658.テスラルートの依頼
テスラの職員を、町中で狙う男を発見。
「“大地讃頌”――ハイパワースラッシャー」
足止めした隙に男の身体を両断し、光に還す。
「……厄介だな」
受けた依頼は、テスラの職員、全二十名の出勤時の護衛と、施設に対する破壊工作の阻止。
俺のパーティーは出勤時の護衛担当で、コトリのパーティーが研究施設に対する破壊工作への対処担当になった。
「どこから誰が狙われるか分からない状況で、一時間も護衛し続けなければならないのか」
遠くで爆発。この音、トゥスカの爆裂脚かな?
「――まず!!」
間一髪、狙われたテスラ職員に迫る斧を、“サムシンググレートソード”の腹で止める!
「……なんだ、このパワー」
さっき倒した“利権工作員”と同じ風貌なのに、とんでもない力で押されているだと!?
「コイツ、“油圧式ガントレット”を!」
“揮発液”を消費する事で、一時的に爆発的なパワーを生み出せるという代物。
昨日、ユリカ達が持ち帰った物を見ていたから気付けた。
「オイル側の仕業っていうのを、隠す気もないってか――“大地讃頌”!!」
足下からの攻撃で怯んだ隙に斧を去なし――腕を絞って胸へと、剣を体当たりしながら突き刺す。
「ハアハア。これを二パーティーだけでって、キツくない?」
遠距離攻撃で、確実に仕留める手段が必要だな……使うか。
「舞え踊れ――雄偉なる精霊と剣は千代に」
踊る精霊の剣を顕現――“竜王剣”、“振動切断剣”、“大地王剣”、“波動王剣”、“黄昏王剣”を呼び出す。
屋根の上に移動し、職員を狙う“利権工作員”を見定め――五振りの剣を飛ばして始末していく。
「敵は……“利権工作員”しか居ないな」
とか思ってたら、町に何か迫ってくる。
「デカいな」
という感じで気をとられていると――
「あっぶな」
もう少しで、“利権工作員”の凶行を見逃す所だった。
●●●
「“災禍刃”」
指先から放った黒紫の刃で、“利権工作員”の首を刎ねる。
「来たか」
巨大な赤毛の黒蛇、“ジャイアントフレイムサーペント”。
テスラエリアの本社、円柱の施設に到達されるとゲームオーバーになっちゃうやつ。
「面倒なのは他の皆に任せて、久しぶりに思いっきり暴れますか――オールセット1」
指輪装備欄を、エターナルと名の付く触媒指輪中心の構成へ。
「“宝石魔法”――ダイヤモンドウォール」
突撃してくる蛇の前に障壁を展開――激突して進行を止めた。
「“宝石魔法”――アクアマリンスプラッシュ!」
僅かに緑掛かった青い水の奔流をぶつける。
『シャーッ!!』
“火袋”から炎を吐いてきたか。
「テルルスピードフィジカル」
黄白色の宝石を触媒に、敏捷特化の身体強化を使用――高さ五、六メートルにも及ぶ炎を避ける。
ここが町中だったら、無理にでも防がなきゃいけなかったところ。
「“四重魔法”――ダイヤモンドソード」
金剛石の大剣を生み出し、“ジャイアントフレイムサーペント”を串刺しにして動きを封じる。
「“六重詠唱”、“宝石魔法”――トパーズスプランター!!」
黄玉の雷を浴びせ、赤毛の黒大蛇を絶命させた。
「うーん、もうちょっと暴れたかったなー」
基本、マスター達の成長の邪魔にならないようサポートに徹しているから、思いっ切り戦う事なんてほとんど無いからねー。
●●●
「うわ、凄い雷音」
なんかデカいのが近付いて来てたみたいけれど、仕留めたのかな?
「おっと」
円柱状の筒に赤い煉瓦の外壁が付いた建物に侵入しようとした男の頭を、白い金棒――“生き様を視ること死に様の如く”で粉砕。
「手が足りないな――“人格分離”」
ペルソナの隠れNPCの固有スキルを使って、別職業の私を呼び出す。
何度か試してるけど、目の前にまったく同じ顔の人間が居るって慣れないなぁ。
「んじゃよろしく、コトリ二号」
「二号呼びしないでよ、いかれ女」
なんでか言葉が刺々しいんだよね、もう一人の私って。
「私はあんたのペルソナ。あんたの別の側面。つまり、ありえたかもしれない、もしくはこれからありえるかもしれない姿そのものなのよ?」
「ええー、幾らなんでも違いすぎない? ――て、話している場合じゃなかった!」
出勤してきたテスラ職員に迫る“利権工作員”を、二人でぶちのめす。
「お礼が欲しいわけじゃないけれど、無反応でスタスタ歩いていかれるのもなんだかね」
「向こうは只の舞台装置に過ぎないNPCなんだから、当然でしょう。ていうか、どうして王子様が居ないタイミングで私を喚ぶのよ!」
ヒステリック気味なんだよな、もう一人の私って。
「人手が欲しくて喚んだんだから、居なくて当然でしょ。それくらい解っているくせに」
私である以上、そのくらいの事、置かれた状況から一瞬で理解できて当然。
「フン! だったら、そのできの良い頭でさっさと私の王子様を籠絡しなさいよ! アンタは、冷静に両親を殺せてしまうくらい優れた頭脳の持ち主なんだから!」
「……」
「……私とアンタ、いったいどっちの方がマシだったのかしらね」
そう言って去って行く、魔法使いの私。
「マシって……まさか」
あの人格の私は……殺さなかった方の私なの?
●●●
「“砂鉄磁鞭”」
砂鉄で作った鞭を、施設の金属部に磁力でくっつけた状態で壁を水平に駆け――海側から侵入してきた“利権工作員”を蹴り落とす!
海に落下後、派手な水飛沫。
「時限爆弾を使った破壊工作とか、たちが悪い人達ですね」
聞いた話、彼等は大金を手に入れ続けるために、自分達よりも優れたエネルギー源を無くしたいらしい。
そのためなら人殺しも厭わないと。
「被害者も加害者も本物ではないとはいえ……これが実際にある権力闘争がモデルだなんて」
マリナが言うには、噂レベルの話らしいですけれど。
「空から!?」
“ワイバーン”に乗った“利権工作員”が、爆弾らしき物を投げようと構えている! しかも三騎!!
「“後輪光輝宮”」
施設最上部に待機していたマリナが、魔神から手に入れたスキルを使用――背の光の紋様から、頭サイズくらいの光弾を大量に発射し。“ワイバーン”を牽制。
「“熱光線”」
宙に浮く“硝子の中の鑑み”に神代文字を刻んだ状態で、“キヤイウメアイ”から発射した光線を増幅して放射――ワイバーンの一体を焼き殺した。
「マリナ、なぜ神代文字を?」
威力増強に使っているように見えない。ただ刻んでいるだけにしか。
「ああ。ユウダイが言ってたじゃない、神代文字を刻んでる方が集中力が増すって」
「なるほど、命中率を上げるために」
「この鏡、できることは多いけれど、その分扱いが難しいからさ。神代文字使いながらだと、ほぼ思い通りに反射させられるのよね」
さすがマリナ。ギルマスの言葉を見事に己の糧としている。
「私も、もっとギルマスの言葉を自分の血肉に変えたいです」
「ケルフェ……」
私、いつになったらギルマスに認めて貰えるんだろう。
○依頼達成、おめでとうございます。
○以下の依頼達成報酬を山分けでお受け取りください。
★9000000G
★周波数の指輪×10
★周波数魔法のスキルカード×10
★許可証×10




