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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第18章 陰謀の根源

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728.番狂わせな早朝

「ハァー――ぁ」


 寝起きに大きな欠伸でた。さすがに、今夜はベッドで寝たい。


「起きたんだ、マリナ」


挿絵(By みてみん)


 私が契約した隠れNPC、モーラのリンカが声を掛けてきた。


「リンカは寝たの?」

「少しは……」


 素っ気ないな。まあ、リンカからすれば、死んだはずなのに隠れNPCになり、勝手に奴隷にされた挙げ句、過酷な大規模突発クエストの真っ最中。


 私なら発狂しかねない。


「早くSSランクを手に入れて、安心できる場所へ移動しましょ」


 なんだかんだで、この場所にもモンスターの襲撃が何度かあったみたいだし。


「……」

「なに?」


 昨日から、私の顔をジロジロ見てくる。


「なんか……貴女の顔を見ていると既視感が……まあ、なんでもないわ」


 気になる言い方だな。


「二人とも、一番奥に居たんだ」


 眠そうなコトリが近付いてきて、チョイスプレートを開いた。


「朝六時を過ぎたけれど、何も起きないね」

「例のカウントか。リンカを開放したから当然でしょ」

「万が一もあり得ると思って。でも、他のエリアで同じ仕組みがあって、私達みたいに止められていなかったら、いったいどうなってたんだろう?」


 あんまり考えたくないな、それ。



●●●



「起きてください、マスター!」


 ヨシノに起こされてる?


「どうしたの、ヨシノ?」

「外、大変な事になってます!」


 RVの外から戦闘音?


「撤退! 中に入って!」


 カオリ達が、バカでかいRVの中に戻ってきた?


「ダメだ、数が多すぎるうえに囲まれていて、背を向けて移動なんてできる状況じゃない」


 あのユイの姉であるカオリから、ハッキリと弱音が出るなんて。


「何が起きてんの?」


「隠れNPC、ジャック・オ・ランタンのシャドウ・グリードです。しかも、彼等は我々の進路の逆側から、次々と現れています」


挿絵(By みてみん)


 ナースの隠れNPC、ナイチンからの情報。


 コセ達が無尽蔵の隠れNPCシャドウと戦ったとは聞いてたけれど、カオリ達が撤退するレベルなのか。


「つまり、シャドウ・グリードに常に追い立てられながら進まなきゃいけないって事ね」

「いや、そのシャドウ・グリードだが、何割かがエリアの最深部に向かっていってる。どこも奴等でいっぱいだ」


 強引に突破しようにも、リスクがデカいと。


「本調子じゃない者も多いし……私は、撤退を進言する」


挿絵(By みてみん)


 冷めた表情のカオリ。


 私とレリーフェ、それにスゥーシャも……まともに戦えるくらい回復していない。


「撤退って、いったいどこへ?」

「SSランクを二つ以上装備すれば失格になる。このルールを利用する」


 ――私達が居るRVが攻撃され始める!


「ど、どうやってよ?」

「“ツインリーダー”のサブ職業を使って、私とユリカのパーティーを一つとして認識させる。そうすれば」


 タマと向こうのエルフのSSランクで、一つのパーティーに二つのSSランクがあるって扱いになるってわけね。


「……悪いわね、迷惑掛けて」

「どっちにしろ、私達だけじゃ詰んでた。失格になれるだけマシよ」


 ユイより会話しやすい。


「みんな、私達の大規模突発クエストはここまでよ」


 仲間を一人失い、クエスト中に手に入れたアイテムも全て没収されてしまうため、得る物は何も無い。


 それどころか、誰かがクエストをクリアしないとAランク以下のアイテムを全て失う。


 それでも、これ以上誰かが死ぬよりは――


「あとで、皆に……謝ろッ」


挿絵(By みてみん)


「ユリカさん……」

「ユリカ……」


 勝手に涙が出て来て、嗚咽も止まんなくて……凄く悔しいんだ……私。


 丸一日近く残し、私達の第三回大規模突発クエストは……終わりを迎えた。



●●●



「本当に大丈夫なんですか、ホタルさん?」

「問題無いと言っている」


 倒れたホタルさんを休ませるにあたって、私達は昨日、早めに睡眠をとり、夜通し地下施設を進む事に。


「ホタル、もう最奥のエリアが近い。一度休もうぜ」

「……そうだな」


 ケイコさんの提案に乗り、休憩する事に。


「コーヒー飲む人ー!」


 ビーバー獣人のムダンさんが訊いてくれた。


「腹減ったな。なんか食いたい」

「レンちゃん、お腹が膨れると眠くなるわよ。野菜スープで我慢しましょう」


 コセさんが用意してくれていた具がほとんど無い優しい味のスープを、フミノさんが紙コップに移して手渡してくれる。


 実体化した直後でも、飲みやすい手頃な温度。


 消化に良いし、栄養も取れるしで、いつ襲撃を受けるか分からないこの状況では重宝していた。


「……そのスープ、貰って良い?」

「ええ、良いですよ」


 フミノさんがオゥロさんに、鍋から紙コップに移したスープを手渡す。


「……ああ、旨。胃に染みる」


 幸せそうなオゥロさん。


「お返し。これ、キクルが焼いたパン」


 オゥロさんが、私のパーティーメンバー全員に手渡してくれる。


「バターロールですか?」


 パンを半分にちぎると、小さく刻まれた野菜やお肉がいっぱい入ってる。


 塩と胡椒、それに生姜? も効いていて美味しい。


「キクルってのはパンも焼けんのか」

「市販の酵母はくせーとか言って、自前の酵母にこだわってるんだよ、アイツ。顔に似合わず細けーんだ」


 ケイコさんがチーズを差し出してくれる。あ、これ燻製チーズだ。


「これもキクルさんが?」

「いや、俺だ。卵とか、はんぺんも美味いぞ。今は無いけど」


 意外な趣味。


「お前達、ちょっと食べ過ぎじゃないのか? 動けなくなるぞ」

「チーズくらい、大して腹にたまらねーよ。ていうか、それを言うなら……」


 ケイコさんが視線を向けたのは、小柄なチトセさん。


「はい、チトセ様」

「ヘラーシャの料理、美味しい!」


 熱々チーズとベーコンを挟んだマフィンに、温かなハチミツきな粉ミルク。


 コセさんのスープにシチューのルーを入れ、そこに昨日のあまりの蒸し野菜に裂いた胸肉を投入して……美味しそう。


「皆さん、プリンもありますよ~」


挿絵(By みてみん)


 楽しそうなヘラーシャさんが、悪魔に見えてきた。


 マズダーさんも、デカいベーコンを頬張ってるし。


「お前達、偽エイリアンが来るぞ!」


 ちゃんと見張ってくれていたエルザさんの叫び……あの人、手にワイン持ってない?


「楽しい食事の邪魔をしやがって」

「せっかく良い気分だったのによ」


 ケイコさんとレンさん……。


「軽い休憩であって、食事を取るはずじゃなかったのに……」

「ハァー、お互い苦労するな」


 ホタルさんが同情してくれた!?


「……このままSSランクを手に入れて、ゆっくり食事をしましょう」

「……そうだな」


 少しだけ、ホタルさんとの距離が縮まった気がする。


「……へ?」


 偽エイリアンの集団が、飛んできた無数の湾曲した刃物で……切り裂かれた?


『チ! ここまで来て女の集団か。邪魔くさい奴等だ』


 現れた一団は、四人の獣人パーティー。


 その先頭に立つのは、獣型の全身甲冑を纏う男。


挿絵(By みてみん)


 あの姿、私はライブラリで何度か見ている!!


「《ハイベルセルクズ》の――“ファング・ザ・ビースト”」


 エトラさんのレギオンを壊滅させた奴等が所有する、獣人専用のSSランク!!


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