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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第17章 飛躍の龍意

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675.混乱と混沌の帰還

「……私は」


 壁に叩き付けられて……メイさんが戦い始めた所で……。


「メイ……さん?」


 仰向けの私の目の前に、メイさんの綺麗な顔がある……。


「怪我はすっかり治っているはずですが、気分はどうですか?」

「だ、大丈夫……です」


 ちょっとずつ、身体に力が戻ってきてる。


「あの……これ、膝枕じゃ」


 わざわざ鎧まで外して……。


「一度、試してみたかったんですよね」


 出会ったばかりなのに、無邪気に微笑んで。


「メイさんが……お母さんだったら良かったのに」

「へ?」

「な、なんでもないです……」


 私、なんてことを口走って……顔あっつい!


「魔族は倒したんですよね? クエストは、どうなりました?」

「戦闘が終わってから、三時間以上が経ちました。未だにクエストは続いています」


 三時間……そんなに寝てたなんて。


「すみません、足手纏いに……」

「お互い様ですよ。私も、貴女に助けられたんですから」


 私の母親も、こんな人だったら良かったのに。


 ――盛大にお腹が鳴る。


「……すみません」

「フフ。食べ物、あのコンビニからくすねてきました。食べますか?」

「……はい、頂きます」


 半日もしないうちに……私の恥ずかしい所、メイさんに見られすぎだよぉ……。



●●●



 区画の外れの半壊した建物内にて、ハンバーガーみたいなのを食べ終えたのち、フライドポテトや唐揚げを摘まむミキコ。


 俺も、久しぶりのスナック菓子を口に運ぶ。


「魔族、残り一体になってから動きが全然ありませんね」

「ですね。ただ、今日お昼を過ぎたら、私の仲間がクエストに参戦する手筈になっています。既に動き出していることでしょう。後は、人海戦術で最後の魔族を見つけ出せれば――」


「ミキコ? アンタ、誰と一緒に居んの?」


 ツンとした因子が滲んだこの声は……聞き覚えが無いな。


「ハユタタ!!」


 良かった、あの人魚はミキコの知り合いか。


「あ……」


 黄色い人魚の背後から、メルシュとナターシャ、クレーレまでやって来る。


「……フーン♪」


 メルシュのあの目、絶対に気付いたな。


「ソイツ、信用できんの?」

「大丈夫よ! メイさんは、とっても良い人だから!」


 ミキコの勢いが凄い。


「あ、アンタにしては、随分信用してるわね……」


 ハユタタと呼ばれた人魚に、目で自己紹介を催促される。


 ……どうしよう。メルシュ達が目の前に居る手前、ここで偽名を名乗るとややこしい事になりそうだし……。



『たった今、百体の魔族の討伐が完了しました。すぐに街の復旧が始まりますが、完了は明日の朝六時となります。尚、報酬の支払いや転送の際の後遺症治療も、同じ時間となる予定です。それまで安全を確保してお待ちください』



 無機質な女性の声が消える。


 ……ちょっと待て。てことは、俺は明日の朝までこのままって事なのか?


「それじゃあ、ミキコ、ハユタタ、()()()()、私達の魔法の家に案内するね。ツグミ達も来るだろうから」

「良いの、メルシュ姉? どこの誰なのかも分かんないのに」


 クレーレ、お前は気付いてないのか!


「私が見張ってますので、ご安心を」


 ナターシャ、お前は気付いてるのか? それとも気付いてないのか? どっちなのか本気で教えて!


「メイさんが嫌なら、無理にとは言わないけれどー♪」


 メルシュ! お前、絶対楽しんでるだろう!!


「……お、おじゃましまーす」


 クソ。言い出すタイミングが全然判らない!!



            ★



「ちょっと、メルシュ! 初めて聞いたわよ、入団希望者が居たなんて!」


 ユリカがメルシュに食って掛かる。


「まあまあ、その辺の話は明日にしようよ。今自己紹介とかしても、()()()()()()()()()()()()()()


 そう言いながらメルシュが指差した方向に居たのは……足腰をプルプル震わせるお婆ちゃん。


「あの鎧に槍杖……まさか、セリーヌ!?」


 セリーヌは老化現象に晒されていたのか!


「――ねー、なんでセリーヌ姉の名前、知ってんの?」


 クレーレに半眼を向けられてる!!


「えと……あの……」


 本当にどうしたら良いんだよ、俺!!


「……ご主人様?」


 背後から聞こえた声の主は……獣人の幼女。


「もしかして……トゥスカ?」

「――ご主人様!!」


 勢いよく飛び込んできたトゥスカを、衝撃を逃がしながらもしっかりと抱き留める!


「トゥスカ、お前は幼児化してしまったのか」

「まさか、ご主人様が女になっていようとは」


 なんだろう、この不思議な感動は。


 同じ苦労を分かち合う者同士の友情というか。


「へ、メイってギオジイなの!?」

「ようやく気付いたか、クレーレ」


 驚いてなさそうな所を見る限り、ナターシャは気付いてたっぽいな。


「いやだって……美人過ぎだよ、ギオジイ」


 それは俺も思った。



「……メイさんが…………コセ?」



 ……恐い。背後から感じるミキコの気配が――凄く恐いッ!!


「本当にコセなの?」


 モモカが近付いてきて、無邪気に声を掛けてくれた!


「うん、そうだよ。明日の朝になったら、元に戻るけれどね」


 クソ。まだ半日以上このままなのか!


「こっちはトゥスカ?」

「そうだよ、モモカ」

「トゥスカ、モモカより小っちゃい!」


 確かに、耳を含めなければ、モモカの方が背が高い。


「トゥスカ、一緒に遊ぼう!」

「アオーン♪」

「わ、私、疲れてるのに……」


 モモカに連れられて行ってしまうトゥスカ。


「あの獣人……本物の幼女じゃなかったのか。道理で落ち着いてると思った」


 トゥスカの隣にいた、桃色の髪の……エルフ? アレ、この顔は……。


「もしかして、トゥスカを守ってくれてたんですか?」

「ああ……まあ、アタシも助けて貰ったから、お互い様だよ」

「うちのトゥスカがお世話になりました。本当にありがとうございます」


 頭を下げる。


 セリーヌもだけれど、あんな状態の二人が生き残れたのは奇跡かもしれない。


「ユウダイ様。入団希望者も含め、全員の帰還を確認しました」


 ナターシャが、欲しかった報告をくれる。


「ありがとう、ナターシャ。ところで、俺の性別が替わってたこと、いつ頃気付いた?」

「…………私、お風呂の準備をしてきますね」


 足早に去っていく俺の専属侍女!


「アイツ、本当は全然気付いてなかったのか」


 いつもポーカーフェイスだから判らなかった!


「こ、ここコセさんんん♡ わわ私をぉぉ助けてくれたのがぁぁ、彼女ぉぉぉ」


 喋るのも辛そうなセリーヌ。


 幼く見えるフェアリーの容姿が、見る影もない。


「無理しなくて良いぞ、セリーヌ。ゆっくり休め」


 俺、老化しなくて良かった。


 心の底から、女体化で助かったと思える。


「あ、あの!」


 さっきセリーヌが紹介しようとしていた女の子が、声を掛けてきた。


「ひ、久しぶり……ユウダイさん」


 なんかデジャブが。


「えっと……」


 マズい、本気で判らない。


 チョイスプレートには、ツグミって名前が表示されていたけれど……ダメだ、思い出せない。


「あの、申し訳ないんですけれど、貴女は――」



「コセさん!!」



 突如、庭に響き渡った声の主は……サトミ?


「――ウフフフフフ♡!!」


 なんだ、サトミのこの邪悪な笑みは……。


「すっごい美人ね~♡ ――リンピョンちゃん、コセさんを拘束!」

「はい、サトミ様!!」


 後ろから、リンピョンに羽交い締めにされた!?


「おい、離せ! 何をする気だ!」

「ウフフ♡ 明日の朝までしか時間がないんだもの。それまで、タップリ愉しませて貰うわね~♡♪」

「本当に何する気なんだ、お前!!」


 抵抗虚しく、俺は館のサトミの部屋に連行される。


「コセ・ユウダイ……――絶対に赦さないんだから!!」


 ミキコの声が、魔法の家の領域全土に響いた気がした。


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