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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第18章 陰謀の根源

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731.再戦の亡霊

『……』


「グダラさん……なんかキクルさん、機嫌悪そうだね」


 ウララに耳打ちされる。


「まあ、昨日の相手が精神操作の使い手だったから」


 嘘ではない。あの一戦から、明らかにキクルの様子がおかしい。


 ただ、シェルターの中にあった書類を見てから、一段と思い詰めるようになったのは確か。


 その書類に書かれていたのは、児童相談所とかが、相談しに来た親からほとんど強制的に子供を取り上げて、外国に養子縁組して売り飛ばすという物だった。


 胸糞悪い話なのはそうだが、なぜキクルがあんなにも荒れているのかは、私にも解らない。


挿絵(By みてみん)


「おい、後ろから偽エイリアンが――」


 バルバザードからの警告――身体が……動かない?


 私だけじゃなくこの場の全員、偽エイリアン共まで動きを止めている!?



『現時点を持って、地下エリアの防衛プログラムが最大レベルに引き上げられました。エリアの管理者達が直接、侵入者の排除を開始します』



 それだけ言い、時が戻る。


「管理者達が直接?」


 偽エイリアンを片手間で始末する。


『アイツらは……』


 最深部へと続く通路から、隠れNPCシャドウが現れる!


「見覚えがあるのと無いのが居るわね~」


 サトミの吞気な声。


「チラホラ、五十ステージより上の隠れNPCシャドウも混じってるな」


 バロンのミレオが情報をくれる。


『珍しいスキルを手に入れるチャンスだな』


 キクルが、あまり自分からは使いたがらない神代文字をいきなり刻んで……。


「グダラさん。危うい殿方をお支えするのが、伴侶の役目では?」


 雪女のヒョウカに諭される!


「それくらい! ……そうだな。ヒョウカも手伝ってくれるか?」

「あら、これは意外なお返事」


 可笑しそうに……女狐め。


「まあ、お前とは仲良くやりたいとは思ってたさ」


 最近のキクルは、レイナに手を出してからどんどん節操が無くなっていってるし! 


「では、とっとと片付けましょうか」

「当然!」


 あのバカ旦那に最初に惚れたのは、この私なんだからな!



●●●



「エリアの管理者が直接……か。果たして、何が来るのやら」


 マリサとネファークのパーティーと共に鍾乳石の部屋を抜けて暫く、既にエリア最深部近くまで来ていた。


「……この音、なんか聞き覚えある」


 聞こえてきた駆動音に、アオイが言及した?


「何か来たぞ、ルイーサ」


 ネファークの視線の先から、黒いボディーの機械が飛んでくる。


「……なるほど。管理者が直接っていうのは、コイツらの事か」


 アオイの命を奪い、私にトラウマを植え付けた存在。


「――“アイアンバリエーションズ”」


 個体によって違うパーツを装着し、魔法ダメージを半減させる“黄金障壁”、武術のダメージを半減する“白銀障壁”、おまけに高速飛行する機械の巨体。


 しかも、操っているのが……。


『ノルディックのクズども。せいぜい、俺達の狩りを楽しませろよ?』

『久し振りの奴隷狩りだ!』

『このロボットじゃ、苦しめられずにうっかり殺してしまいそうだ。俺達にもアバターが使えればよ』


 つまらない三流台詞をベラベラと。


()()()()()()()()()()()()


『赤毛の女、俺達を雑魚だと言ったのか?』

『やはり、ノルディックは低能だな』

『仕方ないだろう。地球人類は先天的にも後天的にも、洗脳しやすいよう、おつむを脆弱にしてあるのだから』


 ムカつく事をベラベラと。


「トカゲ共を、これ以上粋がらせるな!」

「「「「おう!!」」」」



●●●



「“光線魔法”――アトミックレイ!!」


 神代文字六文字分の力で、ようやく半壊させられる程度。


「ムカつくわね」


 九文字なら一撃で戦闘不能にできるだろうけれど、以前よりも“アイアンバリエーションズ”の強度が上がっている。


「姉ちゃん、準備出来た」

「よし、いったれ!」


 アオイが“トリプル薬液スピアー”を手に、両手盾持ちの一番硬い奴を狙う。


『ひき肉になれ!!』

「“幻影”」


 迫る巨盾を、“幻影”と入れ替わって回避。


『バーカ!! お前ら脆弱なノルディックを殺すのに、剣やミサイルなんて要らねぇんだよ!!

「――“悪魔熊の腕”」


 左腕を禍々しい熊の腕に変え、鉄塊を殴りつけてひれ伏させるアオイ。


 あの子は、なんでああいうスキルを好むのか。


『その程度じゃ、コイツにはなんのダメージも!』


「“水銀武術”――マーキュリーストライク」


 突き刺した内側から“腐食液”を注ぎ、あっという間に半壊させるアオイ。


『な!? 腐食は効かないはずじゃ!』

「効かないのは装甲だけでしょ。お前みたいなのをゲーム脳って言うん? レプティリアン」


『――貴様ぁぁ!!』



「悔しかったら直接来いよ。鉄クズ操って粋がる事しかできない――弱虫のくせに」



 アオイの怒りが、かつてないほど酷い……。


「なんだ、硬いだけで大したことないじゃん」

「物量で攻められでもしないかぎり、問題にならないね」

「この空間が狭いからな。私達にとっても厄介だが、向こうもろくに動けない」


 サナ、クロニー、ネファークの会話。


「とはいえ、攻め続けられたらキツい。さっさと行こう」


 マリサの提案に従って、三パーティーで奥へと進む。



●●●



「……ここが最深部」


 暗い金属の通路を超え、私達が辿り付いたのは……眩しいくらいの光に満ちた大きな機械部屋。


「兵器か何かのヤバい実験をするための場所……て感じ」


 ツェツァの意見。


 床は白く、奥の壁は銀一色で煌めいている。


「SSランクは、あの壁の向こうみたいです~」

「どうやら、奥の壁を破壊して進む必要がありそうですの」


 コツポンとサカナからの情報なら、力尽くで突破するしかないか。


「“六重詠唱”、“爆裂魔法”――エクスプロージョン!!」


 ツェツァが、十二文字分の力を込めた魔法を壁にぶつける!


「……嘘でしょ」

「これが最終砦というわけか」


 あれほどの威力でも、壁を突破出来ていない。


 大きく抉れてはいるものの、亀裂と呼べる程の罅は無い……しかも、只でさえ硬いのに、とんでもない分厚さのようだ。


「時間が掛かりそうね。リューナ、こっちは私のパーティーで引き受けるから、後ろを見張っていてくれない?」


 消耗したクオリアを気遣ってくれているのか。


「ああ、任せろ」


 単純な火力なら、ツェツァ達の方が高そうだしな。


「……来ないね。他のパーティーも、クオリアが戦ったアルファ・ドラコニアンも」


 サンヤのセリフ。


 ここに辿り着いて暫く経つも、やってくる者は一人も居ない。


 部屋の外からは、だいぶ前から戦闘音が響いているが。


「もしかしたら、この部屋にはモンスターが入って来られないのかもな」


 でなけば、ここに居る私達を最優先で狙わない理由はないはず。


「……誰か来ます。人間の足音」


 クオリアがいち早く気付いた。


「――見付けたぁ~」


 返り血だらけで現れた一人の男が――ノゾミを見て不気味に笑った!?


「あの人は……」


 ノゾミが怯えている?


「知ってるのか、ノゾミ?」


「“王冠平街”で、私を狙って襲ってきた人です!」


 四十五ステージ――コセ達が妙な視線を感じた場所!!


「ようやく再会できたね、ノゾミ。あの日からずっと、君に遭いたくて仕方なかった!」


 なんか急に唄いだしたうえに、妙な踊りまで。


「この唄……ヒンディー語か?」


「でもね、美しい君にも一つだけ足りない物がある~。それは――」


 コイツ、たちの悪いストーカーだな。


「君が――経産婦じゃない事さ」


「「「「……は?」」」」


 むしろ経産婦じゃない方が良いだろ。狙っている男からしてみれば。


「だからノゾミ――僕が経産婦にしてあげるから、産まれてきた子供を丸焼きにして一緒に食べよう。そして幸せの絶頂の中で、君の内臓をえぐり出させてくれ!! ヒャホーイ!!」


 ――コイツは、ルーカスと同等かそれ以上の度外道だ!!


「リューナ、コイツさ」

「ああ、とっとと片付けるぞ」


 視界に入れているだけでも不愉快だ!


「――待ってください」


 ノゾミが前に出る。


「……私が殺します」


 そこにいたのは、私が知るノゾミではなかった。


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