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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第17章 飛躍の龍意

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672.異形との遭遇と虚空火葬

「酷いもんだ」


 シューラさんとお手々繋ぎながら、出口目指して建物内を散策していると、そこかしこに血だらけの死体。


「大丈夫かい、アンタ?」

「……なんとか」


 このダンジョン・ザ・チョイスでは、死ぬとすぐに死体は消える。


 だから、これは命のないNPCによる演出に過ぎないと解っているはずなのに……血の匂いが充満していて、作り物だとはなかなか割り切れない。


「眼鏡の男の死体だけ、随分酷い有様だ。まあ、隣の女のとかも散々だが」


 気遣いつつ、想像をかき立てる情報を与えないでよ! いったいどっちに持っていきたいんですか!


「いったい、どっちに進めば良いのかねぇ。右も左も判らないとは、まさにこのことだよ」


 一応、優しい人ではあるのだろうけれど。


「――何か来る」


 私達が進んでいた方から、何かが急速に駆けてくる!


 明らかに、人間からは逸脱した気配。


「下がりな、トゥスカ。ここは、シューラお婆ちゃんがどうにかしてやるから」

「うん……へ、お婆ちゃん?」


 気になる単語があったけれど、もう気配はすぐそこまで近付いていた。


「一発で仕留めてやるよ」


 黒い弓に六文字刻んで、矢をつがえた!?


 この人、神代文字を刻めるんだ。


 もうそこまで、すぐ近くの角まで、大きな気配が迫っている。



「“火山弓術”――ボルケーノブレイズ!!」



 敵の姿を視認した瞬間、シューラの噴火矢が射られ――直撃。異形の敵の左腕が、肩からドロドロと熔けていく。


「なんだい、コイツは?」


 丸い硬質な身体から足と鋭い爪の腕が生えた……人間の顔が埋もれたような気味の悪い何か。


「……魔族に似てる?」

「魔族? 今回のクエスト討伐対象の?」

「似てるのは、この紫の顔の部分だけですけれど」


 この異形は、魔族と関係がある?


「コイツ、なかなか死体が消えないな」

「――マズい!」


 急に動き出して、襲い掛かって来た!


 あれだけ身体が消失していたら、生きているとは思えないのに!!


「良い反応だ――“千狐焔”!!」


 魔神から手に入るスキルで、炎狐の群れを呼び出して群がらせた!?


 それでも、構わず突っ込んでくる異形の魔族!


『“猪突猛進”ッ!!』

「こっちだ!」


 私を抱え、死体があった部屋へと転がり込むシューラ。


 あの敵は、通路を通り過ぎてどこかへと行ってしまった。


「まったく、おっかないね」


 チョイスプレートでライブラリを探すも、あの異形の情報は“魔族”の辺りには出ない。


「……シューラさん、私と遭う前に魔族って倒しました?」

「いんや」

「魔法の家の鍵って持ってます?」

「使えってのかい? まあ、良いけど……あれ、開かない」


 何度虚空を鍵で捻っても、魔法の家への領域は開かない。


「おい、開かないぞ」

「魔族を倒したプレーヤーは、魔法の家に戻れないらしいです」

「てことは、つまり……」

「さっきの異形は魔族で、あの後力尽きて死んだのではないかと」


 でも、なんであんな不気味な姿に……。


「魔族討伐数、91。残りは9」


 もう一波乱ある気がしてきた。



●●●



「“竜技”――ドラゴンブレス!!」


 幼稚男子に、余裕で躱されてしまう。


「竜属性特化タイプか、こいつ?」

「いえ、“竜技”は補助でして」


 私の本来の戦闘はSSランクを前提としたごり押しだから、“竜技”はあくまで、参謀からのアドバイスで装備していただけ。


「逃がさねぇぞ――“逆三暗黒宮”!!」


 魔神・暗黒魔が使用するっていう、逆三角の黒き紋様を背中に出現させた!?


「食らえよ!!」


 背紋から放たれる黒い無数の闇槍が、こっちに追尾して迫る!


 やっぱり、SSランクが無いと戦いづらい!


「“暗黒弾”――“連射”!!」


 左腕のピンク甲手の砲門から暗黒の弾を発射して、槍を迎撃。


 私は魔法使いで、MPをできる限り増強するようにしているから、幼稚男子より先にMPが尽きる事はない……はず。


「ああ、ウザってぇ!! “発射”!!」


 “帰還”で戻ったであろう槍の穂先が、高速で迫る!


「“四連瞬足”!!」


 間一髪で、なんとか全て回避。


「み、みミスティックダウンバーストぉぉ!!」


 セリーヌお婆ちゃんが魔法を!?


「死ね――“因果逆転”!!」


 魔法が跳ね返って――空が落ちてくる!!


「“三重幻影”」

「――“瞬足”!」


 お婆ちゃんの幻影による身代わりで回避しつつ、建物の影に回り込んでやり過ごす!


「……貴重なスキルまで使ったのに仕留めきれねぇとはな――良いぜ、俺のユニークスキルを見せてやるよ!!」


「ユニークスキル……」


 一つしか無い、複製も不可能な強力なスキル。


 いったい、どんな能力を――


「――“絡繰り鬼兵”!!」


 鬼みたいな意匠の、鈍色の金属で出来た上半身だけの鎧?


挿絵(By みてみん)


 中は空洞だけれど、青い炎が常に燃えている。


「コイツは強いぞ。おかげで――燃費さいあくだけれどな!!」


『――ゴォォォォォォ!!』


 とんでもないスピードで突っ込んできた!?


「“四連瞬足”!!」


 回避と同時に、背後に回り込む。


「“魔力砲”!!」


 ――“絡繰り鬼兵”が一瞬で回り込んできて、形状を盾のように変化させた!?


「……うそ」


 MP特化の私が、“紡ぎ噤む春の鳴”から撃ったのに無傷!?


 神代文字の力は、大して込めてなかったとはいえ……。


「とっとと仕留めろ、“絡繰り鬼兵”!!」


 内部の炎が増した! ――うえに、鬼兵の金属小手が槍のように鋭利になって伸びてきた!?


「しま!!」


 腹部に突き刺さったッ!!


 すぐに離れ、距離をとる!


「だ、だだ大丈夫かい?」

「大丈夫だよ、お婆ちゃん」

 

 傷が塞がり、代わりに“同人のボロマント”の一部が溶けた。


 ボロマントが残っているうちは、私が受けた傷はマントが肩代わりしてくれる。


「さて……どうしよう」


 今までどれだけSSランクに頼っていたのか、思い知らされた気分。


「クソ、時間がねぇってのに! とっとと死ねよ!!」


 あの人、妙に焦ってる。


「“四重詠唱”、フレアブロッチェバレット!!」


 手数で鬼兵の防御範囲を突破する!


「チ! “因果逆転”」


 魔法陣四つ分の魔法が跳ね返って!!



「――“魔斬り”」



 侍が、私達に直撃する炎弾五発に絞って切り払った!?


「仲間か!! “絡繰り鬼――」


 鬼兵が、飛んできた車? に巻き込まれて転がっていっちゃった……。


「“絡繰り鬼兵”は防御に優れちゃいるが、比重は魔法、準魔法に傾いている」

「シレイアさん!!」


 あの車を投げたの、シレイアさんだったんだ!


「クソ、MPとスキルの無駄骨じゃねぇか!! “超噴射”!!」


 幼稚男子さんが空へ逃げていく!?


「とどめを刺せ、ツグミ!!」


挿絵(By みてみん)



「MPブースト。“追尾命中”――――“桜火砲”!!」



 神代文字を全力で込めた、特大の火柱を空へと突き立てる!!


「追ってくる!? “因果逆転――」


 本日の“因果逆転”の使用回数は、既に尽きていますよね?


「嘘だ……俺は、SSランクを手に入れて、アイツを見返して――――」


 幼稚男子は虚空の中で、骨も残さず火葬された。


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