ばされる直前、強化合成した矢を放ちやがった!
とっさのバリアでは防げず、背後から左肩を破壊されるロボット野郎!
肉を切らせて骨を断つ――ラフォル、お前こそが真のサムライか!
「“木乃伊猫”!」
包帯だらけの猫が、魔方陣から次々とアバターに取り付いていく。
『は、離れろ!!』
「ソイツ、アイテムで“転移”する気だニャ!」
バステトの言うとおりなら――あの腕輪の能力だな!
「“幻影肩腕”――“蜃気楼”、“有象虚像”!!」
『邪魔なんだよ!!』
念で“木乃伊猫”が弾き飛ばされた瞬間、神代文字も注ぎ込んだ巨大な拳を――ロボット野郎に叩き込む!!
「――崩壊拳!!」
私の渾身の一撃で、右腕を破壊!
これで、腕輪の転移は使えないだろう!
「“覆竜技”――ヴリトラドラゴンブレス!!」
ナナコのSランクの杖、“黄金竜王の秘杖”により、竜属性を含む魔法と竜技の威力は二倍になる!
『奴隷共がぁぁ!!』
ボロボロのくせに、念のバリアで耐えきりやがった!
我が愛刀――“崩れる虚飾は誰がため”に九文字を刻む!!
「“崩壊刀剣術”――――幻想断ち」
微かなバリアの抵抗をはね除け、機械の身体を両断。
『く、黒い蛮族如きに……』
「確かに私は、お前らに良いように搾取されて、劣等感と差別意識と僻み根性を植え付けられた、しょうもないアフリカ人の一人さ」
壊れかけの頭部を刀で突き刺し、機能を完全に停止させる。
「ナナコ、ラフォルの治療を!」
「もうやってる! まったく、どいつもこいつも無茶しやがって!」
ようやくいつもの調子に戻ってきたな、ナナコのアホめ。
お前が、私達に気後れする必要なんてないんだからさ。
○○○
「“桜火砲”!!」
ツグミの大火力砲撃でも耐えたか。
「“六連瞬足”」
紅色の刀、“腹の一物をぶちまけろ”に三文字刻む!
「“狂血武術”――吸血鬼断ち!!」
――まるで胸ぐらを掴まれたみたいに身体が無理矢理引っ張られて、攻撃を外される!?
「“ワッカカムイ”――“二重武術”、“万雷投槍術”――サンダラスジャベリン!!」
“ヴァジュランス”と六文字刻まれた“万雷の宴に恐れ戦け”、二つの金色の投槍が掠め、左脇腹から左脚に掛けて破壊。
「“ピリカカムイ”!!」
身体強化し、ザグナルの二刀流で殴り掛かるセリーヌ!
『羽虫如きに!!』
「バカがよ!!」
セリーヌのやつ、鎧に九文字を刻んで、敵の念による干渉を弾いているのか。
「――ミスティックダウンバースト!!」
『ガぁッ!!』
詠唱破棄の魔法で、隙を突いた!
「“瘴気砲”!!」
ツグミの砲撃。
『チ!! ――“可動”!!』
左腕の竜みたいなパーツが動きだして、瘴気の奔流を弾き飛ばしただと?
『扱い方がよく分からないってのによ!』
「ぁあッ!!」
蠢く竜の首で、セリーヌを弾き飛ばした? アイツ、当たる直前にセリーヌを一瞬、硬直させたのか。
「――“絡繰り鬼兵”!!」
貰ったユニークスキルを行使――青い炎を携えたメタル骸骨を呼び出して、左腕の竜首と戦わせる!
『邪魔だ!!』
“絡繰り鬼兵”が、いきなり殴り飛ばされたみたいに!
やっぱり、文字の力を流せないと太刀打ちできない!
『まずはお前だ!!』
トカゲロボットが狙ったのは、ツグミ!
「“太刀神降ろし”――――“超竜閃”」
突然生まれた巨太刀が、アルファ・ドラコニアン・アバターの身体を両断……した?
「トドメよろしく、ツグミ」
「――“桜火砲”!!」
トカゲロボットが消失し、あの不気味な竜のパーツだけが残った。
「メイベル達も片付けたか……」
今更ながら、私って弱いな。スキルや装備構成も、対生物に偏っている気がするし。
「神代文字……どうすれば、もっと使いこなせるようになんのよ」
「ねえ、ラフォルが重傷みたいよ」
心配そうなハユタタ。
なんだかんだで、アイツは優しい。
「セリーヌさんとネロさんは大丈――ッ!!」
ツグミに遅れて、最深部とは逆から近付いてくる存在に気付く!
《――俺が我慢できずに探し回ってる間に、まあまあ強そうなのが揃ってるじゃねぇか》
赤い筋骨隆々の身体……アレが、本物のアルファ・ドラコニアン!!
さっきのアバターが可愛く思えるくらいには、圧倒的な存在感……コイツに勝てたとしても、たぶん、私達の何人かは死ぬ!!
「お、オールセット1」
相手が生物なら、“即死”が通用するはず……私、震えてる? 今更、死ぬことを恐れてるって?
「……ざけんな」
私は、私が気に入らない奴等は全員殺してやるんだ!! 私に恐怖を与える奴等、皆皆皆皆皆皆皆、ぶっ殺して――――最深部の方から巨大な爆発音と、部屋全体を揺らす程の強い振動が!?
「――まさか!!」
ユイが、奥へと向かって走り出した!?
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ツグミ達の居る部屋から続く長い通路を抜けた先、また広くて白い部屋に足を踏み入れた時だった。
『10番エリアのSSランクが回収されたのを確認しました。よって、現在10番エリアに居る皆様は第三回大規模突発クエストをクリア。依頼達成です』
壊れた壁の奥で、日本刀を摑みとっている者は……。
『……ほう。一足遅かったな、コセとかいう男のパーティーメンバー』
私の顔を知ってるって事は、間違いない!
「昨日、不意打ちしてきたサイボーグ……」
声と反応的に、中身は一緒っぽい。
『コイツを試してみたかったが、時間切れらしい。じゃあな』
SSランクを視認できたなら、おそらく情報は持ち帰れる。
視界が光に染まりきるまで、私はサイボーグ男を睨みつけた。




