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73.突発クエスト・デスアーマーを倒せ

「つ、疲れた」

「き、キツかったです」

 

 ユイの特訓をタマと共に終え、リビングで休憩していた時だった。



『これより、突発クエストを開始する!』



 突然響いた、高圧的な男の声!


「ジュリー様!」

「落ち着いて、情報収集が優先だよ」


 タマを宥める。


『今から三十分後、この港にキラーホエールマン三十体を投入する!』


 噂のモンスターを三十体!


『更に、五分ごとにもう十体が追加され続ける』


 そのモンスターの能力がどの程度か分からないうえ、数が多すぎる!


『この突発クエストの勝利条件は、デスアーマー・ランサーの討伐だ!』


 チョイスプレートが出現し、そのモンスターの姿が表示された。


 黒い骸骨が、禍々しい甲冑に身を包んだようなデザイン。ただし、鋭い骨のような形状の尻尾が生えている。


 手にしている紅の槍と、左手の鉤爪が印象的だった。


 私は、オリジナルに実装されていたAランク以上の武器は全て覚えている。


 けれど、この槍も鉤爪も覚えが無い。


『デスアーマー・ランサーを討伐しない限り、キラーホエールマンは無限にポップし続ける! ちなみに、クエストが終わるまでダンジョンには入れないうえ、開始時間になった際に持ち家に居る人間は港の中心地に強制転移されるからな』


 経った三十分しか準備時間が無いなんて!


『では、プレーヤー諸君の健闘を祈るぞ!』


 声が聞こえなくなると、すぐにコセ達とユリカがリビングにやって来た。



●●●



「私は、デスアーマー・ランサーというモンスターの情報を持ってないんだけれど、ジュリーとシレイアは?」

「私も無い」

「アタシも」


 チートと言っても良い情報源から、なにも得られないとは。


「私かマスターが視認すれば“英知の引き出し”で情報を得られるはずだから、私達は捜索に回った方が良さそうだね」

「始まってみなければ、実際どうなるかは分からない。臨機応変に対応しよう」

「サトミさん達はどうします?」


 トゥスカの問いへの答えは決まっていた。


「戦力は多い方が良い。準備が出来た者から、時間までに急いでサトミさん達を探そう!」


 全員の返事を受け、俺は”怪魚の港”に繰り出した。



            ★



「ハアハア、居たか?」

「ゼー、ゼー、見当たりません」

「上からも探したけれど、見付からないよ」


 トゥスカとメルシュの三人で捜したにも拘わらずサトミさん達が見付からなかったため、合流場所に決めていた港の中心地に集まった俺達。


 呼吸を整えている間に、ジュリー達五人もやって来た。


「やっぱり見付かってないんだ?」

「そっちもか」


 ジュリー達も見付けられなかったとなると、もうこの港には居ないのだろう。


『時間だ! キラーホエールマン三十体と、デスアーマー・ランサーを投入する!』


 黄昏色に染まる空を緑の光が一瞬駆け向けると――海側から高く高く、複数の水柱が上がった。


「メルシュ!」

「キラーホエールマン以外は見えない!」

「あっちに赤い光が見えたよ!」


 空を飛んでいたメルシュに聞いたのだけれど、屋根に登っていたシレイアの方が見付けたようだ。


「二手に別れよう! 俺とユリカ、ユイ、メルシュでデスアーマーを探しに行く!」

 

 キラーホエールマン相手だと相性が良くないユリカ、近接戦闘に優れたシレイアとユイ、情報提供できるであろうメルシュ捜索組に選択。


 残りの三人は雷属性攻撃手段を持っているから、キラーホエールマン迎撃に当たって貰う。


 本当は、メルシュもトゥスカ達と行動させたかったけれど。


「ご主人様、気を付けて!」

「トゥスカも!」

「ついておいで!」


 トゥスカ達と別れ、光を目撃したシレイアの後を追う。


 数をこっちに割いた分、早く終わらせなければ!


 夕日が落ち始め、辺りは刻一刻と暗さを増していく。



●●●



 青いシャチに手足が生えたモンスターが高速で空を移動し、こちらへと向かってきていた。


 アレがキラーホエールマン……キラーホエールってシャチの事だったんだ。知らなかった。


「“万雷魔法”、トワイライトスプランター!」


 口を開けて接近してくるシャチ一体に直撃し、消滅させる。


「予想より大したことなさそう」


 私の”万雷魔法”の余波に、他二体にもダメージが入っていた。


「もう一発!」


 五体が密集していた所に、サンダラスレインを放つ。


 真ん中の一体が緑色の剣を掲げると――全ての雷の雨槍が剣に吸い込まれ、消えてしまった!?


「まさか……“避雷針の魔光剣”か!」


 Aランク武器で弱点の対策をしてくるなんて。

 まだ第五ステージなのに!


「他にも……」


 シャチの何体かは武器を手にしていた。


「トゥスカ、あの剣を持った奴をお願い!」


 アイツがあの剣を持っている限り、こちらの雷属性魔法は全て封じられたも同然。


 早々に駆除する必要がある!


「分かりました!」


 トゥスカが駆ける横で、シャチの半数がコセ達の方へと向かっていく!


「ジュリー様!」


 タマの警戒の声――離れた所から”水流弾”を撃ち込んできたか!


「パワーハンマー!」


 “パチモンのトールハンマー”で水弾を防いでくれるタマ。


「ありがとう、タマ!」


 右腕側に生み出した金剛の巨剣で接近してきたシャチをすれ違いざまに斬り裂き、左手の金色の甲手から”雷光”を収束させて撃ち込む!


「サンダラスレイン!」


 横合いから迫ってきた三体に、万雷の雨を叩き込んだ。


「思ったよりもタフだな」


 サンダラスレインが手数の魔法とはいえ、弱点を突いているのに倒せないなんて。


「――パワージャベリン!」


 タマが、“鯨骨の銛”で三体にトドメを差してくれた。


 鯨骨の武器なら、水棲系モンスターに対してのダメージが三倍になる。


 その分、壊れやすいというデメリットもあるけれど。


『キシュウウッ!!』


 今度は“法喰いのメタルクラブ”を持った個体が現れた。


「魔法対策はバッチリか」


 今更ながら、観測者に見られているのだと実感させられる。



●●●



「“魔力砲”!」


 ”跳躍”で高く飛び、突出していたのを除いた四体を消し去る。


 本当は五体まとめて葬るつもりだったけれど、そう上手くはいきませんか。


「――爆裂脚」


 不意打ちを仕掛けてきた魚の側頭部を――蹴り散らす!


「”火喰い鳥の竜甲脚”、思っていたよりも使いやすい」


 火属性を強化してくれるという話しだったので使ってみましたが、“漆黒のブーツ”に感触が近いため、結構馴染みますね。


「パワーブレイド」


 “荒野の黄昏は色褪せない”で首を落とす。


『シュルウウオ!!』


 ジュリーの魔法を防いだ剣を持った魚が、こちらへと向かってきた。


 放ってきた水弾を、前に出ながら避けていく。


 規模はともかくアスピドケロンと同じ攻撃。


 水が空中に生まれてから狙いを付けて放たれるでのタイムラグは、既に把握済み!


 ――手にしている剣が輝いてる?


「横に跳べ、トゥスカ!」


 ジュリーの言葉に従うと、緑光の斬撃が放たれ――地面を切り裂いていった!?


「面倒な」


 更に斬撃を飛ばしてくるお魚さん。


 でも、初撃とどこか違う。


「私、魚はあまり好きじゃないの!」


 “瞬足”に“跳躍”を合わせ、猛スピードで接近!


「爆裂脚!!」


 勢いそのままに蹴りを叩き込み、怯んだ隙にパワースラッシュで胴を真っ二つにした。


「トゥスカ、さっきの剣を私に!」


 ドロップした剣を実体化し、ジュリーに投げ渡す。


 すぐにチョイスプレートを操作して装備するジュリー。


「”避雷針”――”雷光”」


 自分の剣に……雷を吸わせた?



「“雷光斬”!!」



 私に向かって最初に放たれたのと同じ、緑光の斬撃!


 接近していたクラブを持ったシャチが、呆気なく切り裂かれる。


 手に入れたばかりの武器を使いこなすなんて……これがオリジナルプレーヤーの力。

 

「……もう、五分経ちましたか」


 新手の魚十体が、猛スピードで空を泳いで近付いて来ていた。


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