725.蛇妖精の仲間達
青緑の薙刀、“青龍・東月刀”を鳥人の男に振るう!
「“カパッチリカムイ”」
紫のオーラを纏い、回避された。
「私に近付くな! そして、ワイフに手は出させん! “台風竜魔法”――トルネードドラゴキャノン!!」
デカい風の玉――渦巻いていて引き寄せられる!
「“魔斬り”!」
薙刀で切り裂く。
「これが上級者の戦い方だ――“鋼鉄魔法”、“雷属性付与”――メタルクラッシュバレット!!」
“電磁速射”で加速させた玉を、上から広範囲にばら撒いてきた!
「“早駆け”!!」
しっかりと見極め、最低限の動きで躱しきる。
白い下半身鎧、“白虎・西金脚”による敏捷性もあって、俊敏さには自信があります。
「な!? よろしい、ならば私も本気だ! “古代兵装――」
「――“朱雀翼”!!」
燃えるような朱色の翼、“朱雀・南炎翼”を展開し、飛び立つ!
「く、来るな!」
上を取るために自前の翼で飛んだんだろうけど、鍾乳石が邪魔なこんな場所じゃ、行動の自由を自分から捨てるような物!
「“台風竜技”――トルネードドラゴンブレス」
「“玄武障壁”!!」
黒い甲羅の盾、“玄武・北甲盾”の力で甲羅状の障壁を展開――竜巻の息吹を完全に防ぎつつ、そのまま突撃!!
「おい、やめ――」
「“空衝”!」
空を蹴り、障壁ごと体当たり――上から生えた鍾乳石にぶつけ、折れた鍾乳石と一緒に落ちていく。
「よく……よくも……」
装備のおかげか、この程度では死なな――巨大な爆発の衝撃波!? これ、マウーサの“超新星”?
「こ、今度こそ――“古代兵装――」
「――“黄龍砲”!!」
“黄龍・央鎧”の胸の部分、金色の龍の顎から砲線を放ち――鳥人男を吹き飛ばした。
「さっさと本気出さないから」
ビビってるのを取り繕っている暇があるなら、全力で戦えば良いのに。
「サナ、無事? ていうか楽勝そうね」
クロニーとマウーサも無事か。
「ええ、装備の力で押し切れたよ」
四神系統のSランク装備のおかげで、神代文字を使うまでもなかった。
「……」
「サンダーバードの隠れNPC、動く気配がないとわね」
マウーサの言うとおり、サンダーバードは警戒するばかり。
「ネファークさん達、私達がサンダーバードを倒すのを待ってるのかも」
「じゃあ、とっとと片付けてやるわ!」
クロニーがトドメを刺しやすいよう、サポートするか。
●●●
「アイツら、こんな格下女共に負けやがって! このままじゃ俺のワイフが……――“竜化”!!」
異世界人なら、当然持ってるか。
『ワイフだけは、絶対に渡さねぇぞ!!』
「ペンペン、もう少し時間稼ぎをするぞ」
「本当に、もう少しだけだからな」
Sランクの、“耐性破綻の欠陥盾”を構え直すペンペン。
あの盾で受けた衝撃の一部は装備者の身体を傷つける代わりに、受けた攻撃属性の耐性が上がっていく。
回復特化の私達とは、相性が良い欠陥防具。
『いい加減に消えろ!』
“守護神/刑天”の、包丁のような斧を受け止めるペンペン。
「いッツ!!」
「“腐食土葬”!!」
まずは、この首無し腹顔巨人を消してやろう。
『――させっかよ!!』
“アスクレピオスの杖”を翳し、頭への攻撃は牽制――わざと胴へと攻撃を誘導し、剣で斬られる!!
「――“因果応報”!!」
『――グッ!?』
同じ傷を与え、一瞬、奴の気を逸らさせた。
「シールドバッシュ――ハイパワーネイル!!」
“盾術”で刑天の斧を跳ね返し、火毒爪で男の竜顔を切り裂くペンペン。
『く、クソッタレがッ』
急いで後退した?
「――“絶対守護障壁”!!」
あらゆる攻撃から身を守る白い障壁を発生させ、蛇柄の無数の槍、“古代兵装/ヒュドランザ”の矛を全て防いだ。
――よし、刑天は完全に地面に呑み込ませた!
『グァぁぁ!! 顔が、顔が熱いッ!!』
“ペルーダの火毒爪”の効果、“火毒”。
傷付けた箇所から火傷が広がっていく、状態異常Lv依存の毒。
「どうやら、状態異常への備えはろくにしていなかったようね」
『ワイフ!! 俺の毒を癒せ! 早くキュアを!』
「アンタのサンダーバードなら、この私が頂いたわよ!」
クロニーが仕留めたか。私達にとって最良の結果に終わったな。
まったく、ミカゲ達と一緒にキクルのレギオンに入ってから、良いことばかり起きる。
「ククク!」
既に腹の傷も塞がった。
『俺達は……最強のレギオンなんだぞ? こんな……――こんなバカな事があってたまるかぁぁ!!』
「お前の古代兵装、ちょうど良さそうだから私が使ってやるわ」
大蛇系統特化の私が。
「――“八岐大蛇”」
私のユニークスキルを行使し、全OPと引き換えに八首の大蛇を呼び出す。
「“竜化”状態――いつまで耐えられるかしらね」
『――助けてくれぇぇぇ!!!!』
背を見せて逃走した瞬間、“八岐大蛇”の首が次々と食らい付いて、男の身体が再生しなくなるまで延々と噛み千切り続けた。
間もなく、ヒュドランザも消滅。
「ハー。さすがに、一人じゃ勝てそうになかったわね」
SSランク持ちなのに、私自身の攻撃能力はその他のスキル頼り。
装備のほとんどが、“ウロボロス・メダリオン”を生かすための物だし。
「マスター、他のケンシ達だ」
「……ルイーサとマリサのパーティーか。良かった」
ウォリバリュナの姫のこんな姿、できれば他のエルフには見せたくなかったからな。
「――ネファーク!! 家が動いてる!!」
マウーサの声!?
「……冗談でしょ」
私達が見付けた一軒家が本当に動いているうえ、木の枝を生やしてうねらせている!
「コイツ、“モンスターハウス”だったのか!」
襲い掛かってきた枝を、ペンペンが盾で防いだ!
「“六重詠唱”――“泥土魔法”、ベリアルバイパー!!」
六体の泥大蛇に食らい付かせる!
「装備セット2!!」
左手に蛇の意匠の杖――“終わらぬ輪廻の輪”を装備!
神代文字を九文字刻み、泥の大蛇に力を注ぎ込む!!
「ぶっ壊れなさいよ!!」
「――“青龍波断”!!」
「“煉獄円輪”――“煉獄蝶”!!」
サナとクロニーの援護もあり、なんとか“モンスターハウス”を仕留められた。
「無事か、ネファーク!」
ルイーサ達が駆け付ける。
「ああ。結構ボロボロだけれどね」
こりゃ、本格的に休まないとまずい。
「せっかく休めそうな場所が見付かったと思ったのに、まさかモンスターとはね」
「残念だね」
ルイーサのところの双子の会話。
「それなら問題ない。“モンスターハウス”は、倒した家そのままの“モデルハウス”というアイテムをドロップするからな」
ペンペンからの情報に、頭が混乱する。
「倒したのは……クロニー扱いか。おい、クロニー。家を出せ」
「貴女、いつも私にだけ偉そうじゃない?」
「そんな事はない。気のせいだ」
「まあ良いわ」
クロニーが取り出したミニチュア? を投げると、本当にさっきの家が出て来た!
「この人数には狭いが、野宿するよりはマシだろう」
「我々隠れNPCは外で見張りをしましょう。だいぶ余裕が出るはず」
マクスウェルとネクロマンサーの隠れNPCの会話。
「ネファーク、我々も休ませて貰って構わないか?」
「明日は、ますますハードになりそうだしね」
両パーティーリーダーからのお願い。
異世界人以外の種族がパーティーリーダーをやってる例は少ない。しかも、私は非力なエルフ。
ミカゲ達のパーティーから独立してから、ユウスケ達に何度バカにされたことか。
「ああ。私達は同盟を結んでるんだ、遠慮なく休んでくれ」
彼女達が同じレギオンじゃないことが、少しだけ残念だ。




